婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

文字の大きさ
上 下
18 / 100
リュセ

14

しおりを挟む


 涙を拭った僕は、静かに見守ってくれていたシュヴァリエ様の隣に座る。
 僕が当たり前のように隣に座ったことに目を見張るシュヴァリエ様は、ちょっとだけ泣きそうになっていた。

「ふたりの話を聞いて、シュヴァリエ様をより好きになりました。きっとこれからも、もっともっと好きになると思います。出来ることなら、友人になれたら嬉しいと思っていたけど……」

 そこまで言って深呼吸をした僕は、大好きな人を見つめる。


「シュヴァリエ様の婚約者に、立候補してもいいですか……?」


 ドキドキしながら返事を待っていると、泣くのを堪えるように笑ったシュヴァリエ様が、「ああ」と涙声で答えてくれた。

 すっごく幸せそうな表情だ。
 僕の気持ちがようやく伝わったんだとわかって、喜びが電流のように全身を通り抜ける。

「さっきは、婚約できなくてもいいと言ったが、撤回させてほしい。情けない男ですまない……。だがこれからは、リュセに相応しい男になれるよう、努力するつもりだ」
「っ、そんな……」
「リュセの気持ちを信じられなくて、悪かった。傷付きたくないからと、逃げてしまったんだ。こんなに真っ直ぐに私を見つめてくれていたのに……」

 熱い視線を向けられて、恥ずかしくて顔を隠したくなってしまう。

 それでも今は、絶対に目を逸らしちゃダメだ。
 
「私からも言わせてほしい……」

 そう告げたシュヴァリエ様が、僕の方に恐る恐る手を伸ばす。
 迷わず手を取ると、緊張していたであろうシュヴァリエ様が、花が咲くように頬を緩ませた。

「私も出逢った日から、ずっとリュセを想っていた。今までは陰から見守っていたが、これからはリュセの隣にいさせてほしい」
「っ、はいっ!!」

 嬉しすぎて飛び跳ねてしまった僕は、その勢いでシュヴァリエ様に抱きついていた。

 ふれあいに慣れていないであろうシュヴァリエ様には、かなり酷なことをしてしまったと思う。
 でも、僕は我慢出来なかった。

 歓喜に震える僕の体を、逞しい腕が優しく包み込んでくれる。
 ぎこちない手付きなんだけど、それがすごく心地よい……。

「なるべく気を付けるようにはするが、今後もリュセの気持ちを確認してしまうかもしれない。鬱陶しいと思うかもしれないが……」
「その時は、何度だって答えます。シュヴァリエ様が大好きだって……。逆に、シュヴァリエ様が僕を鬱陶しく思ってしまうかもしれませんっ」
「っ、」

 温かな腕の中から顔を出す僕は、満面の笑みで答える。
 好きの言葉に反応するシュヴァリエ様は、耳たぶまで赤くなっていた。

 僕のやることなすことに、いちいち頬を染めているシュヴァリエ様が可愛すぎて、心臓が止まりそうだっ!!

 むふふと笑っていると、なぜか今まで蕩けるような笑みを浮かべていたシュヴァリエ様が、ピシリと固まっていた。

 どうしたのだろうと不思議に思っていると、潤む碧眼は、固唾を飲んで見守る両親に向けられる。

「悪い……。もう、泣いてもいいか?」

 壊れた人形のようにこくこくと激しく頷くふたりを見たシュヴァリエ様が、ふっと笑った。

 醜い顔を見せられないからと、片手で目元を隠して涙するシュヴァリエ様。
 僕は泣き顔も絶対綺麗だと思ったけど、黙って背中を撫で続けていた。

 シュヴァリエ様がなかなか泣き止まかったのは、きっと僕と想いが通じ合ったからという理由だけじゃないと思う。

 過去に、どれだけ悲しい経験をしてきたのだろう……。

 心の傷を癒すことが出来るかはわからないけど、これからはずっと笑顔でいてほしいと願う僕は、いつまでも寄り添っていた。











しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

処理中です...