婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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リュセ

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 幸せな気持ちで胸がいっぱいになる僕は、涙が込み上げてくる。
 そんな僕を横目で見たシュヴァリエ様が、慌てて僕の体調を心配してくれる。
 過去の話を聞いて、僕の気分が悪くなったと勘違いをしているみたいだ。
 そんな優しいシュヴァリエ様に、大丈夫ですと答えた僕は、にっこりと微笑んだ。


「僕が好きになった人は、やっぱり、すっごく素敵な人でした……」


 感動する僕を見て、胸を押さえたシュヴァリエ様は、うぐっとおかしな声を発していた。
 大丈夫かと優しく背を撫でると、またしても大袈裟なくらいに驚いていたけど、僕は気になっていたことを質問していた。

「それで、僕たちが初めて手を繋いだのは、いつなんですか?」
「っ……それは」
「手を繋いだというか、寝込むことが多くなった時のリュセが、シュヴァリエ様の手を離さなかった……って感じだな?」
「…………へ!?」

 言い淀むシュヴァリエ様の代わりに答えたオースティン父様が、ニカッと笑った。

「情けないことに、あれだけリュセを引き取りたいと熱望していたのだが、私たちではどうすることもできなくて……。そこでシュヴァリエ様に相談して、リュセの見舞いに来てもらっていたんだ」
「ええっ!?」
「シュヴァリエ様ってば、リュセの気分がもっと悪くなるからって、最初は無理だって断っていたんだぜ? それなのに、なにかしら言い訳しながら、毎日来てるし?」
「っ……いや、ただ、買い物をしに、だな?」

 ふたりに揶揄われて、たじたじになっているシュヴァリエ様が、可愛すぎるっ。

 しかも、毎日お見舞いに来てくれていたの?

 全然覚えていないけど、シュヴァリエ様が近くにいるだけで、僕の体調がよくなっていたらしい。

「休みの前日は、毎度お泊まり!」
「っ、もうそこまでで……」
「いつも帰ろうとするけど、穏やかな寝顔になるリュセにしがみつかれてさ~。そりゃあ、誰だって帰れないよな~?」

 全部バラすなとばかりに、ガックリと項垂れるシュヴァリエ様。
 嬉しい気持ちはもちろん爆発しているのだけど、申し訳なさが勝る。

「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
「いや、私がしたくてしていたんだ」
「毎度変装してな?」

 さっきからいろいろと付け加えるエルヴィス母様は、シュヴァリエ様を困らせているとわかっているのに、すごく楽しそうだ。

「なんで変装をする必要が……? シュヴァリエ様の美しいお顔を見ているだけで、僕は幸せになれるのに……」

 素朴な疑問をつい口にしてしまい、シュヴァリエ様が息を呑んだ。

 顔から火が吹き出そうになったけど、今更隠しても仕方がないことだ。
 気持ち悪いと思われようと、両想いなんだからと開き直る僕。

 ……でもやっぱり恥ずかしくて、俯いてもじもじする。

 にこにこと僕たちを眺めていたオースティン父様が「やはりか……」と呟いた。

「本当なら、リュセが学園に通うと決めた時に話すべきだった。だが、どうしても言えなかった……。リュセに聞かれたら話そう。いつか話すんだと思いながら、墓場まで持っていきたいという醜い気持ちがあったんだ……」

 後悔するように告げたオースティン父様は、今にも泣き出しそうになっていた。
 そんな悲しそうな顔を見たことがなかった僕は、驚きすぎて言葉を失う。

「オースティンだけじゃない。俺もだ。でも、リュセがシュヴァリエ様を想っていると知って、ようやく決心がついた。ふたりには、幸せになってもらいたいんだ……」

 両手で顔を覆ったエルヴィス母様が、ごめんと謝罪する。
 ずずっと鼻を啜る音が聞こえてきて、泣いているのだとわかった。


「シュヴァリエ様も聞いて欲しい……。異世界人は、我々とは美醜の感覚が違うんだ」









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