婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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リュセ

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「コホンッ。本日は、我が愛する息子のためにパーティーに参加してくださり、誠にありがとうございました」

 涙声で閉会の言葉を告げたオースティン父様。

 僕も主催者の息子として笑顔で頭を下げると、パラパラと拍手が聞こえて来た。

「二人とも、おめでとう。すぐに婚約の準備を」
「っ、父様! さすがにそれは早すぎるのではないですか? シュヴァリエ様のお気持ちを優先させてください。……僕は嬉しいですけどっ」

 ナイスアシストだと思うけど、まだシュヴァリエ様の気持ちを聞いていないんだ。
 外堀を埋める形で困らせたくない。
 そう思うのに、嬉しいだなんて付け加えてしまう僕は、浮かれてしまっていた。
 
「っ、リュセは……本当に私でいいのか?」

 ついさっき告白したんだから、僕の気持ちはわかっているはず。
 それなのに、どこか自信なさげに、何度も確認を取るシュヴァリエ様。
 もしかしたら、年齢差を気にしているのかもしれない。

「はい。もちろんです。むしろ、シュヴァリエ様こそ、僕でいいのかと聞きたいくらいです」
「っ…………ああ、嬉しい。すごく……嬉しい」

 幸せを噛み締めるように囁いたシュヴァリエ様。
 繋いでいる手にぎゅっと力が入って、僕はドキドキしすぎて死にかけていた。

「はあ、すまない。夢のようで……。言葉が出て来ない……」

 そう言って苦笑いしたシュヴァリエ様は、長い白銀色の髪を掻き上げる。
 ふわっと香るいい匂いにうっとりとしていると、衝撃的な言葉が聞こえて来た。

「叶うことはないと思っていたし、告げるつもりもなかった……。だが、私も、ずっとリュセを想っていた。婚約出来ずとも、少しの期間でもいい。リュセと共に過ごしたい」

 信じられない想いでシュヴァリエ様を見つめ続けていると、いつのまにか参加者全員が会場を去っていた。





 シュヴァリエ様と共に屋敷に戻る僕は、僕の都合の良い夢なんじゃないかと思っていた。
 でも今も繋いでいる手が、それを否定している。
 にぎにぎしていると、シュヴァリエ様が小さく笑った。

「痛くはないか?」
「っ……はい、すみませんっ」
「いや。初めて手を繋いだから、加減がわからなくて……」
「~~っ! ぼ、僕も、初めて……」

 ほんのりと頬を染めたシュヴァリエ様に見惚れる僕は、擽ったい気持ちになる。
 口元が緩みまくってしまう僕は、ひたすらにまにましていた。
 そんな僕より、さらにニヤついた顔のエルヴィス母様が、シュヴァリエ様になにやら耳打ちをする。

「リュセが眠っている時に手を握っていたのは、カウントしていないんですね?」
「っ、あ、あれは……」
「クククッ、わかってますよ。ちょっと揶揄っただけです」

 なんの話だと耳を澄ませていると、急にシュヴァリエ様が頭を下げた。

「っ……すまない。実は、初めてではないんだ」

 しばらくぽかんとしていたけど、慌てて頭を上げてもらう。
 詳しい話は応接室でしようと、四人で席に着く。
 部屋の隅には、既に初老の医師が控えていた。

 先程とは違って緊張感に包まれていて、なんだかハラハラしている僕は、シュヴァリエ様の手を握ったまま離せなかった。

 僕の対面に腰掛けた両親が顔を見合わせ、意を決したように頷いた。

「リュセは、異世界の記憶をあまり覚えていないよな?」
「……はい」
「それに加えて、ミラジュー王国に来てからの一年目の記憶もない。環境が変わって混乱したのだと思う。あの時、リュセは酷く怯えていたんだ」

 苦しげに語ったオースティン父様が無言になり、そんな父様を肩を、頑張ったとばかりに叩いたエルヴィス母様。

 すっと向けられた薄紫色の瞳が、僕を射抜く。


「今も長い階段が怖いか? 








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