婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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リュセ

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 意中の人とのツーショットタイムに持ち込むことに成功した僕は、母様自慢の庭園を散策していた。
 僕に恥をかかせまいと了承してくれたシュヴァリエ様は、心も美しかった。

 少し前を歩く美丈夫に、早足でついていく。
 腕を絡めることは出来なかったけど、非常に満足していた。

 いつもはじっくりと眺める季節の美しい花に、一切見向きもしない僕に、シュヴァリエ様がハッとした様子で振り返る。

 平民相手に「すまない」と謝罪したシュヴァリエ様が、ゆっくりと僕の隣に立つ。
 それから、僕の歩幅に合わせて歩いてくれるという優しさを見せてくれ、僕の胸は高鳴る。

「誰かと共に歩くことに、慣れていなくて……」
「っ、あ、足の長さが違いますから……。僕は気にしていませんよ? むしろ、並んで歩けるだけで感無量ですっ」
「…………ん? 感無量?」

 ぽつりと呟いたシュヴァリエ様だけど、なにやら納得したように頷いていた。

 いつも両親がイチャイチャしているベンチに、今日は僕とシュヴァリエ様が二人で腰掛ける。
 夢にまで見た時間に、口から心臓が飛び出そう。
 ただ、シュヴァリエ様は端に腰掛けているから、かなり距離がある。
 そのことに少しだけガッカリしてしまう僕は、本当に貪欲な人間だと思った。

「ここでの生活には慣れたか?」
「っ……は、はい。それも全て、僕によくしてくれた両親と……シュヴァリエ様のおかげ、です」

 ちらりと隣を見上げると、シュヴァリエ様は真っ直ぐに前を向いていた。
 そうか、と答えた麗しい横顔。
 穴が開くくらい凝視していると、大きな喉仏が上下に動いた。
 なんだかそわそわしている気がする……。
 そしてその原因に気付いた僕は、慌てて頭を下げていた。
 
「も、申し訳ありませんっ。お名前を……」
「……いや、別にかまわない。私もリュセと呼んでいるしな?」

 流し目を送られて、僕の心臓が激しく活動する。
 平民の僕には苗字がない。
 それにミラジュー王国の方は、流星と発音することが難しいそうだ。
 だから、リュセとしか呼びようがないと思う。
 それなのに、なんて優しい人なんだっ。

 感動する僕は、ここぞとばかりにシュヴァリエ様に質問する。
 仕事や趣味だったり、婚活パーティーの参加者らしい質問だから、この場に相応しいはずだ。
 たまに会話が続かなくなるけど、シュヴァリエ様とならどうしてかその時間も苦にはならなかった。

「いつか、騎士団で活躍するシュヴァリエ様を、見てみたいです」
「…………見に来るか? いや、なんでも──」
「いいんですかッ!?」

 興奮して食い気味に答える僕。
 驚いた様子のシュヴァリエ様だったけど、ああ、と微笑んでくれた。

 本当ならずっと見に行きたいと思っていたけど、歯止めが効かなくなりそうだったから我慢していたんだ。
 剣を握るシュヴァリエ様を見てしまえば、間違いなくストーカーになる自信があった。

 命の恩人云々の前に、僕はシュヴァリエ様に運命を感じている。
 平凡な僕とは違い、美しい容姿だから憧れているのだと思っていたけど、そうじゃない。
 言葉では言い表せないけれど、惹かれるんだ。

 僕の素直な想いを伝えよう。
 断られてもいい。
 ただ、知ってほしい。

「シュヴァリエ様。僕──」
「あっ! いたいた! 探しましたよ~」

 ドスドスと歩いて来た青年が、僕たちを見て細い目を丸くする。



 僕の一世一代の告白を邪魔した人物が、

「高望みしすぎだろっ」

 と、呟いた。









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