婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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リュセ

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 好きな人と話していいと言われているのに、僕はシュヴァリエ様に近付くことすら出来ずに、オースティン父様の影に隠れていた。

「トークタイムだぞ! 早くリュセの想い人を教えてくれ! 来てるんだろ?」

 ……エルヴィス母様の圧が凄い。

 引っ張り出されてしまった僕は、会場の隅にいてもキラキラオーラを隠しきれていないお方に視線を向けた。

「うう……っ。無理無理っ。次元が違います!」
「なにを言ってるんだ? リュセが一番美人だろ」
「……親バカだぁ~」

 半泣きになる僕に、ふたりはなんとも言えない顔をする。
 そんな顔も、絵画のように美しいのだ。

「リュセ、自信を持て。お前は、本当に本気で世界一美しい容姿だ。麗しのルーク殿下からもアプローチされていると聞いたぞ?」
「……人違いでは?」

 ルーク殿下は、僕の一つ下の王子様。
 王子だから麗しいと言ったのだろうけど、どう見ても……。
 シャツのボタンが吹っ飛びそうな、ご立派なお腹をしている人だ。
 実際には、僕の顔面に当てられたこともある。

 それに、容姿以前に傲慢な性格。
 周囲の人間を見下す発言は、聞いているだけで不快極まりないし、僕は一生関わりたくない人物。
 生活習慣病に気を付けて、としか思っていない。
 ……そんなことは口が裂けても言えないけれど。

「雲の上の存在って言ってたから、てっきりリュセの想い人はルーク殿下だと思ったんだが……。違ったらしいな?」

 僕の死んだ魚のような目を見たからか、オースティン父様が苦笑いを浮かべた。

「僕の命の恩人です」
「…………っ、おい、まさか」

 絶句する父様に、それ以上は言わないで欲しくて、僕はわかっているとばかりに手で制した。

「はい。分不相応だとわかっています。僕なんかじゃ相手にされないことも……。恋人になりたいだなんて、贅沢なことは思っていません。ただ、出来たらお話してみたくて……。い、いえ、あのお方の視界に入るだけでもいいんですっ!」

 初めて胸の内に秘めていた想いを口にする。

 友人がいないから仕方がないことなんだけど、家族に話すのもなかなか恥ずかしい……。

「し、失恋確定なんですけどっ。それに、九つも歳が離れているし、対象外だとわかっています。それでも、三年前のお礼を伝えたくて……」

 消え入りそうな声で伝えた僕だけど、本当なら告白だけでもさせてほしいと思っている。

 きっと気持ち悪いと思われるだろうけど、一瞬でもいいから僕のことを考えて欲しいだなんて、浅ましいことを考えていた。

 もじもじしていると、顎が外れているんじゃないかと心配になるくらい大口を開けるエルヴィス母様がいた。

「よし! 行くぞ!」
「っ…………へ!? ぼぼぼ、僕の話を、聞いていましたか!?」
「ああ! しっかりと聞いていた! リュセの想い人が、シュヴァリエ・ライトニング公爵子息だってことをな?」

 ニッと口角を上げた母様に、ぐいぐいと手を引っ張られる。

 必死に両足でブレーキをかけるのに、母様はレスラー並みに力が強い。
 ぎゃーぎゃー騒ぎ、礼儀作法のなっていない僕たちの前に道が出来る。

 シャンパンを片手に憂い顔を披露する美丈夫の前に引き摺られた僕は、緊張しすぎて意識を失いそうになっていた。









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