婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

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流星

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 仕事仲間に、同性愛者だと露見したことに驚いたのだろう。
 僕は気にしていない。
 誰にも言うつもりもない。

「きちんと説明したんですけど、誤解させてしまったみたいで……。すみません……。今後は、安いアパートを借りようと思います。今までお世話になったのに、迷惑をかけて──ッ」

 黙って聞いていた遠藤さんが、急にアクセルを踏んだ。
 凄腕ドライバー並みのテクニックに呆気に取られている間に、彼のマンションの駐車場に到着する。
 すぐさま車から降りた遠藤さんに驚いていると、僕は引き摺られるようにマンションの一室に押し込められていた。


 扉を閉めた瞬間に、壁ドンをされる僕。
 まったく甘い空気ではない。
 むしろ遠藤さんの纏う恐ろしい空気に、背筋が凍りついていた。

「俺から離れるだなんて許さない」
「っ……」
「なんだ? 俺がゲイだからって引いたのか?」

 いつもより低い声が怖くて、言葉が出なかった。
 それでも、ふるふると首を横に振る。
 無言で鋭い目に見下ろされる僕は、鞄を握りしめてただただ首を横に振っていた。

 すっと端正な顔が近付いて来る。
 僕の心を読もうとしているのか、まじまじと凝視される僕は、恐怖から視界が歪んでいく。
 軽蔑しているわけじゃないのに、こんな態度じゃ勘違いされてしまう。

 それでもなにも言えなくて体を縮こまらせると、なぜか目の前にある口角がぐっと持ち上がる。

「なあ、流星」
「っ、」

 いつも僕を、オイとか、バイトリーダーとしか呼ばない遠藤さんが、僕の名前を呼ぶ。

「ゲイに偏見がないなら、このまま俺と同棲するだろ?」
「っ……」
「出ていかないよな? そうじゃなきゃ、本当は俺を気持ち悪いと思ってるってことだよな?」
「っ、ち、ちがっ、思ってませんっ」

 僕のか細い声に、片眉を上げた遠藤さん。
 納得していないように見えるけど、どこか満足そうな表情が怖い。
 怯える僕の頬に、そっと指が触れる。
 びくんと大袈裟に反応してしまい、ガタガタと震えてしまう。
 怒らせてしまったと身震いするのに、なぜか遠藤さんはうっそりと笑った。

「ネットカフェ生活は終わりだ。これから毎日、流星は俺と住むんだ。いいな?」
「っ、で、でも……」
「帰る場所がないんだろ? 誰からも必要とされていないんだよ、流星は。そうだろ?」
「…………」


 遠藤さんに言われるまでもなく、幼い頃から僕自身がわかっていたことを淡々と告げられて、涙が込み上げて来る。


 医学部に入学した優秀な兄と、読者モデルの妹にはさまれる地味な僕。
 元々存在感がなかったのに、フリーターになった時点で家ではいないものとして扱われていた。
 常に輪の中心にいる妹がSNSに載せて評価を受ける画像には、見目麗しい仲良し四人家族の姿。
 そこに僕の存在が含まれることは、一度もなかった──。


 歯を食いしばる僕は、必死に涙を堪える。
 その間、僕に現実を叩きつけてきた人は、じっくりと僕の顔を凝視していた。

 なにも言い返せずに目を伏せると、どこかうっとりとした息を吐いた遠藤さんが、目尻の涙を優しく拭ってくれる。
 それも指先ではなく、唇だった。

「でも、俺が流星を拾ってやるから安心しろ。俺が帰って来るまで、いい子で待ってろよ?」

 驚きすぎてじっと固まる僕の頭を、よしよしと優しく撫でた遠藤さんは、『今日は早く帰るから』と告げて出て行った。

 オートロックの扉が閉まる。
 緊張の糸が切れた僕は、その場にへろへろとしゃがみこんでいた。











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