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33 噂の出所は ユリア
しおりを挟む今回のお茶会での話題は、クラウディア様からの返信がないことです。
どんなに忙しくとも、クラウディア様からは必ず三日以内に丁寧な文が届きます。
いつも私の桃色の瞳に合わせた花が添えられており、全て押し花にして大切に保管しております。
今回も、辺境の地に着いたらすぐに手紙を書くとお約束してくださったのです。
新しい環境に、戸惑っておられるのかもしれません。
ですが、クラウディア様は、決して約束を反故にするようなお方ではないのです。
「クラウディア様が悪女という噂が流れているせいで、平民たちから白い目を向けられているのかもしれません」
「もしそうだったとしても、クラウディア様と関われば、きっと疑いは晴れるでしょう」
「ですが、顔には出さずとも、傷付いておられるはずです。心優しいお方ですから……」
悩ましい溜息を吐く私たちは、クラウディア様の身になにかあったのかと不安でたまりません。
すぐにでも駆け付けたいのですが、家庭の事情により自由のきかない身の私は、こうして集まることしかできないのです。
「あの噂は、どこから流れているのでしょう」
「ロベルトあたりじゃないかな?」
私の呟きに、クラレンス様がさらりと告げます。
ロベルト第一王子殿下も、密かにクラウディア様を慕っていたお方です。
それなのに、どうして愛する人を苦しめるようなことをするのでしょう。
手に入れられないからといって、そんな悪行をするだなんて、理解に苦しみます。
「まあ、ロベルト本人ではないと思うよ? ラウルがだらしないから、自分はしっかりしないとって気を張っているからね? でも、ロベルトに仕えている奴らからすると、クラウディアは邪魔な存在でしかないでしょ?」
噂の出所は、彼ら以外に考えられないと述べるクラレンス様ですが、お顔はとても楽しげです。
妹を心配している兄には見えません。
「どうしてそんなに楽しそうなのですか」
「自信があるからね? アリステア様が、必ずディアの心を救ってくれる。あのお方なら、ディアに寄り添ってくれるはずだよ」
「……そうなのですか」
「うん。でも、噂を流した奴らは許すつもりはないよ?」
にこにこと頬を緩ませながら、低い声で語っておられます。
私たちが動かずとも、クラレンス様が成敗してくれるようです。
「それに、今は王位を巡って、バルサール国が戦争を仕掛けようとしているみたいなんだ」
「っ、そんな! それではクラウディア様に万が一のことがあったら……」
「それは大丈夫。ディアは誰よりも強いから」
クラウディア様の剣術の腕が素晴らしいことは、誰もが知っていることですが、それでも不安は拭えません。
さすがに女性が戦に出ることはないでしょうけれども、あのお方なら先陣を切ってしまいそうです。
辺境の地に向かおうとするドロシー嬢を宥めながら、王都より愛おしいお方の無事を祈ります。
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