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15 新たな問題
しおりを挟む今度こそはお暇しようとすると、今まで傍観していたロベルト殿下が私の元へ歩み寄る。
「ラウルが迷惑をかけてすまなかったね」
「いえ」
「それで提案なんだけど。私の婚約者にならない?」
こてりと首を傾げる微笑みの王子様は、何を考えているのか全くわからない。
呆気に取られていると、それは良いかもしれないと、陛下までも賛同する。
「あら、それは駄目よ」
「っ、母上? どうしてです? 二人の婚約が白紙になったとはいえ、貴族の間では周知の事実。クラウディアの次の婚約は、難航すると思います。しかし、私の婚約者になれば、王家とも繋がりができて、スアレス侯爵家にとっても良い事かと」
つらつらと述べたロベルト殿下をリアーナ王妃様は、見極めるような目で息子を見つめる。
「貴方が今まで黙っていたのは、こうなることがわかっていたからでしょう? クラウディアの事を第一に考えることのできない貴方は、彼女には釣り合わないわ」
「…………しかし」
「言い訳ばかりしていないで、はっきり言いなさいよ。クラウディアのことが好きだから、婚約して欲しいと。そんなことも言えない貴方が、クラウディアを幸せに出来るとは到底思えないわ」
ぎょっとしてロベルト殿下を見れば、視線を泳がせていた。
「狡賢いのは良いことだけど、恋愛に関してはダメね。陛下を見習いなさい? 情熱的よ」
「ゴホンッ」
咳払いをする陛下が照れていることに気付く。
我が家とは違い、陛下は王妃様だけを愛している。
若かりし頃は、玉砕覚悟で何度も告白されていた事を聞いていた私は、二人を微笑ましく思った。
「クラウディアに惹かれていたことは認めます。でも、ラウルと婚約関係にあったのに、告白なんて出来るわけないじゃないですか……」
「そうね。でも、助けてあげることはできたでしょう? 辛い時に寄り添ってあげてさえいれば、貴方の提案に乗ってくれたかもしれないわね? でもそれをしなかったじゃない」
「っ、ですが!」
「それに、ラウルはどうするの? まだクラウディアに未練があるのよ」
「そんなの自業自得じゃないですか!」
ロベルト殿下が初めて声を張り上げたところを見て、驚いて目が丸くなる。
「私の方がクラウディアを幸せに出来ます! 私は、クラウディアだけを大切にします!」
力強い目で母親を見つめるロベルト殿下だが、私の気持ちはどうなるんだ?
これは、告白されているのか?
新たな問題に頭を抱えたくなり、視線を逸らすと、未だに放心状態のラウル殿下と目が合った。
潤む翡翠色の瞳は、今でも私を慕っているのだと感じ取れる。
その状態で私が彼の兄と婚約すれば、ラウル殿下の心が壊れてしまうだろう。
ぶん殴られても私を好きでい続けるなんて、本当に変わったお方だ。
出来ることなら、彼にやり直すチャンスを与えて添い遂げたかったが、どうしても許すことが出来なかった。
最後に優しく微笑んで、彼から視線を逸らした。
泣きじゃくる声が聞こえたが、私の瞳はもう彼を映すことはなかった。
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