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12 話し合いの場で
しおりを挟む──翌日。
父とクラレンスと共に、王宮に向かうこととなった。
謁見の間に通されると、険しい表情の国王陛下と王妃様、不貞腐れた顔のラウル殿下が。
そして、いつも通り微笑むロベルト殿下まで待っていた。
加えて、ラウル殿下の子を宿したご令嬢の家族も呼び出されていた。
ラウル殿下の運命のお相手は身篭っているため、椅子に腰かけてはいるが、仏頂面だ。
簡単に挨拶を済ませた父は、既に臨戦態勢。
差別されていると思っていたが、意外にも私のことを愛してくれているようだ。
「息子の愚かな行為を許して欲しい。この通りだ」
赤髪を撫で付けた陛下が、頭を下げる。
まさか陛下が謝罪するとは思わずに度肝を抜かれたが、父は当たり前のように受け入れていた。
「婚約を解消していただきたい」
「もちろんだ。慰謝料も支払う」
あっさりと了承したことに驚きを隠せずにいると、王妃様が私の元へ優雅に歩いて来る。
だが目元が少しだけ赤らんでいるから、もしかしたら私のために泣いてくれたのかもしれない。
「クラウディア……。ずっとラウルを支えてくれていたのに、傷付けてしまって……。本当にごめんなさい」
「リアーナ王妃様……」
「義理の家族になれなくても、本当の娘だと思っているわ」
優しく包み込まれて、目頭が熱くなった。
母と会えない分、いつも私を気遣ってくれたのは王妃様だ。
おずおずと腕を持ち上げて、抱擁を交わした。
今の王妃様の発言は、ラウル殿下の新しい婚約と、その家族にとっては苦々しいものだろう。
だが、それをわかっていてわざわざ言葉にしてくれたのだから、嬉しいことには違いない。
「ディア!」
つんざくような声と共に、全力で走ってくるラウル殿下。
だが、直様父に妨害されていた。
「俺は認めてないからな! 俺は、ディアじゃないと嫌だ!」
「なにを仰っているのです? 殿下」
父のドスの利いた低い声にも怯まないラウル殿下は、目を血走らせていた。
「俺は、ずっと昔からディアが好きなんだ!」
なにを言っているのか理解出来ずに首を傾げる。
私を慕っていたのなら、他の令嬢と関係を持つ意味がわからない。
私以外の令嬢と関係を持つということは、私が傷付く事になる。
そんなことは、馬鹿でもわかっていたはずだ。
それも、特定の相手ではなく、誰とでも寝ていたことを知っている。
いくら欲求が溜まっていたとしても、私だったら慕う人としかそういう行為はしたくない。
だから、私とラウル殿下の考え方が、根本的に違うのだろう。
婚姻する前に、気付けて良かったと思う。
「……私も、お慕いしておりました」
微笑みかけると、息を呑んだラウル殿下の頬が紅潮した。
「じゃ、じゃあ、このまま……」
「それももう過去のことです。殿下」
「っ、許してくれ! ディアっ、やり直したい。反省してるんだ! 次からは、ディアの言うことをなんでも聞くからっ!」
必死に叫ぶラウル殿下を、冷めた目で見つめる。
彼には以前、母の事を話している。
私が一番嫌悪することをしでかした事に気付いていないのだろうか?
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