王子の次は師匠が婚約者!? 最強夫婦になりまして

ぽんちゃん

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 金色の髪が眩しい、ロベルト第一王子殿下だ。
 天使のような甘い顔立ちは、老若男女に愛されている。
 私と同い年の彼には想い人がいるそうで、未だに婚約者がいない。
 彼のように一途であれと、私の婚約者にも言いたいものだ。

 「ラウルは、クラウディアに執着しているからね?」
 「姉とでも思われているのでしょう」
 「……どうだろうね? 口付けくらい許してあげたら?」
 
 一度だけ口付けられたことはあるが、あの時のことは私だけの秘密にしたい。
 無言になる私に冗談だと話すロベルト殿下は、酷く嬉しそうな顔をなさる。
 私を揶揄うことがお好きなようだ。
 基本的に無表情の私の顔を崩したいと願っている翡翠色の瞳は、キラキラと輝いている。

 「クレアを女装させて送り込んでみようか。きっと大喜びだと思うよ? 気付いた時には……」
 「クラレンスを巻き込まないでいただきたい」

 不敬にもロベルト殿下の話をぶった切る。
 クレアと愛称で呼ぶ彼は、クラレンスと懇意の間柄である。
 実は恋人同士なのではないのかと噂されている程だ。

 同性同士の結婚は、法では認められていない。
 だが、私は男性同士の恋愛に偏見はない。
 なにせ仲の良い令嬢達から、毎日のように愛の告白をされているのだ。
 愛に性別は関係ないと思っている。

 ロベルト殿下が王子でなければ、二人は結ばれていたかもしれないのにと残念に思っている。
 互いを女性避けに利用し合っていることを知らない私は、密かに二人の恋を応援していた。

 「ラウル殿下がやらかした場合には、二人の子にすることも」
 「……クラウディア? 今なんて?」
 「あっ、いえ。独り言です」
 「すごく恐ろしい独り言が聞こえて来た気がしたけど、気のせいかな?」

 頬を引き攣らせるロベルト殿下は、苦笑いを浮かべていた。
 さすがのラウル殿下も、避妊の仕方くらいわかっているだろうと笑い合う。

 まさか半年後に、ラウル殿下が手を出した令嬢が子を宿すことになるとは思わずに……。


 

 ラウル殿下に忠告することを諦め、野放しにしていると、彼の方から私に会いに来るようになった。
 隣に可愛らしい令嬢を連れて。
 毎日相手が違うのだが、そこはつっこんでも良いのかわからないので、口を噤んでいる。

 本日は金髪碧眼の美少女だ。
 人形のように可愛らしいお方は、ラウル殿下の腕に凭れかかり、身を預けていた。
 
 「ディア。この女が俺の子を宿した」
 
 ついにやらかしたと頭を抱えたくなったが、それなら私はもう必要ないのだろうと悟った。

 「おめでとうございます。では、婚約解消の手続きを」
 「っ……なぜだっ! 俺の妻になる女は、ディアだけだっ!」
 「「は?」」

 私だけでなく、ラウル殿下に抱き寄せられている令嬢も同じように素っ頓狂な声を上げた。
 よく見れば鬼の形相をしている。
 可愛い顔が台無しだ。

 そこからはラウル殿下の子を宿した令嬢が喚き出し、二人が喧嘩になった。
 以前までなら仲裁していたが、二人は夫婦となるのだから、私には無関係だ。
 
 「待て!! ディア!!」

 冷たい秋風と絶叫する声を背に受けて、私は王妃様の元へ向かうのだった。
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