嫌われ王子様の成長 〜改心後、暴君の過去が役に立つこともある〜

ぽんちゃん

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173 俺がいると逆効果?

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 恋人との素敵な夜を過ごして一週間が経ち、調味料専門店も今のところはなんの問題もなく、順調に売り上げを伸ばしている。
 なにかトラブルがあったとしても、優秀なジルベルトとリュカが対応しているから安心だ。
 
 朝から激甘な態度の保護者ジルベルトに付き添われている俺は、現在第二王子殿下の執務室にいた。

 「申し訳ありませんが、リオンのことをよろしくお願いします」
 「ああ、安心して行って来い」

 深々と頭を下げたジルベルトに、ファーガス兄様が任せろとばかりに頷いた。
 お利口にしているんだぞ、と声をかけられた俺は、ジルベルトからいってきますのキスをされる。
 部屋の扉まで歩いたジルベルトが振り返り、ぽけっとしている俺を心配そうに見つめていた。

 「本当に一人で大丈夫? ファーガス殿下の言うことを、ちゃんと聞くんだよ?」
 「うん! って、いやいやいや。俺は、初めて幼稚園に来た子供じゃないんだけど……」
 「なるべく早く迎えに来るから」
 「……えーっと。うん、待ってるね?」
 
 笑顔で手を振ると、名残惜しそうな表情を浮かべたジルベルトが、俺に駆け寄る。
 もう一度、俺にいってきますのキスをしたジルベルトが笑みを浮かべ、ようやく退出した……。
 

 ジルベルトと二度目のアレをしたときに、俺はジルベルトが獣になった姿を見ることが出来なかったことに気付いてしまったのだ。
 だから、『次はキスしながらしたい』って、さりげなくお願いしたんだけど……。
 それから、どうしてかジルベルトの過保護っぷりが大爆発しているというわけだ。

 なんだかんだでかまってもらえて喜んでいる俺は、さっさと用意された席に腰掛けた。


 現在、ニコラス母様の母国の方々がクロフォード国を訪問しており、さらにコロッケの評判を聞きつけたリディア国の使者も訪れているようで、みんな対応に追われている。
 
 唯一暇を持て余していた俺は、日中はファーガス兄様のお手伝いをすることになったのだ。
 ファーガス兄様の執務室で、俺にでも出来るような簡単な書類整理のお手伝いをしている。
 と言っても、急ぎのもの、後回しでも大丈夫なものを仕分けるだけ。
 ……子供でも出来る。

 「よーし、今日も一日頑張るぞっ!」
 「ククッ……。頼んだぞ、リオン」
 
 ベールを装着した俺の頭をなでなでした、麗しいお顔のファーガス先生。
 いや、ファーガス兄様が銀縁眼鏡を装着し、お仕事モードに切り替わった。

 お仕事中のファーガス兄様は、口調がかなりキツイことが発覚した。
 ピリッとした空気の中で仕事をするのはしんどいだろうから、俺はなるべく笑顔を心がけている。

 ベールを装着しているから意味がないかもしれないけど、働きやすい環境作りは大切だ。

 「あ、あの、この書類を……」
 「はい。ありがとうございます、お疲れ様です」

 怯えながら、俺に書類を提出してくれた若者に、笑顔でお礼を告げる。
 だが、逃げるように退出してしまった。

 ……俺がいると逆効果?
 ファーガス兄様のピリッとした空気プラス、傍若無人な我儘王子がいては、みんな緊張してしまうのかもしれない。
 もう少し愛想良くしないとダメだな。

 反省していたが、半日も経つと、大勢の臣下が俺の机の前に並んでいた。
 そう、俺の処理スピードが遅すぎるのだ!

 「お待たせしてごめんなさい。えっと、これはすぐに対応した方が良いですね?」
 「は、はいっ。よろしくお願いします」
 「了解しました。ありがとうございます、お疲れ様でした」

 こんな会話を何度も繰り返す。

 そして、スーツをビシッと着こなす、見覚えのある白銀の髪のお義兄様がいらしていた。

 「アシュリー様! お疲れ様です」
 「お疲れ様です、お手伝いですか?」
 「はい! 簡単なことしか出来ないんですけど、ファギー兄様の力になりたくて」
 
 えへへと笑うと、珍しく銀縁眼鏡をかけるアシュリー様が、眼鏡をクイッと持ち上げる。

 賢い人がよくやるやつだ!

 「お仕事中は眼鏡をかけているんですね?」
 「ええ、視力が弱いもので」
 「すごく似合ってます。俺、眼鏡が似合う人が好きなので、ドキッとしちゃいました」
 「っ、そ、そうですか……」

 少し照れ臭そうに笑ったアシュリー様は、俺にエールを送って下さった。
 ジルベルトとは違ったタイプの美形に応援してもらい、ルンルン気分になった俺は、テキパキと仕事をこなす。

 形から入るタイプの俺も眼鏡が欲しくなり、ファーガス兄様をチラリと盗み見る。
 ファーガス兄様も、仕事中は眼鏡男子だ。

 ……控えめに言って、めちゃくちゃかっこいい。

 休憩時間にファーガス兄様の元へ行った俺は、さっそく眼鏡を貸してもらう。
 ベールを外して、眼鏡を装着。
 クイッと持ち上げて、最後にドヤ顔で決めた。

 「似合ってますか?」
 「ククッ。あまり似合っていないな? ……可愛い顔が見えない」
 「えぇ~」

 ガックリと肩を落とす俺を見て、くつくつと笑い続けるファーガス兄様。
 口を尖らせていると、謝罪したファーガス兄様に頭ぽんぽんをしてもらった。

 すると、ほうっと声が聞こえて来る。
 辺りを見回すと、書類を手にした臣下たちが、ファーガス兄様の美しい笑みに見惚れているではないかっ!!

 ……なんてこった。

 









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