嫌われ王子様の成長 〜改心後、暴君の過去が役に立つこともある〜

ぽんちゃん

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139 最初から両想い……?

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 ドレイクと別れて王宮に戻ると、父であるメルキオール国王陛下の自室に案内される。
 そこには、両親の他に兄様三人が俺を待ってくれていた。

 「「「リオンっ!」」」
 「ご心配をおかけして申し訳ありません……」
 「大丈夫か?」
 「はい、少し一人になりたくて……」

 頭を下げると、父様が全身から力が抜けたかのように、どさりと椅子に腰掛ける。
 そんな父様に、母様が優しく背中を撫でて寄り添った。

 「リーちゃんになにかあったかと……」
 「ごめんなさい……」
 
 心から俺を心配してくれていたことが伝わってきて、俺は泣きそうになる。
 俯いていると、兄様三人からぎゅうっと抱きしめられていた。

 「リュカに話を聞いた……というより、無理やり話させた。一人で抱えて、辛かったな」
 「っ、ハル兄様……」
 「そうだよぉ、もぉ~! 何でも話してよ! リオンは俺の可愛い弟なんだから! リオンに何かあったら、関わったヤツ全員殺しちゃうよ?」
 「……セオ兄様、怖いです」

 相変わらず笑顔で恐ろしいことを言うセオドル兄様に、俺の頬は若干引きつった。

 「リオン、すまない。私が悪いんだ。リオンに関わる大切なことを、本人にだけ話さなかったから」
 「ファギー兄様? 大切なことって?」
 「ああ。まずはジルベルトのことだ。あいつはリオンだけを愛してる。それに、リュカもだ」
 「っ?!」
 
 ファーガス兄様の真剣な表情と声色に、今の言葉に嘘はないのだと感じ取った俺は、軽くパニックになっている。

 「ジルベルトが、なぜリオンの初恋の相手と一緒に、リオンを守ろうとしたのかを今から説明する」

 そう言って話してくれた内容は、とてもじゃないけど、信じられないものだった。

 俺の瞳には、初代国王リオネル・クロフォードと同じく、人を魅了する不思議な力が宿っている可能性があるらしい。
 それで健康診断だと偽り、魅了の魔法を使用しているのかを調べていたようだ。
 
 「俺に、人を魅了するような力が宿っているなんて……ありえません。俺は馬鹿だし、平凡だし……いや、ぶっちゃけ屑だし……」
 
 自分で言いながらしゅんと項垂れると、兄様三人がよしよしと、いろんなところを撫でてくれる。
 真剣な話をしているのに、セオドル兄様だけは、俺の尻を撫でている気がするんだけど、きっと気のせいだと思う。

 俺に魅了の魔法が使えるだなんて、チート機能が備わっているとは思えない。
 もしそんな魔法が使えるのなら、今頃俺は、世界中の人々に愛されているはず……。
 それが今も嫌われ者のままなのだから、やっぱり平凡なんだと思う。

 それでも、一つだけ気になっていることがある。

 「でも……今思えば……あの時のロバート様は、いきなり様子がおかしくなっていました……」
 「ああ。ロバート本人も、リオンを襲うつもりはなかったと話しているし、あれは一応、私のことを友人だと思っているはず……。いくらリオンを気に入ったからと、私の部屋で襲うような軽率な行動を取るはずがないんだ」
 「一理あるね。俺だったら、絶対自分の部屋で監禁して犯すもん」
 「…………セオ兄様」

 なにかおかしなことでも言ったかと、こてりと首を傾げているセオドル兄様。
 可愛い顔で、監禁&犯すって言うなっ!

 結局、クロフォード国の優秀な人材を招集し、詳しく調べてみたものの、今のところ俺から魅了魔法は感知されなかったそうだ。
 と言っても、リオネル様が生きていた数百年前ですら、魔法なんてお伽話のようなものだと認識されていたのだ。
 調べようがないと思う。

 「だが、ジルベルトは焦っていたのだろう。リオンになにかあったらと考えただけで、眠れないと話していたからな……」
 「そうだったんですか……」
 
 真実を知った俺は、深い溜息を吐き出した。

 ジルベルトは、他に好きな人が出来たわけじゃなかったのか……。
 嫌いだって言って、別れまで告げてしまったことに、胸が苦しくなる。

 でも……。
 だからって、リュカと二人で俺を愛そうとするなんて、どう考えてもおかしい気がする。

 「リオンにフラれたジルベルトは、現在廃人と化している」
 「っ……」
 「それに、リュカはリオンに想いを伝えようとしていたんだ。だが、いつもタイミングが悪くてな? ジルベルトと婚約した方が良いと言ったのも、リオンのことが好きだったから、リオンにジルベルトを見捨てるような男だと思われて、嫌われたくなかったからそう告げたらしいぞ?」
 「えっ……」
 「二人は最初から両想いだったんだ」


 ……最初から両想い?
 俺とリュカが?


 ファーガス兄様の言葉に呆然としていると、頬をツンツンと突かれた。

 「それなのに、拗れに拗れてぇ~! 見てるこっちがハラハラしてたよ!」
 
 そう言って肩を竦めるセオドル兄様は、ずっと前からリュカの気持ちを知っていたらしい。
 
 「リュカは身分が釣り合わないからと、本当の気持ちを伝える勇気が出なかったんだろうな? それに、ジルベルトと恋仲になったリオンの幸せそうな姿を見ていたら、想いを伝えることも出来なくなるだろう」
 「っ……俺、リュカとあんなにいつも一緒にいたのに、全然気づかなかった……」
 
 今まで、俺とジルベルトがイチャイチャしてる姿を間近で見てきたリュカは、どんな気持ちだったんだろう。
 死ぬほど辛い、よな。
 俺もリュカとジルベルトが恋仲だと勘違いしていたときは、逃げ出していたから。

 ……リュカに会いたいっ。

 今すぐリュカに会いに行こうとすると、ファーガス兄様に腕を取られた。










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