嫌われ王子様の成長 〜改心後、暴君の過去が役に立つこともある〜

ぽんちゃん

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112 真実 リュカ

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 「そんなことを言われましても……」
 「なんだよ?」
 「リオン殿下が、私のことを想っているなど、予想外でしたので……」
 「……は?」
 「今でも夢なのではないかと……」
 
 はあ?! と大声を出すロバート様に、ファーガス殿下は溜息を吐いた。

 「なぜリオンにジルベルトの婚約者になるように勧めたんだ?」
 「それは、虐待を受けるジルベルト様を救い出すためには、リオン殿下の婚約者になることが最善の道だと判断しました」
 「それは表向きの答えだな」
 「……はい、そうです。私はリオン殿下に失望されることを恐れて……あの時はそう言うしか……」

 なるほど、と呟いたファーガス殿下。

 「ジルベルトを見捨てるような非道な男だと思われたくなかったんだな?」
 「はい。それでリオン殿下に勘違いをさせてしまったようです……」

 あの時、私は判断を間違えてしまった。

 ジルベルト様を助けたいが、私はリオン殿下が好きだと言ってしまえばよかった。

 「でもよ、さっきリオンちゃんが話してたけど、お前とジルベルトは仲良しなんだろ?」
 「いえ、厳密に言えば違います」
 「詳しく話せよ!」

 バンっと机を叩いたロバート様に、私は渋々口を開いた。

 「ジルベルト様の傷薬を塗る役目は、私でなくても良かったのです。ジルベルト様は、リオン殿下に醜い体を見られたくないと言うお気持ちでしたので。私の方も、リオン殿下が傷を見てしまえば、ジルベルト様に同情して、いずれは恋仲になってしまうと予想できましたので、即引き受けました」
 「うわっ、拗れてる! 既に拗れまくってる!」

 なぜか興奮気味に語るロバート様は、面白がっているのだろうか?

 「私達が息ぴったりなのは、私もジルベルト様も、リオン殿下しか見えていないからです」
 「おふっ、三角関係っ!」
 「……ジルベルト様は、リオン殿下と婚約した後、リオン殿下が私のことを慕っているのなら、恋人として認めると仰って下さいました」
 
 私の言葉に口をあんぐりと開けるロバート様。
 ファーガス殿下も目を見張っている。

 やはり信じられないだろう。
 私も未だにそう思う。

 
 「ジルベルト様を蔑ろにしないという前提でのお話です」

 そう告げると、お二人は理解しがたい表情で顔を見合わせていた。

 「ジルベルトって頭がいかれてんのか?」
 「いや、優秀な男だと聞いている」
 「勉強しか出来ない奴なんだな?」
 「育った環境が悪すぎたんだろう……」

 なぜか意気消沈するお二人に、私は話を続けることにした。
 
 「それに、リオン殿下の処女も、私に譲ってくださると……」
 「っ、お前ら、どんな会話してんだよ!」
 「リオンの処女を譲るだと?!」
 
 いつも冷静なファーガス殿下が激昂し始めて、無表情を務めている私だったが、頬が引きつってしまった。

 「ジルベルト様は、リオン殿下のことをお慕いしていますが、私と同じような感情ではないようで、仕事のパートナーとして必要とされたことが嬉しかったようです」
 「そういうことか。誰にも必要とされたことがなかったから、今はそのような気持ちなんだな?」
 「はい。ですから、ジルベルト様が本気になる前に、私はジルベルト様の提案に乗りました」

 にやりと口角を上げるファーガス殿下に、私は視線を逸らしてしまう。
 きっと私の考えていることがバレている。
 恐ろしいお方だ。

 「リュカはリオンに手を出していないのか?」
 「……はい」
 「ふっ。わかりやすいな? 抜き合うくらいはしているんだろう?」
 「…………はい、片手で数えられるほどですが」
 「意外と少ないんだな?」

 馬鹿にされた気がして、じっとりとした目を向けてしまう。

 「私もあるぞ?」
 「っ……」
 「羨ましいだろう?」
 「胸元に鬱血痕も……」
 「なんだ、わざわざ確認したのか。嫉妬深いな」

 婚約者の前で、よくそんな話ができると、ファーガス殿下に怪訝な顔を向けてしまう。

 すると、ファーガス殿下がひどく色気のあるお顔で頬杖をついた。

 「リオンはな、私の勃起不全の治療のために協力してくれただけなんだ」
 「っ……」
 「もちろんロバートの許可も貰っている」

 うんうんと軽く頷くロバート様は、随分とファーガス殿下を信頼なさっているように見える。

 いつもは何でも話してくださるリオン殿下が、初めて秘密事をしたのは、お二人のためだった。
 もしかしたら、ファーガス殿下に恋をしてしまったのかと勘繰っていたのだが……。
 私の早とちりだったことがわかり、安堵する。

 「リュカがリオンを慕っているのなら、リオンをジルベルトと共有しない道を探し出す努力をしたらどうだ?」
 「……私には無理です」
 「根性ねぇなぁ! 俺だったら……」

 ファーガス殿下が、ロバート様の口に焼き菓子を突っ込んで塞ぎ、私に話すように促した。
 これでもかとハンカチで手を拭っている様子を見て苦笑いしつつ、口を開いた。

 「それに、ジルベルト様も……それほど憎めない方なので……」
 「そうか。あとはリオンが受け入れるかどうかだな?」
 「しかし、リオン殿下は一途な陛下を尊敬していらっしゃるので……」
 「一途? 父上が?」

 ははっと笑ったファーガス殿下に、私は衝撃的な事実を聞くことになる。

 このことを知れば、リオン殿下はもちろんのこと、ジルベルト様もどう思われるのだろうか?
 衝撃的な秘密を聞いてしまった私は、誰にも漏らさぬように口を引き結ぶのだった。
















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