嫌われ王子様の成長 〜改心後、暴君の過去が役に立つこともある〜

ぽんちゃん

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6 威嚇するジルベルト

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 リンネス邸から帰ろうとすると、ちょうど部屋から出てきた背の高い金髪の男が、フラつきながら扉にもたれ掛かっていた。

 「大丈夫か?」

 咄嗟に体を支えると、俺より背が高いのに、服の上からでもわかるほど酷く痩せ細っていた。
 しかも顔色も悪い。
 うっ、と苦しそうな声を出して、男の伏せていた目が開く。
 瞼の下には、透き通るような空色の瞳が隠れていた。

 「体調が悪いなら部屋まで送るぞ」
 「っ、結構です」

 バッと俺の腕から離れた爽やか系の美青年。
 ただし、顔色はかなり悪い。
 俺の顔を見た瞬間、整った顔をこれでもかと歪ませる。
 俺のことが相当嫌いらしいことが、彼の全身から伝わってきた。

 「そうか。随分と顔色が悪いが……」
 「私のことは放っておいてください」
 「そう言われても、明らかに具合の悪いやつを目の前にして、放ってはおけないな?」
 「……今度は何のお遊びですか?」
 「なに?」

 キッと俺を睨む目には、明らかな憎悪が感じられた。
 過去の俺は、こいつに相当嫌われることをやらかしているらしい。
 目鼻立ちの整っためちゃくちゃタイプのイケメンなのに、残念だ。

 「ちゃんと飯食って寝ろよ」

 俺の真っ黒な髪と違い、キラキラと輝く金髪は眩しくてたまらない。
 労わるように優しく撫でて、通り過ぎる。
 イケメンの金髪は少し傷んでいたが、それでも兄様達並みの美形だった。

 馬車に乗り込み、ようやくさっきの男がアーノルドの兄のジルベルトだと思い出した。
 昔とは違って痩せ細っていたせいか、すぐに気づけなかった。
 アーノルドは、いつもあいつに虐められていると言っていたが、どこからどう見ても、ジルベルトの方が病人らしかった。

 「ジルベルトだったか? アーノルドより、あいつのほうが具合が悪そうだったよな?」
 「はい。私にもそう見えました」
 「ちなみにだけど、アーノルドって本当に病気だと思うか?」
 「私は医者ではないので断言はできませんが、十中八九仮病かと」
 「だよな。泣き脅しされてまた会う約束したけど、もうあまり会いたくないかも……」

 へへっと頭を掻きながら本心を語ると、俺の向かいに座るリュカは、困ったような顔をして頷いていた。

 アーノルドが平気な顔で嘘をつくことがわかったんだから、ジルベルトに虐められているって話も嘘かもしれない。
 なんでそんなくだらない嘘をつくのかはわからないが。

 「リュカ、信用出来る奴はいるか? 出来れば、リンネス公爵家のジルベルトとアーノルドのことを、極秘に調べたいんだが」
 「かしこまりました」

 口の端を持ち上げたリュカは、生き生きとしているように見える。
 リュカは、俺が騙されていることをずっと前から気づいていたのかもしれないな。

 「俺ってジルベルトに嫌われてる、よね?」
 「そうですね、心底」
 「げっ、そんなに?!」
 「覚えていらっしゃらないのですか?」
 「う、うーん。まあ、最近老化が進んで……」
 「先日、十六になられたばかりですよね?」

 はい、すみません。と素直に謝ると、リュカが新緑色の瞳を輝かせて、くすっと笑った。

 「アーノルド様に近づくなと、私の口からは言えないような暴言を吐き、そこら中の物を投げつけておられました。ジルベルト様が読んでいた本を奪って、ビリビリに破いて花壇に埋めたり……。アーノルド様に謝れと、髪を引っ張って地面に顔を擦り付けたり……。ジルベルト様の苦手とする昆虫の死骸をたくさん集めて、頭上から落としたり……」
 「う、うん。もういい。最低だな、俺」

 信じられないようなイジメをしていた俺は、項垂れながらジルベルトとの過去を悔いていた。
 そんな俺に追い討ちをかけるように、「もっとありますよ?」と微笑むリュカ。
 これ以上は無理だと、たまらず耳を塞ぐ。

 「噴水に突き落としたことも」
 「あ、はい、そうですか……」

 やめてくれとお願いしても嬉しそうに語るリュカは、ドSのいじめっ子侍従だったらしい。
 
 「でも、そのときアーノルドはどうしてたんだ? 虐められていたとはいえ、実の兄だろ?」
 「リオン殿下と一緒になって、笑っておいででしたよ?」
 「……あいつも屑だったか」
 「そう言われたらそうですね。ある程度やると、『もうやめてあげてください!』とリオン殿下に縋っていました。そんなアーノルド様を見たリオン殿下は、『なんて優しい子なんだ!』と声を張り上げていらっしゃいました」
 「うん、ごめん。もう許して……」

 全然似ていない俺の声真似をするリュカは、ひどく愉しげだ。
 そんな表情、今まで見たことないぞ?!

 以前の俺の行動が愚かすぎて、穴があったら入りたい。
 そして、早急にジルベルトに土下座をして、心から謝罪したい気持ちでいっぱいになった。









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