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4 ラピスラズリ
しおりを挟む賑やかな朝食を終えた俺は、自室で頭を抱えていた。
俺の所持していた鉱山から、ラピスラズリが採掘された。
それは喜ばしいことだ。
だからといって、このまま働かずに遊び呆けていて良いのだろうか?
第四王子である俺は、兄様達と違って特にやることがない。
それに兄様達を手伝いたくても、今まで遊び呆けてきた馬鹿な俺は、どう考えても足手纏いだ。
政から程遠い、堕落した生活しかしてこなかった過去の俺をぶん殴ってやりたい。
憂鬱になっていると、リュカが柑橘系の良い香りのする紅茶を淹れてくれた。
心が安らぐ。
仕事だとしても、俺のために動いてくれるリュカに感謝だ。
「なぁ、リュカ。俺でも出来る仕事ってあるかな?」
「恐れながら……第四王子である尊い身分のリオン殿下が働くとなると、限られてしまうかと」
馬鹿だからとは決して言わないリュカは、優しさの塊なんじゃないかと思う。
「俺の鉱山から、ラピスラズリが採掘されたんだって。だからハル兄様は、俺は働かなくても良いし、結婚しなくても良いって言うんだ。それって、屑すぎないか?」
「ようやく真っ当に……」
急に大人しくなった俺に対して、しみじみと呟くリュカに、俺は相当な暴れん坊だったんだと痛感した。
リュカは俺の専属侍従だから、毎度俺の尻拭いをしてくれていたのだろう。
彼には頭が上がらない。
「俺、変わりたいんだ。だから俺が間違ってると思ったら、その都度教えて欲しい」
「私でよろしければ」
「うん。リュカにしか出来ないお願い事だよ」
新緑色の瞳を見つめて、真剣にお願いする。
目を伏せたリュカは、震える声で「かしこまりました」と呟き、頷いてくれた。
嫌々かもしれないけど、リュカに了承してもらえたことに嬉しくなる。
「それでさ、セオ兄様は婚約者を決める気がないみたいだし、俺がリンネス公爵家のアーノルドと婚約した方が良いのかな? と思ってるんだけど、リュカはどう思う?」
「リオン殿下は、アーノルド様をお慕いしていらっしゃるのでは?」
「え? ただの幼馴染みだよ?」
「そ、そうなんですか……」
目を白黒とさせるリュカに、俺はアーノルドのことが好きだと思われているらしい。
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「まさか。国一番の財力があるからじゃなくて、俺のため?」
「はい。リオン殿下とアーノルド様が恋仲だと思われていたので。いずれ婚約するのであれば、リンネス公爵家から二人も王家と縁を結ぶことは、あまりよろしいことではないので……」
確かに、パワーバランスの関係で、同じ家から二人も王家の婚約者になるのは、あまり良いことではない。
ってことは、俺とアーノルドが恋仲だと勘違いしているセオドル兄様も、アーノルドの兄のジルベルトとは結婚しないつもりなのか?
俺はアーノルドのことを弟分としか見ていない。
勝手に恋仲だと判断するのはやめて欲しい。
「俺、どうしたら良いのかな? わかんない」
「無理に婚約しなくても良いと思いますよ。ファーガス殿下は、ロバート様と良好な関係を築いておられますから。ですからリオン殿下は、愛する方と幸せになれば良いかと」
「そっか。そうだよな」
とりあえず、婚約の件はセオドル兄様次第ってことで良いみたいだ。
美味しい紅茶で喉を潤し、気合を入れるためにパンっと頬を叩いた。
「それでさ、ラピスラズリの件なんだけど。それで何か作りたいんだよね」
「なるほど。アクセサリーですか?」
「うん、まあそんなところ。ラピスラズリって、幸運をもたらすって言われているんだ。それでブレスレットを作ろうかなと思って」
「良い案だと思います。王家の色ですし、神聖な石ですからね。ですが、高価なものなので、裕福な貴族の方しか購入出来ないかもしれませんね」
そう、そこなんだよね。
ラピスラズリの深い青色が、俺を除く王族の髪と瞳の色と同じ色なんだ。
だから、日本での価値より三倍はする超高級品。
金持ちしか手に入れることが出来ない。
「誰でも手に入れられる価格にするにはどうすべきか。それが一番の問題だな」
クロフォード国では、指輪やネックレスはあるけど、ブレスレットはあまり普及していないから、いけると思ったんだけど甘かったな。
優しくダメ出しをしてくれるリュカに相談して良かった。
また後で話そうと告げて、今日は予定通り、アーノルドの見舞いに向かうことにした。
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