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「ねえ将人」
旋回中、夏代が呼び掛けてくる。
「上手くいってる?」
「え?」
川崎が怪訝そうに問い返すと、
「上手くいってる?薫を助けたり、謎を解いたり…」
「何が言いたい?」
「つまりね、あなたは利用されているのよ。まんまとね。しかも私に」
夏代が不可解な事を言う。
「全て、私の思惑通りなのよ。私が仕組んだ罠にあなたははまってる」
川崎が混乱していると、
の為にやった
「何で長戸や六井が殺されたり、B9が焼かれたか分かる?畑中が復讐と思う?本当は違うのよ」
「違うって、どういうことだ?」
「畑中は何もしていない。それが答えよ」
「え?復讐の為に…したんじゃ無いのか?」
思わぬ夏代のセリフに川崎は動揺する。
「そう思うでしょ?それが狙いなのよ。そもそもなぜ復讐という概念が現れたか分かる?答えは簡単よ。薫がヘリから落ちた。これをB9が仕組んだとされたから。これがもし、あの事件が起きていなくて、殺人と放火だけ起これば自白文が書かれてあっても信憑性が薄い」
夏代が抑揚をつけずに一息で言う。
「さっきからお前は何を言ってるんだ?」
怪訝に思いながらも運転に集中する為、無線を開く。
「将人。あなたの推理は50点よ。あなたはこの事件を解いたようで何も解けていないの。でも、あなたが正解した部分もあるの。薫のスカイダイビングの件は全て正解。けれど、長戸と六井を買収したのは私。薫の件の目的は畑中の動機作りと、そして将人。あなたをこの事件に関わらせる為よ」
「俺を!?何の為にだ!」
「忘れたの?ここに来るにはこのスロット以外方法は無いの。そして、スロットを動かせるのはフラット・ヘリコプター社の人間だけ。それで、私は正義感の強いあなたならヘリコプターで薫を助けに行こうとするだろうと思っていたの」
「じゃあ、長戸や六井、畑中の殺害B9の放火、あれは全部お前がやったってのか!?」
「ええ、そうよ。でも、それはあなたのせいでもあるのよ」
怒れる川崎に、夏代がしんみりと言う。
「俺が何をしたってんだ!」
川崎が怒鳴ると、突然夏代の目から涙が零れ落ちた。
「私はね、あなたにフラれたショックで暴力団と関わる様になった。そう。あなたが私を捨てたから。暴力団からお金をもらう為に色々な事をした。それで、私がブルースカイの社員だと知ると奴らはブルースカイとB9を終わらせろと言ってきた。それを聞いた私はすぐに、この計画を思い付いた。私を捨てやがったあいつを利用しようと思って」
「はぁ!?お前…暴力団だなんて…」
あまりの情報量の多さに、頭の整理が追い付かない。暴力団の指示により夏代は先ほど話していた凶行に及んだというのか。
「何でこんな事するんだ!って言いたいんでしょ?それはね…」
夏代が嗚咽を漏らしながら続きを言おうとする。
「あなたと、あなたと関係を戻したかったからよ!!」
夏代の目はもう真っ赤だ。
「あなたは私がお金が無いと分かったから私の事を捨てたんでしょ?だから、私はあなたと関係を戻すために暴力団に関わって体を売ったり、悪い事をして沢山のお金を貰ってたの」
その延長線上が今回の事件。もはや夏代に同情の余地はない。
「違う。あれはお前も納得してただろ。俺だって別れたく無かったよ!」
あの時の別れはお互いの合意だった筈だ、少なくとも川崎はそう理解している。
「嘘よ!あなたはお金の無い女なんていらないと思ってる」
「そんなわけないだろ!」
夏代が目尻から零れ落ちる涙を拭き取り、一息つく。
「実はね、暴力団の要求はもう一つあるの。それは、文鳥島の生物を何か持ち帰ってくる事。本来なら、西角隼人と一緒に飛び降りる算段だった。そして、逸れたのを装い生物を捕まえ、ヘリに戻り、薫も連れて来てハッピーエンドで終わらせる予定だった。あなたにだって教える予定は無かった。けど、これ以上大好きなあなたを裏切る事が出来なかった」
「犯罪者に、好きだなんて言われたく無い!」
夏代はもう立派な犯罪者だ。
「じゃあ、あなたに二つ選択肢をあげる。一つは将人が協力して、生き物を捕まえる。そして、暴力団にお金を貰う。それから、私と一緒に暮らす。もう一つは完全に私と縁を切る」
「そんな話を聞かされて誰がお前なんかと!」
川崎がそう言うと、夏代の表情が変わった。全てを決心したかの様な顔だ。
「そう。それは残念。じゃあもう全てを終わりにしましょう。私はあなた無しでは生きていけない。」
そう言うと夏代はポケットに手を入れ、黒いリモコンの様なモノを取り出した。
「何をする気だ!お前!」
「将人。私はあなたの性格をよく知っているの。断られる事だって分かってた。もう私はこのヘリコプターに乗った時から覚悟してたの。後ろに、爆弾を積んで…」
まさか!この機体ごと爆破するつもりなのか!
「おい!早まるな!夏代!島には、まだ助けなきゃいけない人達がいるんだ!せめて、それだけでも!俺の命なんかいい!せめて、せめて!」
だが、川崎の叫び虚しく夏代の指は止まる事は無かった。
そして、ブラックアウトが訪れた。
旋回中、夏代が呼び掛けてくる。
「上手くいってる?」
「え?」
川崎が怪訝そうに問い返すと、
「上手くいってる?薫を助けたり、謎を解いたり…」
「何が言いたい?」
「つまりね、あなたは利用されているのよ。まんまとね。しかも私に」
夏代が不可解な事を言う。
「全て、私の思惑通りなのよ。私が仕組んだ罠にあなたははまってる」
川崎が混乱していると、
の為にやった
「何で長戸や六井が殺されたり、B9が焼かれたか分かる?畑中が復讐と思う?本当は違うのよ」
「違うって、どういうことだ?」
「畑中は何もしていない。それが答えよ」
「え?復讐の為に…したんじゃ無いのか?」
思わぬ夏代のセリフに川崎は動揺する。
「そう思うでしょ?それが狙いなのよ。そもそもなぜ復讐という概念が現れたか分かる?答えは簡単よ。薫がヘリから落ちた。これをB9が仕組んだとされたから。これがもし、あの事件が起きていなくて、殺人と放火だけ起これば自白文が書かれてあっても信憑性が薄い」
夏代が抑揚をつけずに一息で言う。
「さっきからお前は何を言ってるんだ?」
怪訝に思いながらも運転に集中する為、無線を開く。
「将人。あなたの推理は50点よ。あなたはこの事件を解いたようで何も解けていないの。でも、あなたが正解した部分もあるの。薫のスカイダイビングの件は全て正解。けれど、長戸と六井を買収したのは私。薫の件の目的は畑中の動機作りと、そして将人。あなたをこの事件に関わらせる為よ」
「俺を!?何の為にだ!」
「忘れたの?ここに来るにはこのスロット以外方法は無いの。そして、スロットを動かせるのはフラット・ヘリコプター社の人間だけ。それで、私は正義感の強いあなたならヘリコプターで薫を助けに行こうとするだろうと思っていたの」
「じゃあ、長戸や六井、畑中の殺害B9の放火、あれは全部お前がやったってのか!?」
「ええ、そうよ。でも、それはあなたのせいでもあるのよ」
怒れる川崎に、夏代がしんみりと言う。
「俺が何をしたってんだ!」
川崎が怒鳴ると、突然夏代の目から涙が零れ落ちた。
「私はね、あなたにフラれたショックで暴力団と関わる様になった。そう。あなたが私を捨てたから。暴力団からお金をもらう為に色々な事をした。それで、私がブルースカイの社員だと知ると奴らはブルースカイとB9を終わらせろと言ってきた。それを聞いた私はすぐに、この計画を思い付いた。私を捨てやがったあいつを利用しようと思って」
「はぁ!?お前…暴力団だなんて…」
あまりの情報量の多さに、頭の整理が追い付かない。暴力団の指示により夏代は先ほど話していた凶行に及んだというのか。
「何でこんな事するんだ!って言いたいんでしょ?それはね…」
夏代が嗚咽を漏らしながら続きを言おうとする。
「あなたと、あなたと関係を戻したかったからよ!!」
夏代の目はもう真っ赤だ。
「あなたは私がお金が無いと分かったから私の事を捨てたんでしょ?だから、私はあなたと関係を戻すために暴力団に関わって体を売ったり、悪い事をして沢山のお金を貰ってたの」
その延長線上が今回の事件。もはや夏代に同情の余地はない。
「違う。あれはお前も納得してただろ。俺だって別れたく無かったよ!」
あの時の別れはお互いの合意だった筈だ、少なくとも川崎はそう理解している。
「嘘よ!あなたはお金の無い女なんていらないと思ってる」
「そんなわけないだろ!」
夏代が目尻から零れ落ちる涙を拭き取り、一息つく。
「実はね、暴力団の要求はもう一つあるの。それは、文鳥島の生物を何か持ち帰ってくる事。本来なら、西角隼人と一緒に飛び降りる算段だった。そして、逸れたのを装い生物を捕まえ、ヘリに戻り、薫も連れて来てハッピーエンドで終わらせる予定だった。あなたにだって教える予定は無かった。けど、これ以上大好きなあなたを裏切る事が出来なかった」
「犯罪者に、好きだなんて言われたく無い!」
夏代はもう立派な犯罪者だ。
「じゃあ、あなたに二つ選択肢をあげる。一つは将人が協力して、生き物を捕まえる。そして、暴力団にお金を貰う。それから、私と一緒に暮らす。もう一つは完全に私と縁を切る」
「そんな話を聞かされて誰がお前なんかと!」
川崎がそう言うと、夏代の表情が変わった。全てを決心したかの様な顔だ。
「そう。それは残念。じゃあもう全てを終わりにしましょう。私はあなた無しでは生きていけない。」
そう言うと夏代はポケットに手を入れ、黒いリモコンの様なモノを取り出した。
「何をする気だ!お前!」
「将人。私はあなたの性格をよく知っているの。断られる事だって分かってた。もう私はこのヘリコプターに乗った時から覚悟してたの。後ろに、爆弾を積んで…」
まさか!この機体ごと爆破するつもりなのか!
「おい!早まるな!夏代!島には、まだ助けなきゃいけない人達がいるんだ!せめて、それだけでも!俺の命なんかいい!せめて、せめて!」
だが、川崎の叫び虚しく夏代の指は止まる事は無かった。
そして、ブラックアウトが訪れた。
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