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第四章
事件の終結
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ミリアムの父である、カパローニ侯爵フェルディナンドと合流した一行は、その後も順調に歩を進め、遂に玄関ホールへと辿り着いた。
ある所から、突如として公爵家の私兵も赤いローブの者も見られなくなり、安堵しつつも疑問に思っていたミリアムだが、その疑問は玄関ホールに足を踏み入れた時に解消されることとなる。
「エミリオ様!」
玄関ホールに着くと、最愛の婚約者の姿を見つけ、ミリアムは真っ先に駆け寄った。
「ミリアム!」
エミリオもまたミリアムの姿を見つけると腕を広げて駆け出した。
そして、駆け寄ってきたミリアムを一度抱き上げると頬を擦り寄せて無事を確かめる。
「ああ!ミリアム!無事で良かった…!」
「エミリオ様!もう会えないかと思いましたわ」
ミリアムを降ろすと、エミリオは小柄なその身体を包み込むように強く抱きしめた。その胸の温かさにミリアムは心底ホッとした表情を浮かべると、ヘーゼルの瞳を潤ませながら、エミリオの大きな身体を抱きしめ返した。
玄関ホールには後ろ手に縄で縛られたサンタンジェロ公爵とフェリーネ伯爵他、数人の貴族が捕らえられていた。
どうやら途中から誰も見なくなったのは主が捕らえられたからのようだった。
フェリーネ伯爵は一行の中に白銀の髪の自身の息子を見つけると激昂した。
「ジルベルト!!貴様!裏切ったのか!」
怒りで顔を染め上げ、叫ぶフェリーネ伯爵に冷ややかな視線を送っていたジルは伯爵の元にスタスタと向かうと。その金色の瞳で見下ろした。
「貴様!親を裏切るとは誰がここまで育ててやったと「あんたを親だなんて思ったことはない」」
フェリーネ伯爵の言葉を遮るように、ジルは話し出す。
「いい加減にしてくれ。僕を勝手に神にするな。もうウンザリなんだよ。フェリーネ一族の侯爵家への復興?そんなのクソ喰らえだ!知ったことじゃない!僕は僕だ!親を裏切るな?はっ!あんたは一度だってただのジルベルトとして僕を見たことがあるのか!?」
ジルは言うだけ言うと玄関から外に出てしまった。
あとに残されたフェリーネ伯爵は下を向き項垂れていた。
到着した近衛隊に公爵たちの身柄を引き渡すと、一行はサンタンジェロ公爵家別邸の敷地から踏み出す。外で待っていたヴァレリアが眠ったままのロビンを抱きかかえると、エレオノーラが杖を天に向けて頭上に銀色の魔法陣を展開すると、辺りを銀の光が包み込み、王城へと無事に帰還した。
こうして第二王子と第一王子の婚約者の同時誘拐事件は、世間に公表されることなく幕を閉じたのだった。
ある所から、突如として公爵家の私兵も赤いローブの者も見られなくなり、安堵しつつも疑問に思っていたミリアムだが、その疑問は玄関ホールに足を踏み入れた時に解消されることとなる。
「エミリオ様!」
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「ミリアム!」
エミリオもまたミリアムの姿を見つけると腕を広げて駆け出した。
そして、駆け寄ってきたミリアムを一度抱き上げると頬を擦り寄せて無事を確かめる。
「ああ!ミリアム!無事で良かった…!」
「エミリオ様!もう会えないかと思いましたわ」
ミリアムを降ろすと、エミリオは小柄なその身体を包み込むように強く抱きしめた。その胸の温かさにミリアムは心底ホッとした表情を浮かべると、ヘーゼルの瞳を潤ませながら、エミリオの大きな身体を抱きしめ返した。
玄関ホールには後ろ手に縄で縛られたサンタンジェロ公爵とフェリーネ伯爵他、数人の貴族が捕らえられていた。
どうやら途中から誰も見なくなったのは主が捕らえられたからのようだった。
フェリーネ伯爵は一行の中に白銀の髪の自身の息子を見つけると激昂した。
「ジルベルト!!貴様!裏切ったのか!」
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「貴様!親を裏切るとは誰がここまで育ててやったと「あんたを親だなんて思ったことはない」」
フェリーネ伯爵の言葉を遮るように、ジルは話し出す。
「いい加減にしてくれ。僕を勝手に神にするな。もうウンザリなんだよ。フェリーネ一族の侯爵家への復興?そんなのクソ喰らえだ!知ったことじゃない!僕は僕だ!親を裏切るな?はっ!あんたは一度だってただのジルベルトとして僕を見たことがあるのか!?」
ジルは言うだけ言うと玄関から外に出てしまった。
あとに残されたフェリーネ伯爵は下を向き項垂れていた。
到着した近衛隊に公爵たちの身柄を引き渡すと、一行はサンタンジェロ公爵家別邸の敷地から踏み出す。外で待っていたヴァレリアが眠ったままのロビンを抱きかかえると、エレオノーラが杖を天に向けて頭上に銀色の魔法陣を展開すると、辺りを銀の光が包み込み、王城へと無事に帰還した。
こうして第二王子と第一王子の婚約者の同時誘拐事件は、世間に公表されることなく幕を閉じたのだった。
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