63 / 86
第四章
戦闘からの救世主!?
しおりを挟む
「実はずっと戦ってみたかったんだよねぇ!ぜーったい俺の方が強いと思うんだよ!ねぇ!ジルベルトさまぁ!」
少年は鞭のように細く長く具現化させた電流をジルに向かって撓らせる。
ジルは後ろに大きく飛ぶことでその攻撃を避けたが、ジルが元いた場所は床が抉れたように削れ、断面は黒く焦げていた。
「危ない危ない。この服結構気に入ってるんだから、気をつけてほしいな」
「チッ!避けたくらいでいい気になるなよ!」
易々と攻撃を避け、余裕を見せるジルに少年は今まで笑みを浮かべていた顔を歪ませる。
「クソッ!なんで当たらない!?」
何度も何度も電流で創られた鞭を振り回すが、その全てをジルはひらりひらりと涼しい顔で躱す。
辺りの床は所々抉れ、既にボロボロだった。
「だいたい君の攻撃は大振りすぎるんだよね。前から思ってたけど、初動はもう少しさり気なくした方がいいんじゃない?軌道が読み易すぎて子供でも避けられるよ」
余裕の態度からの上から目線でのアドバイスに少年はワナワナと震えながら顔を真っ赤に染め上げる。
「う、うるさい!うるさい!たかが白銀の髪に金色の瞳で生まれただけのお前に、俺が負けるわけない!」
少年は頭上に雷の塊を創り出す。バチバチと音を立てながら肥大化して行くその塊がもし放たれれば自分諸共周囲を巻き込んで大爆発が起きるだろう。おおよそ室内で使うものではない。
「お前を倒して、俺が、この俺が救国神になるんだァァァァァァア!」
少年が雷の塊を放った瞬間、天井に浮かび上がった金色の魔法陣から飛び出した閃光が、それを囲むように飛び交う。
完全に囲い込むと多面体を形取り、ジルが『パチン!』と指を鳴らすと中に収まった雷の塊と共に霧散した。
「な…そんな…一撃も当てられないなんて…」
愕然とし、その場に項垂れる少年にジルは手を翳すと、例の金色の光でその身体を包み込む。
そのまま少年はバタリと倒れ、虚ろな瞳は空を見つめていた。
「アハハ。やっぱ幻術に掛けるには一度へし折るのが一番だね」
倒れている少年を眺めながらジルは嗤った。
そうこうしている間に、赤いローブの集団と公爵家の私兵に取り囲まれる。先程向かってきていた者たちだった。取り囲む者たちを見回し、肩を竦める。
「あー、数がいると面倒だな」
―――――キィィィィン!
その横ではイヴァンが長身の男と必死に打ち合っていた。剣術はそこそこ出来るが、圧倒的に実践経験のないイヴァンは時折男の繰り出す斬撃を受け、既に小さな傷をいくつか負っていた。
「クソッ!一撃一撃が重い!これではそんなにもたないかもしれない!」
額に汗が、斬撃を受けた腕と大腿部からは血が滲む。長身から繰り出されるロングソードでの一撃は重く、何度も何度も受けているうちに身体は疲弊していった。
そして遂に、足元がグラつき転倒してしまうと、そこに向かってロングソードが振り下ろされた。
(――ああ!私はこんな所で終わりなのか!)
イヴァンが最期を覚悟し、目を閉じたその時だった。
―――キィィィィン!!
剣と剣がぶつかり合う金属音と共に、男との間に誰かが立ち塞がる。
黒いマントを翻し、颯爽と現れたその人物は、自身の兄の婚約者より少し濃い胡桃色の髪に、切れ長のヘーゼルの瞳、神々の最高傑作かと云われる、まるで計算され尽くした様な完璧な美貌の男性――。
「き、貴殿は!」
その男性がチラリと半分振り返り、ニコリと微笑みかけると、同性だと言うのにイヴァンは惚れ惚れしてしまう。
「ご無事ですか?イヴァン殿下」
「あ、ああ、恩にきる。…カパローニ侯爵」
そう、フェルディナンド・ロッシ・ルイジ・カパローニ侯爵。カパローニ家現当主にして、前王国騎士団長。レオナルド、アレッシア、ミリアム三兄妹の父である。
少年は鞭のように細く長く具現化させた電流をジルに向かって撓らせる。
ジルは後ろに大きく飛ぶことでその攻撃を避けたが、ジルが元いた場所は床が抉れたように削れ、断面は黒く焦げていた。
「危ない危ない。この服結構気に入ってるんだから、気をつけてほしいな」
「チッ!避けたくらいでいい気になるなよ!」
易々と攻撃を避け、余裕を見せるジルに少年は今まで笑みを浮かべていた顔を歪ませる。
「クソッ!なんで当たらない!?」
何度も何度も電流で創られた鞭を振り回すが、その全てをジルはひらりひらりと涼しい顔で躱す。
辺りの床は所々抉れ、既にボロボロだった。
「だいたい君の攻撃は大振りすぎるんだよね。前から思ってたけど、初動はもう少しさり気なくした方がいいんじゃない?軌道が読み易すぎて子供でも避けられるよ」
余裕の態度からの上から目線でのアドバイスに少年はワナワナと震えながら顔を真っ赤に染め上げる。
「う、うるさい!うるさい!たかが白銀の髪に金色の瞳で生まれただけのお前に、俺が負けるわけない!」
少年は頭上に雷の塊を創り出す。バチバチと音を立てながら肥大化して行くその塊がもし放たれれば自分諸共周囲を巻き込んで大爆発が起きるだろう。おおよそ室内で使うものではない。
「お前を倒して、俺が、この俺が救国神になるんだァァァァァァア!」
少年が雷の塊を放った瞬間、天井に浮かび上がった金色の魔法陣から飛び出した閃光が、それを囲むように飛び交う。
完全に囲い込むと多面体を形取り、ジルが『パチン!』と指を鳴らすと中に収まった雷の塊と共に霧散した。
「な…そんな…一撃も当てられないなんて…」
愕然とし、その場に項垂れる少年にジルは手を翳すと、例の金色の光でその身体を包み込む。
そのまま少年はバタリと倒れ、虚ろな瞳は空を見つめていた。
「アハハ。やっぱ幻術に掛けるには一度へし折るのが一番だね」
倒れている少年を眺めながらジルは嗤った。
そうこうしている間に、赤いローブの集団と公爵家の私兵に取り囲まれる。先程向かってきていた者たちだった。取り囲む者たちを見回し、肩を竦める。
「あー、数がいると面倒だな」
―――――キィィィィン!
その横ではイヴァンが長身の男と必死に打ち合っていた。剣術はそこそこ出来るが、圧倒的に実践経験のないイヴァンは時折男の繰り出す斬撃を受け、既に小さな傷をいくつか負っていた。
「クソッ!一撃一撃が重い!これではそんなにもたないかもしれない!」
額に汗が、斬撃を受けた腕と大腿部からは血が滲む。長身から繰り出されるロングソードでの一撃は重く、何度も何度も受けているうちに身体は疲弊していった。
そして遂に、足元がグラつき転倒してしまうと、そこに向かってロングソードが振り下ろされた。
(――ああ!私はこんな所で終わりなのか!)
イヴァンが最期を覚悟し、目を閉じたその時だった。
―――キィィィィン!!
剣と剣がぶつかり合う金属音と共に、男との間に誰かが立ち塞がる。
黒いマントを翻し、颯爽と現れたその人物は、自身の兄の婚約者より少し濃い胡桃色の髪に、切れ長のヘーゼルの瞳、神々の最高傑作かと云われる、まるで計算され尽くした様な完璧な美貌の男性――。
「き、貴殿は!」
その男性がチラリと半分振り返り、ニコリと微笑みかけると、同性だと言うのにイヴァンは惚れ惚れしてしまう。
「ご無事ですか?イヴァン殿下」
「あ、ああ、恩にきる。…カパローニ侯爵」
そう、フェルディナンド・ロッシ・ルイジ・カパローニ侯爵。カパローニ家現当主にして、前王国騎士団長。レオナルド、アレッシア、ミリアム三兄妹の父である。
0
お気に入りに追加
285
あなたにおすすめの小説
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる