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第四章

戦闘からの救世主!?

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「実はずっと戦ってみたかったんだよねぇ!ぜーったい俺の方が強いと思うんだよ!ねぇ!ジルベルトさまぁ!」

 少年は鞭のように細く長く具現化させた電流をジルに向かって撓らせる。
 ジルは後ろに大きく飛ぶことでその攻撃を避けたが、ジルが元いた場所は床が抉れたように削れ、断面は黒く焦げていた。

「危ない危ない。この服結構気に入ってるんだから、気をつけてほしいな」
「チッ!避けたくらいでいい気になるなよ!」

 易々と攻撃を避け、余裕を見せるジルに少年は今まで笑みを浮かべていた顔を歪ませる。

「クソッ!なんで当たらない!?」

 何度も何度も電流で創られた鞭を振り回すが、その全てをジルはひらりひらりと涼しい顔で躱す。
 辺りの床は所々抉れ、既にボロボロだった。

「だいたい君の攻撃は大振りすぎるんだよね。前から思ってたけど、初動はもう少しさり気なくした方がいいんじゃない?軌道が読み易すぎて子供でも避けられるよ」

 余裕の態度からの上から目線でのアドバイスに少年はワナワナと震えながら顔を真っ赤に染め上げる。

「う、うるさい!うるさい!たかが白銀の髪に金色の瞳で生まれただけのお前に、俺が負けるわけない!」

 少年は頭上に雷の塊を創り出す。バチバチと音を立てながら肥大化して行くその塊がもし放たれれば自分諸共周囲を巻き込んで大爆発が起きるだろう。おおよそ室内で使うものではない。

「お前を倒して、俺が、この俺が救国神になるんだァァァァァァア!」

 少年が雷の塊を放った瞬間、天井に浮かび上がった金色の魔法陣から飛び出した閃光が、それを囲むように飛び交う。
 完全に囲い込むと多面体を形取り、ジルが『パチン!』と指を鳴らすと中に収まった雷の塊と共に霧散した。

「な…そんな…一撃も当てられないなんて…」

 愕然とし、その場に項垂れる少年にジルは手を翳すと、例の金色の光でその身体を包み込む。
 そのまま少年はバタリと倒れ、虚ろな瞳は空を見つめていた。

「アハハ。やっぱ幻術に掛けるには一度へし折るのが一番だね」

 倒れている少年を眺めながらジルは嗤った。
 そうこうしている間に、赤いローブの集団と公爵家の私兵に取り囲まれる。先程向かってきていた者たちだった。取り囲む者たちを見回し、肩を竦める。

「あー、数がいると面倒だな」


 ―――――キィィィィン!


 その横ではイヴァンが長身の男と必死に打ち合っていた。剣術はそこそこ出来るが、圧倒的に実践経験のないイヴァンは時折男の繰り出す斬撃を受け、既に小さな傷をいくつか負っていた。

「クソッ!一撃一撃が重い!これではそんなにもたないかもしれない!」

 額に汗が、斬撃を受けた腕と大腿部からは血が滲む。長身から繰り出されるロングソードでの一撃は重く、何度も何度も受けているうちに身体は疲弊していった。
 そして遂に、足元がグラつき転倒してしまうと、そこに向かってロングソードが振り下ろされた。

(――ああ!私はこんな所で終わりなのか!)

 イヴァンが最期を覚悟し、目を閉じたその時だった。

 ―――キィィィィン!!

 剣と剣がぶつかり合う金属音と共に、男との間に誰かが立ち塞がる。
 黒いマントを翻し、颯爽と現れたその人物は、自身の兄の婚約者より少し濃い胡桃色の髪に、切れ長のヘーゼルの瞳、神々の最高傑作かと云われる、まるで計算され尽くした様な完璧な美貌の男性――。

「き、貴殿は!」

 その男性がチラリと半分振り返り、ニコリと微笑みかけると、同性だと言うのにイヴァンは惚れ惚れしてしまう。

「ご無事ですか?イヴァン殿下」
「あ、ああ、恩にきる。…カパローニ侯爵」

 そう、フェルディナンド・ロッシ・ルイジ・カパローニ侯爵。カパローニ家現当主にして、前王国騎士団長。レオナルド、アレッシア、ミリアム三兄妹の父である。
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