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第三章

64 アリソンの執務室にて

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「それで?誤解されたまま、とりあえずエスコートのOKだけもらえたわけね。誤解されたまま」
「おい、なぜ2回言った?」
「面白いからよ」
「お嬢が申し訳ありません。誤解されたままのパーカー卿」
「お前もなかなかだな…」

 例のごとくアリソンの執務室に集まったアリソンとウォーレン。いつもと違うのは、研修中のルークがいることくらいだ。

「ま、それはさておき…」
「さておくな!ファインズ卿は、どうやってあの鈍感娘に自分を意識させたんだ」
「んもう、話の腰を折らないでくれるかしら?あなたの努力不足じゃない?」
「僕が思った事を言ってもいいですか?」

 額に手を当てて嘆くウォーレンに、見かねたルークが申し出る。

「なんだ!?」
「パーカー卿って、態度では積極的に好意を示してますけど、肝心の言葉がいっさいないんですよ。お嬢くらいの鈍感娘に、態度で察しろは絶対に無理です。絶対にです」
「お前も、2回言うのか…」
「大事な事ですから」
「あらウィン、まさかまだ気持ちを伝えもしていないの?」
「はい。パーカー卿は肝心な言葉はいつもひよって、言えないでいますね」
「情けない次期公爵ねぇ」
「まったくです」
「辛辣!」

 二人にイジられたウォーレンは、肩を落として長椅子に腰掛けると、待っていたかのようにアリソンはその目の前に書類の束を置いた。

「これは?」
「集めた証拠よ。例の件」
「もう揃ったのか?」
「ええ。どこかの誰かさんがまごまごしている間にね。この子、なかなか優秀よ」
「お褒めに預かり光栄です」
「ローザのお気に入りじゃなければ、引き抜きたいくらいだわ。研修の名目で、パスカリーノ家から来てもらってるけど、研修なんてほとんど必要ないくらいだと報告を受けているわよ」
「一体何の研修…いや、聞くのはやめておこう。聞いてはいけない気がする」

 黒い笑みを浮かべるアリソンとルークを尻目に、ウォーレンは渡された書類に集中した。
 目を通していくうちに、ウォーレンの顔がだんだんと険しくなっていく。

「まさか、裏でこんな事をしていたとはな…」
「取り立てて目立つ印象はない家だったんだけどねぇ。娘にしろ当主にしろ」
「これを見る限りは、当主の方はかなりの野心家の様だがな」
「まあ、取りあえずはこれで準備も整ったわ」
「あとは舞踏会を待つだけだな」

 アリソンとウォーレンは、ルークが淹れたお茶に口をつける。渋い味が口いっぱいに広がって、二人は思わず顔をしかめる。

「…お茶はまだ研修が必要ね」
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みんなの感想(3件)

2021.08.18 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

上木 柚
2021.08.18 上木 柚

ありがとうございます!
頑張って書きます!

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スパークノークス

お気に入りに登録しました~

上木 柚
2021.08.16 上木 柚

ありがとうございます〜

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花雨
2021.08.10 花雨

全てお気に入り登録しときますね♪

上木 柚
2021.08.11 上木 柚

わああ〜ありがとうございます♪

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