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第三章

60 ルーシーは戸惑っている(ルーシー視点)

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突然ですが今回は私、パスカリーノ辺境伯家ロザリンドお嬢様付き侍女のルーシーがお送り致します。

ええ、決して最近めっきり出番がないからではございません。決して。


さて私、最近戸惑っております。


お嬢様が突如お雇いになられたルークの持ち物に、日に日にお嬢様の考えた(あまり役に立たない)探偵道具が増えている事でも、領地でお嬢様を置いて行って、誘拐されてしまうという失態をおかした恋人が、罰として冬季の山岳訓練2ヶ月を言い渡された事でもございません。『お嬢なら大丈夫だと思った』などと言っていましたので、自業自得ですね。


私が戸惑っている事。それは、お嬢様の鈍感具合でございます。


実は少々前からパーカー公爵家の嫡男、ウォーレン・グレッグ・パーカー様が、ロザリンドお嬢様に好意を寄せていらっしゃる様で、お嬢様の好きなお菓子や、可愛らしい髪飾り、ちょっとした花束などを贈ってくださったり、王城の舞踏会のエスコートをしたいとブラッドリー様に申し出たり…、そうです、かなり積極的にアピールをされておいでなのですが…。


お嬢様、全く気付いておりません。

エスコートの件に関しては、ブラッドリー様は婚約者でもないのでと渋っていらっしゃいますが、ロザリンドお嬢様の判断に任せるとの事でした。お互い婚約者がいない同士でエスコートなどして、誤解が生まれないのか甚だ疑問ですが、何か思惑でもあるのでしょうか。


と言う訳で、ここ最近はロザリンドお嬢様に直接エスコートを申し込もうと、パーカー公爵令息様が奮闘しております。


「やあ、ロザリンド嬢。今日もその、なんだ、可愛らしいな」

「…ウォーレン様、何かやましいことでも?早めに白状した方が罪は軽いわよ?」

「は?いや、そうじゃなくてだな。あ、そうだ、こないだ中央区の店で見つけたんだが、ほら、このハンカチ、君のお気に入りのレースのボンネットと雰囲気が似ているんじゃないかと思ったんだが」

「あ!ほんとね!お揃いみたいにして持ったら可愛いわ!ありがとう!いくらだった?」

「いやいや、普通にプレゼントだろう!この流れなら!」

「えー?だって、もらう理由がないもの。誕生日でもないし」


パーカー公爵令息様、お可哀想に…。申し訳ございません。代わりに謝罪いたします。


「と、ところで来月の王城の舞踏会なんだが…」

「舞踏会?あー、エスコートはまたお兄様に頼もうかしらねぇ」

「いや、あの良かったら俺と…」

「あ!ルーク!お茶がなくなってるわよ?」


する気あります?運命の恋とやら。

全く、例の侯爵令息(お名前はもう失念いたしました)とは恋だのなんだの言っておりましたのに。わざとでしょうかね。


なんにせよ、次の恋はまだまだ先になりそうでしょうかね。
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