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第二章

43 帰還

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 それからの行動は素早かった。手際よく狼煙を上げ、「こんな簡単に狼煙とか上げられるご令嬢は君くらいだぞ!」と、ウォーレンをまたまたドン引きさせたロザリンドに、そんなロザリンドを面白そうに眺めるルーク。ちなみにルークはどうやら【〇〇七つ道具】とか【〇〇】などに憧れる年頃らしく、ロザリンドの例の小袋に興味津々だった。

「あなたとは上手くやっていけそうね。すごく感性が似ている気がするわ!」
「え?いや、感性は似ていたくないかな。でも、お嬢さまの持ってる道具はすごくカッコよくて、羨ましいよ」
「……つまり精神年齢が同じということだろう。ロザリンド嬢、そろそろコイツの事を説明してもらおうか」

 ウォーレンがルークの首根っこを掴み、ズイッとロザリンドの前につき出すと、ロザリンドは「ほえ?」と人差し指を唇にあてて首を傾げる。

「え?説明するも何も、意気投合したから雇うことにしたの。それだけよ」
「そうそう。あ!お兄さん、さっきはゴメンね!」

「意気投合したから雇うことにした」と言うロザリンドと、首にナイフを突き付けた挙げ句、気絶させて誘拐したことを、知り合いへの挨拶ぐらいの気軽さで謝るルークに、ウォーレンは呆れ果てて肩を落とした。

「軽い!!いろいろ軽すぎる!」

 その後もウォーレンにいろいろと詰め寄られ、経緯を説明しているうちに、辺境騎士団が到着。3人は無事に保護され、ゲイリーとその他ゴロツキは捕らえられた。「そいつも共犯だ!」と叫ばれたルークは、「脅されて仕方なくやったんだ!怖かったよぅ騎士様!」と見事な嘘泣きを繰り出し、「あいつスゴイな…」と変わり身の速さに、ロザリンドとウォーレンはちょっぴり引いた。

 そんなこんなで、ロザリンドがアランドルベルムの本邸に戻ったのは日も暮れた頃となった。

 本邸に着くと、珍しく涙目のアリソンが飛び出して来て、ロザリンドとウォーレンを抱きしめた。

「無事で良かった!本当に……」
「アリィィィー!ごめんね!心配かけて!」
「俺の心配も一応してくれたんだな。ありがとう、アリー」
「……あんたはついでよ…フン」

 なかなか素直でない従妹に苦笑しながら、「ありがとう」とウォーレンはまた小さく呟いた。

「犯人はカートライト子爵家の長男ゲイリー・ユーバンク・カートライトだったわね。ふふふ、どうしてくれようかしらね…。後悔させてやるわ…」

 そして次の瞬間、黒い笑みを浮かべた従妹に「ご愁傷さま、ゲイリーとやら。会ったことないけど…」と遠くを見た。ちなみにロザリンドは、本日食べ損ねた、バスケットに詰めたランチに想いを馳せていた為、聞いていなかった。
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