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第二章
38 少年の寝返り
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「残念ながら今お金はないわ」
「そりゃそうだろうね」
「からかったのね」とむくれるロザリンド。少年は足を組み替えながら笑う。
「つまり、僕はそういうスタンスで仕事をしてるってこと。お金さえ貰えれば何だってする。誰の味方でもなければ、誰の敵でもないってこと」
「ふぅん」
「そう言えば、随分と落ち着いてるよね。誘拐されたっていうのに。普通のご令嬢だったら取り乱したり、怯えたりしない?」
「うーん、普通のご令嬢っていうのがわたくしにはよくわからないけど、邸には緊急事態なのは伝わってると思うから大丈夫よ」
「どういうこと?」
知らせる時間なんてなかったはずなのに、いつの間に?と少年は首を傾げる。
するとそんな様子を見たロザリンドは得意気に「ふふん」と笑う。
「狩りで単独行動中、何か不測の事態が起きた場合に備えて合図を決めているのよ。詳しくは教えないけど、エドワード…わたくしの愛馬に託してあるから、あの子が邸に戻れば状況は伝わるの。後はこちらから狼煙を上げて、場所を伝えれば辺境騎士団のご到着よ」
「エドワードって、あの時お姉さんが乗ろうとしてた馬?自分で邸に戻れるの?」
「もちろん。すごく賢い子なのよ」
「ふーん。じゃあ、あのおっさんも潮時かなぁー。まだ前金しか貰ってないから、さっさと報酬貰ってずらかろうかな」
「まだ、わたくし狼煙も上げてないわよ?諦めるのが早くない?」
「うーん、何か、絶対にお姉さんここを抜け出して狼煙あげるとか楽勝な気がする。勘だけど。それで辺境騎士団が乗り込んで来たら、僕終わりでしょ?引き際は見極めないとね」
少年が「手の縄を外してあげるよ。こっそりナイフを持ってくる」と立ち上がり、部屋を出ようとすると、ロザリンドは「ああ、不要よ」とそれを止めた。
ロザリンドは履いていた乗馬ブーツの踵を軽く3回床に打ち付ける。すると底上げされたブーツの踵部分から小さなナイフが出てきた。
「手を前に縛ってくれて助かったわ~」
鼻歌を歌いながら器用に手を拘束していた縄を切ると、ハラリと縄が床に落ちる。
「鞘がないのが不便なのよね」
そう言うとナイフを再びブーツの底にしまった。
再び少年の方を向くと、少年は目を丸くしてたった今ナイフを収納したロザリンドのブーツを凝視していた。
「ちょ、なにそのブーツ」
「これ?なんか隠しナイフとか探偵っぽいと思って作らせたの。かっこいいでしょ?」
「かっこいい!僕も欲しい!」
「あら、あなたとは何だか話が合う予感がするわ!邸に帰れば他にもね……」
『隠し武器』に心を鷲掴みされた少年は、辺境伯邸にあるロザリンドが考えた探偵道具(あまり役には立たなそうなものが多い)の話に物凄く食い付いた。そして最終的には……―――
「決めた。お姉さん絶対に僕を雇って。探偵の助手として…!」
「……!探偵の、助手!何その響き、すごくカッコいいわ!」
ロザリンドと少年はガシッと互いの手を固く握り合い、熱い友情を交わした。
少年がロザリンドに毒された為、ツッコミは不在である。
「そりゃそうだろうね」
「からかったのね」とむくれるロザリンド。少年は足を組み替えながら笑う。
「つまり、僕はそういうスタンスで仕事をしてるってこと。お金さえ貰えれば何だってする。誰の味方でもなければ、誰の敵でもないってこと」
「ふぅん」
「そう言えば、随分と落ち着いてるよね。誘拐されたっていうのに。普通のご令嬢だったら取り乱したり、怯えたりしない?」
「うーん、普通のご令嬢っていうのがわたくしにはよくわからないけど、邸には緊急事態なのは伝わってると思うから大丈夫よ」
「どういうこと?」
知らせる時間なんてなかったはずなのに、いつの間に?と少年は首を傾げる。
するとそんな様子を見たロザリンドは得意気に「ふふん」と笑う。
「狩りで単独行動中、何か不測の事態が起きた場合に備えて合図を決めているのよ。詳しくは教えないけど、エドワード…わたくしの愛馬に託してあるから、あの子が邸に戻れば状況は伝わるの。後はこちらから狼煙を上げて、場所を伝えれば辺境騎士団のご到着よ」
「エドワードって、あの時お姉さんが乗ろうとしてた馬?自分で邸に戻れるの?」
「もちろん。すごく賢い子なのよ」
「ふーん。じゃあ、あのおっさんも潮時かなぁー。まだ前金しか貰ってないから、さっさと報酬貰ってずらかろうかな」
「まだ、わたくし狼煙も上げてないわよ?諦めるのが早くない?」
「うーん、何か、絶対にお姉さんここを抜け出して狼煙あげるとか楽勝な気がする。勘だけど。それで辺境騎士団が乗り込んで来たら、僕終わりでしょ?引き際は見極めないとね」
少年が「手の縄を外してあげるよ。こっそりナイフを持ってくる」と立ち上がり、部屋を出ようとすると、ロザリンドは「ああ、不要よ」とそれを止めた。
ロザリンドは履いていた乗馬ブーツの踵を軽く3回床に打ち付ける。すると底上げされたブーツの踵部分から小さなナイフが出てきた。
「手を前に縛ってくれて助かったわ~」
鼻歌を歌いながら器用に手を拘束していた縄を切ると、ハラリと縄が床に落ちる。
「鞘がないのが不便なのよね」
そう言うとナイフを再びブーツの底にしまった。
再び少年の方を向くと、少年は目を丸くしてたった今ナイフを収納したロザリンドのブーツを凝視していた。
「ちょ、なにそのブーツ」
「これ?なんか隠しナイフとか探偵っぽいと思って作らせたの。かっこいいでしょ?」
「かっこいい!僕も欲しい!」
「あら、あなたとは何だか話が合う予感がするわ!邸に帰れば他にもね……」
『隠し武器』に心を鷲掴みされた少年は、辺境伯邸にあるロザリンドが考えた探偵道具(あまり役には立たなそうなものが多い)の話に物凄く食い付いた。そして最終的には……―――
「決めた。お姉さん絶対に僕を雇って。探偵の助手として…!」
「……!探偵の、助手!何その響き、すごくカッコいいわ!」
ロザリンドと少年はガシッと互いの手を固く握り合い、熱い友情を交わした。
少年がロザリンドに毒された為、ツッコミは不在である。
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