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第二章

33 何があった!?

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「何があった!?」

 ウォーレンが少年に問いかける。馬車は一頭立ての小さなもので、服装からみて平民の家族の様だった。震える少年は、ロザリンド達を見ると安心した様にボロボロと涙を零した。

「…わからない!突然馬が暴れて!馬車が横転して…、外で馬を操ってた父さんが駆け込んできて、知らない男達が積荷を…!父さんと母さんは!?」

 ウォーレンは混乱から興奮してきた少年の背を撫で、落ち着かせる。

「落ち着け。君のご両親はそこにいる。大丈夫だ。少し怪我をしているが、ちゃんと息はある。どれもかすり傷だ」

 ロザリンドはランチの時に飲む予定だったスープをカップに注ぐと、少年に差し出す。

「これを飲んで。少し落ち着いて」
「とにかく、この人達を一旦運びましょう。見たところ、大きな怪我はなさそうだけど、手当が必要よ」
「どうする?一人ずつ馬に乗せるか?」
「心配いらないわ。たぶん付いてきてるから!」
「「付いてきてる?」」

 ロザリンドはキョロキョロと辺りを見回すと、足元に転がっていた小石を掴み、森の中を目掛けて投げ入れた。

「痛って!」

 ――――ガサガサガサ!

 小石が消えたその先から男の声すると、辺境騎士団の隊服を着た青年が二人、森の中から現れた。

「ひどいっすよ!お嬢!」
「気配消してたんですけどね」

 ブツブツ言いながら出てきた男たちを見て、「ほらね!」とロザリンドはドヤ顔で振り返った。

「あなた達は辺境騎士団の…」
「そうです。お嬢様とご友人、ましてや公爵家のご令息とご令嬢だけでの遠乗りは、さすがに何かあったら事ですので」
「こっそり護衛に付いてたっす!」

 こっそり付いてきていた騎士団員の馬に一人づつ怪我人を乗せ、少年をどちらが乗せるかでロザリンドとウォーレンが揉め始めた。

「だーかーらー!わたくしの方がこの土地に慣れているし、絶対に上手いの!だからわたくしに任せて!」
「いやいや、ここで令嬢に任せたら何かダメでしょ!?男としてダメでしょ!?」
「男も女も無いわよ!安全に街に戻れる方が大切でしょ!?」
「俺の馬に乗せたって安全に戻れる!」

 なかなか話が進まない二人の応酬。先に帰還の準備を終えた騎士団の二人は、サッとアリソンに近づく。

「長くなりそうっすから、先に行きましょう」
「え?でも大丈夫かしら?」
「この辺りはお嬢様にとって庭のようなものですし、なにより私達より強いですから大丈夫ですよ」
「お嬢ー!ラッシュブルック公爵令嬢と一足先に帰ってるっすよー!」

 そう言うと3人は街に向けて馬を走らせた。
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