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第二章

32 蒼いトンネルの先で

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 どこまでも晴れ渡る青空。日差しも穏やかな冬の朝。ロザリンド達は厩舎にいた。
 いつもの様なデイドレスとは違い、毛皮の帽子と防寒用の厚手のジャケット、ジョドパーズを着用し、男性用の乗馬服の様な装いのロザリンドとアリソンを、ウォーレンはしげしげと見つめる。

「へぇ、令嬢のそんな装いもなかなかいいもんだなぁ。これ特注?」
「お黙り、変態」
「ちょっ!変態とはなんだ!変態とは!」
「視線が不愉快なのよ」
「まあまあ。でもわたくしの乗馬服が着れてよかったわ!よく似合ってるわよアリー!」
「そう?ローザもよく似合ってるわ!今度男装でお茶をするのも楽しそうね」
「……この扱いの差だよ」

 各々、馬に跨った3人。昨日の今日だが、早速、馬で遠乗りに出ることにしたのだ。
 ランチをバスケットに詰めて、それぞれの馬に載せ、森を抜けた先の丘陵地帯まで行く予定だ。

「森で逸れないように、しっかり着いてきてね!」
「「了解」」

 ロザリンドの合図で走り出す。万が一獣に遭遇した時の為に、ロザリンドはクロスボウを、ウォーレンは銃を背負っている。

「それにしても、いい天気ね!遠乗り日和だわ!」
「俺は風が冷たい…」
「まったく、次期公爵様は軟弱ねー」

 3人は森の中を通る街道を緩やかな速度で進む。途中、脇から伸びる小径に入ると、ロザリンドを先頭に縦一列となり、丘陵地帯を目指して森を一気に駆け抜けた。
 鬱蒼と茂っていた蒼い木々のトンネルを抜け、視界がパッと開けると、目に飛び込んできた光景に思わず声を上げた。


「何、これ……?何があったの?」
「事故…ではなさそうだな。一先ず怪我人がいないか確認しよう!」

 森を抜けた先の道で、1台の馬車が横転していた。傍らには馬車を引いていたと思われる馬が、足や身体から血を流しながら1頭倒れている。恐らくもう息を引き取っているように見えた。

「これは、刃物でつけられた傷ね…。何て酷いことを…」

 ロザリンドが倒れている馬を確認し、目を伏せると、横転した馬車を確認しに行ったウォーレンから呼ばれる。

「二人とも!手を貸してくれ!まだ息がある!」

 ロザリンドとアリソンが馬車に駆け付けると、車内には3人の人影があった。恐らく家族だろうか、成人の男女と10歳くらいの少年。少年を守るように、折り重なっていた。
 3人とも息はあるようだが、男性と女性が少年に覆い被さる様に気を失っており、一刻も早く救出した方が良さそうだった。

「上の二人をとにかく外に出すんだ!」
「わかったわ!」

 ウォーレンが男性を抱え起こし、馬車の外に横たえると、ロザリンドとアリソンで女性を動かす。
 下にいた少年は息を切らしながらも、意識がある様で、ガクガクと両腕を抱えながら震えていた。
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