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第二章

28 会いたかった!

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「お母様!ウォーレン様は恋人ではないわ!決して!断じて!絶対に!何が起きても!!」
「お、おい、なにもそこまで全力で否定しなくても…まあ、間違いないが」

 慌てて否定する二人に疑惑の目を向けるリリアン。後ではジェームズが凶悪な面持ちで不穏な空気を醸し出している。

「えー!?違うの?なんで?うちのローザでは駄目かしら?中身はともかく、結構可愛いと思うんだけど…」
「……貴様、まさか私の娘が気に入らんとでも言うのか!?そもそも、誰だ?名乗りもせず」

 娘の交際に関して、賛成なのか反対なのか今イチわからないジェームズ。ウォーレンは、リリアンの発言で動揺して、自己紹介をしていない事に気付いた。

「失礼しました。俺はパーカー公爵家のウォーレン・グレッグ・パーカーと申します。この度は従妹のアリソンの付き添いで同行いたしました。数日お世話になりますので、よろしくお願いいたします」
「ラッシュブルック公爵家のアリソン・ポリー・ラッシュブルックです。ロザリンド様とはとても仲良くさせていただいております」

 二人が自己紹介を終えると、ジェームズは「なんだそうか、早く言いたまえ」と再び静かになり、リリアンは「えー。面白くなると思ったのに…」とボソッと呟く。

「……ロザリンド嬢は」
「確実に辺境伯夫人似ね」

 アリソンとウォーレンは小さく囁きあった。


 リリアンの誤解を全力で否定してきたロザリンドとウォーレン、その状況を存分に楽しんだアリソンは厩舎に向かっていた。

「もう!ひどい誤解だったわ!わたくしにはトマス様がいるのに!」
「ウィンと誤解されて、ここまで力強く否定する子も珍しいわね。まあ、完全に同意だけど」
「君たち、俺の扱いが酷くないか?一応、未婚の令息では人気がある方なんだぞ」
「「はいはい」」
「しかし、辺境伯があれでは、婚約の事はもしや…」
「くっ……まだ言えてないわよ!」
「休暇中に何とかなるといいわね」

「はぁ」とため息をついたロザリンドだが、厩舎が近づくにつれ、居ても立っても居られずについに走り出し、令嬢とは思えないスピードで厩舎に駆け込んでいった。

「エドワード!会いたかったわー!!」

 突然聞こえてきた男性名に、アリソンとウォーレンは顔を見合わせて中に急いだ。
 中では嬉しそうに顔をほころばせたロザリンドが「こっちこっち!」と手招きしている。

「紹介するわね!エドワードよ!」
「あら…」
「これは……」
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