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第一章
12 王宮舞踏会にて5
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「ジュリア嬢か。久しぶりだね」
トマスが知り合いらしく、少女に声をかける。
「お久しぶり、トマス様」
「元気そうで何より。ロザリンド嬢、こちらはノース伯爵家のジュリア嬢だよ。彼女の家とは父の事業の関係で付き合いがあるんだ」
「ロザリンド様、ジュリア・レベッカ・ノースです」
「初めましてジュリア様、パスカリーノ辺境伯家のロザリンドです」
ロザリンドが挨拶すると、ジュリアは眉を下げて淋しげに笑った。
「初めましてではないんですよ。ロザリンド様」
「え?」
「実は小さい頃、何度かご一緒しているんです。お忘れかしら?」
ロザリンドが王都にいたのは5歳まで。王都にいた頃は、母親と一緒にお茶会に参加したりしていたので、その頃会ったのかもしれない。とは言え、ロザリンドには全く記憶になく、「ごめんなさいね、覚えていなくて…」と困った様に答えた。
「いえ、お気になさらないで下さいませね。ロザリンド様」
「王都で暮らしていた頃は幼かったから、あまり覚えてなくて、本当にごめんなさいね。トムお兄様の事はよく覚えてるんだけど…」
「トムお兄様…?トマス様とロザリンド様は随分親しくてらっしゃるのね?」
ジュリアが一瞬だけ眉をひそめた様に見えたが、ロザリンドは「お腹でも痛くなったのかしら?さてはジュリア様もコルセットが苦しいのね、わかるわ…仲間ね」と見当違いな事を考えていた。
「ロザリンド嬢は幼馴染みなんだ。父親同士が寄宿学校の同級生で、小さい頃はよくお互いのタウンハウスに遊びに行ったんだよ」
「まあ、そうでしたのね。ではお久しぶりにお会いになったのかしら?」
「ええ!この舞踏会で偶然再会したんですの!」
「ふぅん、ではわたくし、久しぶりの再会をお邪魔してしまったのかしら?ごめんなさいね」
ジュリアが扇子を広げ、口元を覆いながら笑って見せると、ロザリンドは目を輝かせる。
「その仕草!まさに都会のご令嬢という感じね!素晴らしいわ!」
「…はぁ?」
突然訳のわからない発言をしたロザリンドにジュリアはポカンとした表情を浮かべる。ジュリアとしては嫌味のつもりの発言だったのだが、ロザリンドには響いていないどころか気付いてもいない様子だった。
「センシィノス探偵物語シリーズにもそういったシーンがよく出てきたもの。わたくしよーくわかっていますわ!扇子で口元を隠すことによって、よりお淑やかに見せる事が目的よね!?」
「何となく違うと思いますわ!」
「あら違うの?そうなの?じゃあなんなの?」
「え?ええと、口元を覆うことで表情を隠して、目だけでこう…言っているとこと思っていることが違うとアピールすると言うか…って何でこんな説明を…」
「じゃあ今、ジュリア様がお話していた事と思っていた事は違うってことなの?都会って難しいわね」
「あ、いえ、そうだけど、そうハッキリ言われてしまうと…って言うか…んもう!」
すっかりロザリンドのペースに呑まれたジュリアは、扇子で口元を覆う事も忘れてたじろいだ。
「まあまあ、デビュタント同士仲良くしたらどうかな?ロザリンド嬢は王都に引っ越してきたばかりでまだ友人も少ないんだ。ジュリア嬢さえ良ければ仲良くしてあげてくれ」
まるでロザリンドの兄の様な様子のトマスに、「トマス様がそうおっしゃるのでしたら…」とジュリアは肩をすくめた。
トマスが知り合いらしく、少女に声をかける。
「お久しぶり、トマス様」
「元気そうで何より。ロザリンド嬢、こちらはノース伯爵家のジュリア嬢だよ。彼女の家とは父の事業の関係で付き合いがあるんだ」
「ロザリンド様、ジュリア・レベッカ・ノースです」
「初めましてジュリア様、パスカリーノ辺境伯家のロザリンドです」
ロザリンドが挨拶すると、ジュリアは眉を下げて淋しげに笑った。
「初めましてではないんですよ。ロザリンド様」
「え?」
「実は小さい頃、何度かご一緒しているんです。お忘れかしら?」
ロザリンドが王都にいたのは5歳まで。王都にいた頃は、母親と一緒にお茶会に参加したりしていたので、その頃会ったのかもしれない。とは言え、ロザリンドには全く記憶になく、「ごめんなさいね、覚えていなくて…」と困った様に答えた。
「いえ、お気になさらないで下さいませね。ロザリンド様」
「王都で暮らしていた頃は幼かったから、あまり覚えてなくて、本当にごめんなさいね。トムお兄様の事はよく覚えてるんだけど…」
「トムお兄様…?トマス様とロザリンド様は随分親しくてらっしゃるのね?」
ジュリアが一瞬だけ眉をひそめた様に見えたが、ロザリンドは「お腹でも痛くなったのかしら?さてはジュリア様もコルセットが苦しいのね、わかるわ…仲間ね」と見当違いな事を考えていた。
「ロザリンド嬢は幼馴染みなんだ。父親同士が寄宿学校の同級生で、小さい頃はよくお互いのタウンハウスに遊びに行ったんだよ」
「まあ、そうでしたのね。ではお久しぶりにお会いになったのかしら?」
「ええ!この舞踏会で偶然再会したんですの!」
「ふぅん、ではわたくし、久しぶりの再会をお邪魔してしまったのかしら?ごめんなさいね」
ジュリアが扇子を広げ、口元を覆いながら笑って見せると、ロザリンドは目を輝かせる。
「その仕草!まさに都会のご令嬢という感じね!素晴らしいわ!」
「…はぁ?」
突然訳のわからない発言をしたロザリンドにジュリアはポカンとした表情を浮かべる。ジュリアとしては嫌味のつもりの発言だったのだが、ロザリンドには響いていないどころか気付いてもいない様子だった。
「センシィノス探偵物語シリーズにもそういったシーンがよく出てきたもの。わたくしよーくわかっていますわ!扇子で口元を隠すことによって、よりお淑やかに見せる事が目的よね!?」
「何となく違うと思いますわ!」
「あら違うの?そうなの?じゃあなんなの?」
「え?ええと、口元を覆うことで表情を隠して、目だけでこう…言っているとこと思っていることが違うとアピールすると言うか…って何でこんな説明を…」
「じゃあ今、ジュリア様がお話していた事と思っていた事は違うってことなの?都会って難しいわね」
「あ、いえ、そうだけど、そうハッキリ言われてしまうと…って言うか…んもう!」
すっかりロザリンドのペースに呑まれたジュリアは、扇子で口元を覆う事も忘れてたじろいだ。
「まあまあ、デビュタント同士仲良くしたらどうかな?ロザリンド嬢は王都に引っ越してきたばかりでまだ友人も少ないんだ。ジュリア嬢さえ良ければ仲良くしてあげてくれ」
まるでロザリンドの兄の様な様子のトマスに、「トマス様がそうおっしゃるのでしたら…」とジュリアは肩をすくめた。
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