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第一章

3 パスカリーノ家タウンハウスにて2

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「お茶会に?」

 サロンで兄家族とお茶を楽しんでいたロザリンドは、義姉のクリスティーナから「初めての社交に友人の主催するお茶会へ一緒に行かない?」と誘われ、目を輝かせていた。
 その様子にクリスティーナも頬を緩ませる。

「そう。1カ月後の王宮の舞踏会にデビュタントとして出席するから、その前に。お友達を作っておいた方が心強いでしょう?」
「嬉しい!王都にはまだお友達もいないし、エドワードもいないし、正直寂しいなと思ってたの!」
「そうなのね。じゃあ、1週間後に予定しているから。年の近いご令嬢が集まるの。気が合う子がいるといいわね」
「今から楽しみだわ!待ちきれない!」

 手を胸の前で組み、キラキラと目を輝かせるロザリンドはまだ見ぬ新たな出会いに心を弾ませた。

「ねえクリスお義姉様、わたくし素敵な恋が出来るかしら?」

 ロザリンドの言葉に「ごふっ」とブラッドリーが吹き出すと、「父上きたないです」とマルコムが顔をしかめる。

「あら、ローザもお年頃ねぇ。ええ、きっと出来るわよ!素敵な恋!」
「お義姉様が送ってくださる小説みたいな、素敵な恋がしてみたいと思ってたの!ワクワクするわ!」
「ええ、ええ、きっと出来るわよ!ローザは本当に可愛いもの!王都でもきっと指折りの令嬢よ!」
「運命の人に出会って、そして探偵団を結成して」
「ええ、ええ、うん?」
「王都に蔓延る闇の組織を…」 
「ちょ、ちょっと待って?一体何のお話かしら?恋のお話はどこにいってしまったの?」

 またもや小説と現実がごっちゃになっているロザリンド。サロンの隅に控えていたルーシーは、そっとクリスティーナに耳打ちする。

「お嬢様のいつもの妄想癖ですので、お気になさりませんよう」
「ああ、そうなのね」

【運命の恋人と作る探偵団】という謎の構想を熱く語り始めるロザリンドを横目に、兄夫婦と侍女ルーシーは『大丈夫かな…』とため息をついた。
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