ミコの女たち 第三短編集 パープル・ウィドウ・コレクション 【ノーマル版】

第七章 ハーパー・アルバーンの物語 公募

大物が応募してきた

「なんといっても利己特性、人類の存続がかかっているのですから」
「そうはいってもアフリカを何とかして、テラをそれなりにまとめてからの話ね」

「じゃあ、この方はどう？ちょっとお歳を召されているけど、若い頃の写真は抜群よ」
「ただ『おやこどんぶり』というより、『おまごどんぶり』になるのかもね」

「たとえが悪いわね、でも孫が『美貌の女家族』なの？」
「そう書いてあるわ、孫はベティ女子スクール付属小学校の、ロリータ課程の四年に在籍って」

「なぜ適任なの？」
「教育学の博士号をお持ちで、専門は幼児教育、ただね、お歳が、六十八歳って書いてあるわ」

「年齢は問題ないわ、チョーカーを付ければ三十歳になれるわ、娘を育て上げたのでしょう？あちらも大丈夫、いまさら恥ずかしいなんてないでしょう、とこかく写真を見せて」

「セシリー・ノウルズ、六十八歳、オレゴン州立大学の教育学部で幼児教育を専攻、コロンビア大学大学院卒……すごいわね」

　マルス移住時にアイビーリーグの幾つかの大学も移ってきましたが、コロンビア大学もその一つ、アメリカの州立大学の幾つかも同様に幾つかが移ってきました。
　オレゴン州立大学も移ってきた大学です、ちなみにオレゴン大学はテラに残り、いまでは跡形もありません。

「かなり苦労しておられるとおもいますよ、当時のアメリカのマルス移住は白人が多くて、黒人系の方は少数、いまでこそ人種の差別は有りませんが、当時はまだ残っていましたから」
　と、セレスティア・デヴィッドソンがいいます。

「たしかに人種差別はなくなりましたね、ミコ様がどんな女も、美しければ『もの』にしてしまいますからね、こうなると変態も役に立つ、ナーキッドあたりのもっぱらの評判ですから」

「変態なのは確かでしょうが、あまりのいわれかたね、お気の毒になるわね」
　と、ローズマリーが言うと、
「このあいだミコ様が、ヴィーナス・ネットワーク審議会で、『私の仕事はベッドの上、笑われてなんぼの女』って笑っておられたわ、さらに『権力者が面白おかしく言われるのは社会が健全な証拠、喜ばしいことです』ともね、審議員が感心していたわね」
　と、上杉忍が言葉を返している。

「セシリー・ノウルズのお孫さんの写真は有るの？」
「あるわよ、それにベティ女子スクール付属小学校からの資料もあるわ、どうやらお孫さんは白人とのハーフのようね、それにしても可愛いわね」

　セシリー・ノウルズの娘は結婚をしていないらしく、内縁のまま夫が死亡、娘も孫のキャロライン・ノウルズが五歳の時に死亡している。

「なぜ応募したのか分かるわね、キャロライン・ノウルズが二十歳になる時に七十八歳、どうやら身内は祖母である自分一人、そりゃあ心配ね」
　ヘディ・ハプスブルグ・ロートリンゲンが同情するように言った。

　上杉忍がセシリー・ノウルズの書類を眺めながら、ため息をついた。
「この方、管理官にはなれないかもしれないわ……望まれた以上、寵妃は間違いなしといえるけど……」

「どうして」と皆が聞くと、
「惑星世界管理局に、とられるかもしれないわ……このセシリー・ノウルズさん、マレーネ様が感心した論文の学者さんですから」