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第六章 ヘディ・ハプスブルグ・ロートリンゲンの物語 地に堕ちた世界
パープル・ウィドウ・クラブの陰謀 其の一
しおりを挟むエッダに執政官の辞令がでた。
少し緊張した面持ちであったが、新たに任命された事務補佐官や、ミリタリーからの軍事参議官とともに赴任していった。
子離れの出来ないヘディとしては、これはこれで不安に駆られる。
……うまくやれるかしら、失敗して泣かないかしら……やはり私が見守らなくては……
そんなヘディのもとに、ある女がやってきた。
「あらローズマリー、久しぶりね」
「エッダが赴任したので、寂しいかと思ってね」
「ありがとう、まぁ何とかやっていくわ、それにしても綺麗になったわね、化粧を変えたのね」
そういいながらヘディはふと、ローズマリーの首に眼が止まった。
「ローズマリー……それは……」
「あら、エッダから何も聞かなかったの、いいでしょう?パープル・ゴールドのチョーカーよ、私、このたび側女になったの」
「もうミコ様の夜に侍ったの?」
「チョーカーを頂いた以上はね、義務ですもの」
一瞬、羨望の色がヘディの顔に現れたのを、ローズマリーは見逃さなかった。
……やはり……これは上手くいくかも……駒子さんの読みは当たっていたようね。
ヘディ・ハプスブルグ・ロートリンゲンを口説き落とすために、パープル・ウィドウ・クラブは詳細な作戦を立てた。
そして『子離れ』が出来ていない情報を掴み、そこを衝くという、鈴木駒子の案を妥当と判断、ヘディと付き合いのある、ローズマリーがやってきたというわけである。
「この間ケイシーとね、二人でミコ様のお相手をしたのよ、恥ずかしかったけどなんというのか、娘とね、女の話をいろいろ出来たわ」
「ケイシーってね、ミコ様が初めてだったでしょう、だからあっちの方は今一つ、これではいけないと教えたのよ」
「やはり子を産んだ女はそれなりよね、相手を喜ばす方法ぐらい、多少は知っているものね、それ以来ケイシーと二人で、お相手の方法を話し合っているのよ」
困惑気味に話しを聞かざる得ないヘディではあるが、思わず聞いてみた。
「ケイシーはなんていっているの?」
「嬉しそうにしていたわ、そうでしょう、ケイシー、悩んでいたようですもの」
「なにを?」
「あっちの仕方、自分でも下手と感じていたけど、どうすればいいか、分からなかったのよ」
「ケイシー、おとなしそうですからね」
そのあとローズマリーから、赤裸々な話を嫌というほど聞かされるのだが、どうしても聞いてしまうヘディ。
「あら、ごめんなさいね、長く一人身だったわね、こんな話、刺激的だわね」
「でもね、ミコ様は信じられないほどお上手でね、ケイシーと二人で抱かれると、もうどうしようもなくなるの」
「ほかのパープル・ウィドウ・クラブのメンバーも、同じように云っているのよ♪」
「どうもね、夜の事を思い出すと、はしたないことになるのよ、女なら分かってくれるでしょう?」
「まぁとにかく、貴女が元気そうでよかったわ、安心したわ」
「うらやましいことね、パープル・ウィドウ・クラブの話は、私の耳にも聞こえてくるわ、管理官って、何をしているの?」
かかった♪
「結構しんどいけど、やりがいはあるわね、なんせナーキッド領域を設定し、統治をするのですものね」
「大体はセレスティアや倫子さんが、シナリオを作っているので、それを踏襲すればいいけど、ナーキッド領域って、女だけしかいないでしょう?」
「産科システムとか技芸学校とか、細かいところで知恵がいるのよ」
「だから人生をそれなりに過ごした、未亡人が選ばれるのよ、男は論外ですし、若い女ではね」
「そういえばヘディ、貴女なんか適任よね、でも今は勧められないかもね」
「だってね、枠は後二つ、アフリカとヨーロッパなのだけれど、アフリカは切り捨てられる可能性が高いのよ、当分管理官は任命されないと思われるわ」
「ヨーロッパが揉めているけど、これも切り捨てとなるかもしれないの、ただ私たちは、何とかしたいと思っているけど、難しいわね……」
「ヨーロッパを切り捨てる?やはり噂は本当だったのね」
ローズマリーは、西アジアの出来事を詳細に耳打ちしてくれた。
「そんな……狩猟区……ウーマンハント……それではミコ様の逆鱗に触れるのは、間違いないじゃないの、ロブノールの惨事が起こるわよ……」
「だから勧められないのよ、これって火中の栗でしょう、ミコ様のご意向に逆らって、なんとかヨーロッパを再編するってのはね、もっとも私たちは、度々ご意向に逆らって叱られているけど」
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