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第四十九章 フィンの二人の女王
04 宰相の孫娘
しおりを挟むまた昨日の続き、接見と嘆願のオンパレードです。
こうして昼までに、当面の案件を片付けました。
このようなことをしている以上、行政組織は機能しているようです。
君主が居ないだけで国家は動くのです。
なんてことないではありませんか?
宰相さえいれば、この連合王国は大丈夫でしょう、あとはタリン国王を決めるだけです。
そろそろアランさんが、なにか云ってくるはずです。
アポロさんの情報網を、侮ってはいけません。
アランさんが何者であるか、しっかりと報告が来ています。
「巫女様にお願いがあります。」
来ましたね。
「なんでしょうか、アランさん。」
「実は私は王族をかくまっています、その王族はリヒャルトとは遠い、親戚というだけで、いままで命を狙われていました。」
「一人は女性で、貴方の女になっている方、もう一人はその女の弟ですね。」
「なぜご存じなのですか?」
「私を侮ってはいけませんよ、ジャバより報告があります。」
「女性の方は別に何ともありません、貴方から取り上げると思っていたのですか?」
「でも、弟の方は見逃せません、差し出してもらいましょうか!」
真っ青な顔をしたアランさんです、私って意地悪なのです。
「そんなに蒼くならなくても、すいませんね、少し意地悪をしたくなって、悪いようにはいたしません、午後のお茶の時間に、二人を連れてきなさい。」
「もっとも、逃げたりしてはいけませんよ、覚悟を固めて来てください。」
やっぱり意地悪ですね。
さてグリゴリー公爵に会いにいきますか、でもアランさんに聞いてみましょう。
「アランさん、グリゴリー公爵を知っていますか?」
「エピロス国王の弟さまですか?」
「そうです。」
「たしか、すごい偏屈な大賢人ときいていますが。」
「信頼の証に教えてあげましょう、その大賢人が新しいフィンの宰相になる予定です。」
「いまから口説きに行きます、私がね、殿方を口説きにいくのですよ。」
「それから先程の話、心配はありません、安心してお茶会に来てください。」
「命を取ろうという話ではありませんから。」
アランさん、安心した顔でした。
さて、口説きにいきますか……
「グリゴリー公爵、諮問会議は貴方の条件をのむそうです。」
「ハレムの件は、クルト宰相が説明してくれましたので、私としても了承するしかありません。」
「ただ最後の条件は……」
「孫娘の母親は早くしてなくなりました、すぐに売りに出されたのを、私はすぐに買い戻しました。」
「以来、この屋敷より外へは出していません、世間では私が幼い女を買ったと、思っただけですが……」
「一応奴隷になりますので……祖父としては不憫で……妻と瓜二つで……」
「わかりました、最後の条件も飲みましょう」
どうやら孫娘さんの母親は、息子さんの正妻ではないようですね……
母親が死んで売り出されたという以上、認知もされていないのでしょう……
「おじい様、私は売られたくありません。」
物凄く目のきつい美少女がいます、勝気を絵に描いたような少女です。
「アンジェリカ、お前のためなのだ。」
「お前は孫娘といえど奴隷、巫女様のハレムに入れば、何年かたてば自らの力で自由の身になる。」
「その時は一人立ちできる知識も身につく、この辺境の地で、私の屋敷の中に居るから、今の巫女様の政策を知らないのだ。」
「巫女様は女官でも一人で生きていけるように、苦労して政策を立てておられるのだ。」
「おじい様はそうおっしゃいますが、そもそも黒の巫女様は女好きで冷酷、この大陸の辺境の町のおじい様の屋敷のなかにも、その噂は聞こえてきます。」
「そんな酷い女の持ち物には、なりたくありません。」
ひどい云われようです、そんなに思われているのですか、少しといわず大変ショックです、そういえばアランさんが、真っ青な顔になったのもそのような噂のせいでしょうか?
そういえば、そんな噂を放置していたのは私ですよね……
「大体、そこにいる綺麗な優しげな人ならいざ知らず、見たこともない女に私を売るなんて、おじい様は酷い方です。」
あれ、私は優しげなの?
冷酷な女はどこのだれですか?
さすがにグリゴリー公爵もあわてています。
「アンジェリカさんとおっしゃいましたか?」
「その女好きで冷酷な、どうしようもない馬鹿女は、私のことですか?」
「初めてお目にかかるわね、私がヴィーナス、黒の巫女です。」
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