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第四十八章 内乱

05 決闘

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 戦いは一方的です。
 初動で私が、電撃と死神で、リヒャルトの軍を半壊させています。
 その為、聖戦騎士隊にとっては草を刈るような物、次々と敵を蹴散らしています。

 戦術とか戦略というものは、関係ないのでしょうね。
 とにかく主席の軍とはかなり錬度が違うようです。
 敵ながら動員された兵士がかわいそうです、とにかく早く終わらせなくては……

 この時、魔法が復活しました。
 源兵衛さんが、
「マスター、気をつけてください、主席はマスターの周りの人間に憑依しています。」
「しかも自身も来ています、私が抑えていますが、どうやら自身の複製を大量に作っています。」
「これは抑えきれません。」

「マスターとアテネは、もともと魂が男性で、強靭な魂の持主なので、どうやら憑依されないようです。」
「マスター、主席相手では切り結ぶしかありません、これをお使いください。」

 目の前に日本刀が現れました。
 私はその刀を手に取ります、無銘ですが、恐ろしく良く切れそうです。

「とにかく主席を倒さなければ埒があきません、そういうことですね。」
「そうなります、しかもマスターとアテネだけで、主席とその複製を、相手にしなければなりません。」
 もしここで私が倒れたら、やっと掴んだエラムの平和は幻に終わります、これは正念場です。

「アテネ、地獄へ付き合ってくれ!」
 私は男言葉で言いました。

 アテネさんは頷くと、小太刀をスッと抜いて、鞘をその場に置きました。
「鞘は必要ない、白刃は戻ることなし。」
 アテネさん、良くいってくれました、私も鞘をその場に置きました。

「では、いきますか?」
「お供します。」
 男同士って、言葉すくなくていいものです。

 二人で敵陣へ向かって歩いています。
 親衛のシルバニア軍は遥か前方に進出しています。
 戦は勝ちました、しかし私たちの戦いはこれからです。

「主席、ここらでいいでしょう、出てきなさい。」
 十四、五人の黒い塊が、浮き出て来て人型になりました・
 本人は源兵衛さんが抑えていると、いっていましたので、これは複製の主席でしょう。

 私とアテネは、この主席もどきと乱戦になります。
 相手はもどきといっても主席です。
 一人倒すごとに、あちこちに傷ををおい、徐々に深くなってきます。

 きつい戦いを半日続けていますが、あと四人までとしました。
 とにかくアテネさんも私も、かなりの深手を負っています、二人とも止血をしなければ危ないかもしれません。
 しかし主席相手には、造血の魔法も使っている暇はありません。

 あと三人、私は『もどき』を二人相手にしています。
 荒木又右衛門の鍵屋の辻の決闘、いやいつのまにか二刀流なので、一乗寺下り松の決闘の宮本武蔵でしょうか。
 とにかくかなり卑怯に、私は戦いました。

 しかしそうはいっても考えてはいません、なにか本能というか感覚でわかるのです。
 理屈で動けば敗北すると、思考を停止して、自然に身体が動くのに任せます。
 そして斬り下げ薙ぎ払い、ついに二人を倒しました。
 アテネさんもやっと最後の一人を倒します。

 複製といえど、キツイ戦いに私は勝ったと思ったのに……
 また五人ほどの黒い塊が、浮き出て来て人型になります。
 私は傷をなおす暇もなく、新しい相手と戦うことになりますが、アテネさんは動けないようです。
 私が何とかしなくては……

 私は二刀を構えて五人と対峙して、
「私の命が欲しいのでしょう、来なさい。」

 挑発しなければアテネさんが危ない、その一念です。
 自分のアドレナリンが、大量に分泌しています。

 脳内麻薬物質も大量分泌してきたのか、あれほどの痛みも感じなくなりました。
「マスター、危険です、抑えてください!」
 と、源兵衛さんの絶叫が聞こえます。

 構うものですか、ここでこの五人を倒さなければ、すべてがお終いになるかもしれないのです。
 廃人覚悟で戦うしかないのです。

 あと二人、私は再び宮本武蔵さんですが、ここで『もどき』が斬りかかってきました。
 私は左の『もどき』に突きをいれましたが……左はそのまま私の手を握りしめ、右の『もどき』が私の腕を……
 
 一瞬の激痛の後、脳内麻薬物質の大量分泌で瞬時に痛みが消え、私は右手の刀で、最後の相手を斬り伏せました。
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