惑星エラム 第四部 新世界編【ノーマル版】

第四十八章 内乱

０３ 迎撃

　やっとリヒャルトが腰を上げたか、これで隙ができる。
　黒の巫女様、今度は手加減をせぬぞ、私の崇高な目的のためには、多少の危険は我慢して頂く。

　まだ結末はついてない、なんとしてもこの醜いエラムの始末をつけるのだ。
　一旦は終わらさなければ、この世界は救われぬ、巫女様は理解なされていない。

　キンメリアの者どもは、我々が犯した最大の失敗だ。
　自らの不始末は、自らの手で始末するべきだった。

　あるじ筋の巫女様に頼ったのが間違い、巫女様には一旦死んでもらおう。
　仮死状態で保存しておき、その上ですべてのけりがついたあと、巫女様に目覚めていただけばよい。
　その後のお叱りなら、甘んじて受けよう。

　私に対抗したあの者は、巫女様に従うものであろう。
　あ奴が出てくれば厄介である。

　私の力を大規模に使えば察知され、目的は達せられない。
　私は私が行動不能になる、あるメッセージを使うことにした。

　遥かな昔、私が目覚めた時、同じ者と出会った時の対処方法として、命じられたものだ。
　理由は教えられなかったが、ある周波数でこのメッセージを全方位に発信すると、互いに行動不能に陥ることになる。

　時間としては半日、しかし私の方が仕掛けるのであるから、目的を達する方法はいくらでもある。
　自動回路を直前に起動、つまり暗示を使うのことにする。
　私が行動不能に陥っても、私の暗示にかかった者が、自動的に行動を起こすだろう……

　……

　私はロンディウムで予定どおり、迎え撃つ準備をしています。
　ロキさんの聖戦騎士隊は、全軍騎乗して走ってきていますので、間に合っています。
　エレンさんの麗しの女騎士団も、奉仕の魔女団もそろっています。

　シルバニア軍もモルダウ軍も、ロンディウムの外へ布陣しています。
　あと二日で、リヒャルトの軍がやってくるでしょう。

「巫女様、全軍そろっていますが？」
　と、クルト宰相が声をかけます。
「明日、出陣します、今日は兵士にはご馳走をふるまってください。」
「ただしお酒は無しです、勝って祝い酒を飲みましょう。」

　私の周りには、サリーさんとダフネさんと小雪さんとアテネさんがいます。
「ビクトリアさんがいないのは寂しいですね、でも私は皆さんをだれも死なせはしません。」
「タリン軍はかわいそうですが、壊滅させます。」
「二度とたちあがれないほどに、徹底的につぶします。」
「明日は私が先頭に立ちます。」

　ダフネさんが、
「巫女様、珍しいですね、まるで戦の女神ではありませんか？」
「イシュタルは、戦の女神の名でもありますよ。」
「せっかく築きあげた平和です。幾人の命が、この平和のために散ったと思いますか、許せないのです。」

　朝が来ます、私は全軍を率いてロンディウムを後にしました。
　ウィルヘルムが同行を願いましたが、却下しときました。

　アリアドーネさんが、涙目で見送ってくれます。
　夫の伯爵も従軍しているようです。

　四人の『モルダウ夫人』が、
「お帰りをいつまでも待っています、万一のことがあれば、私たちもお供いたします。」

「私は死にませんよ、この大きな皆さんのお乳は、だれにも渡すつもりはありませんから、死神にもです。」
「だから帰ってきます、その時は、夜の奉仕を強要しますからね。」

　サリーさんが、
「私の中ぐらいのお乳は、どうしてくれるのですか？」

　小雪さんも、
「私の中の上のお乳もどうしますか？」

「では私の大のお乳がお好みなのですね。」
　とダフネさん。

「皆さん、そんなにいじめないでください。」
　でも、あと一人が……

「どーせ、私はありませんよ！」
　アテネさんがいいました。