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第四十七章 百合の会議
08 約束のタンゴ
しおりを挟む「マスター、お見事ですね、ではチェーンのチョーカーにしてくれますか。」
「魔力は、チョーカーの自動防御機能と自動治療機能だけとします、やはり飾りは赤、青、紫の石が良いでしょう。」
「これならどんどん量産しますよ、マスターの体力の続く限り。」
どこか嘲笑のように聞こえる源兵衛さんでした。
「大変ですね、ヴィーナス様も、お身体に気をつけてくださいね。」
と、さらっとマリーさんはいいますが……
「お嬢様なら大丈夫、アポロ執政が精力剤を集めていますから。」
私が肩をすくめている時、問題の女官長さんたちが戻ってきました。
「お待たせしました、話しは付きました、所でサリー様、あの話はご許可いただけましたか?」
「勿論、私はお嬢様のハウスキーパーです、快くお聞きくださいました。」
私は小さい声で、
「マリーさん、ひどいと思いませんか? 皆で嵌めたのですよ。」
マリーさんはくすくす笑っています。
女官長の後ろに、お供の女官が並んでいます。
「オルガさん、ドリスさん、久しぶりですね、サリーさん、この二人の順番を設定してくださいね。」
二人の間に火花が散った気もしますが、サリーさんが「悋気(りんき)はいけませんよ」といい、後で籤をひいて前後を決めると言い放ちました。
サリーさん、貫禄です。
「カミラさん、なにもいいませんが、私に尽くしてくださいね。」
カミラさん、前に会った時より断然綺麗になっています。
「巫女様のおかげで、家業は復活できました、この上は全身全霊を込めて尽くします。」
と、云ってくれます。
「ヘレンさんも、女官生活はなれましたか。」
「はい、なにか誇りをもって、生きていけるようになりました。」
「ところでロランス女官長、そちらの方は?」
「コーデリアといいます、このたび新規に購入されたものです。」
「コーデリア、アフロディーテ女王陛下にご挨拶を。」
「コーデリアと申します、このたびは女官にしていただき、感謝しております。」
「主人は先の動乱で、王国貴族として討ち死にしました。」
「実家もすべて死に絶え、婚家から主人の財産として、競売にかけられるのを覚悟していた所を、ロランス女官長からお声をかけていただきました。」
「コーデリアは舅と姑に認められていなかったのです。」
とロランス女官長がつけ足しました。
「コーデリアさん、御苦労されたのですね。」
「今度からハレム内には学校が設立され、優秀な方はカルシュ学問の府女子部へ留学できます。」
「ぜひに知識を身につけて、人生を有意義なものにしてくださいね。」
「よい機会です、せっかくカルシュのの劇場にきたのです、皆で踊りませんか?」
「サリーさん、たしか約束していましたね、タンゴを踊ろうと。」
「お嬢様、覚えていて下さったのですか?」
「そりゃ、サリーさんとの約束ですからね、皆さんもどうです。」
アンリエッタさんが代表して、
「タンゴという踊りを知りませんが、教えてくださいますか?」
「いいですよ、だれかアレクセイエフ支配人に、話をつけてきてくださいますか?」
「では私が申し上げてきます。」
と、ヘレンさんが行きました。
勿論、支配人に嫌はありません、私たちは劇場の舞台に立ちました。
関係者だけですので堂々と魔法を使います。
手じかな物を掴んで、『汝の望むものを捧げる』ととなえ、CDラジカセとダンスナンバーのCDを出しました。
「さあ、サリーさん、踊りましょう。」
私はサリーさんの額に手を当てて、タンゴの踊りをインストールすると、サリーさんの手を取りました。
ラ・クンパルシータ、アルゼンチンタンゴの名曲です。
サリーさんと二人で、恋人同士のように官能的に踊ります。
サリーさんの長いすらっとした足が、私に絡みついてきます。
こんな踊りを踊っているとサリーさんと……
見ている皆さんも興奮してきているようです。
その後、同じように踊りをインストールして、皆さんと次々と踊っていきます。
エル・チョクロ、碧空、オレ・グアッパ、ジェラシー、リベルタンゴ……、コンチネンタルタンゴも交えて次々と踊って行きました。
曲を変え、相手を変え、約束のタンゴは続きました。
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