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第四十四章 復興への努力はエラム的

12 商工組合のドン

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 私たちはホッパリアの町外れの、大きな館の前につきました。
「まぁ、大きな家ですね。」

 カミラさんが、
「ご主人様、私が用向きを伝えてまいりましょうか?」
「無用でしょう。そこの貴方、出ていらっしゃい、案内してくれませんか?」

 物陰から男の方が出ていらっしゃいました。
「承知しました」と、丁寧に一礼して門を開けて、しずしずと案内してくれます。
「執事さんですか?」と聞きますと、「執事兼護衛です」といいます。

「よくお越しくださりました、お呼び出しが、今日か明日かと思っていました。」
「エレンさん、カミラさんとお茶でもしていてください。」
「きっと、美味しいお菓子などをふるまってくれますよ、私はこのおじさんとお話があります。」
 執事兼護衛さんが、二人を案内していきました。

 二人きりになると、
「ご期待は裏切らないはずです。女性がたのお好きな、ケーキなどもあるはずですから。イナンナ女王陛下。」

「ベネディクト会長、私に話があるようですが?」
 といいますと、
「イナンナ女王陛下におかれてましても、私に御用がおありでは?」

「私はありますよ、あの広場で何をしていたのです。」
「まさか、女を漁っていたわけではないでしょう。」

「イナンナ女王陛下こそ、女漁りをされていたのでは?」
「あの娘は中々の物、でもお付きの女騎士にはかないませんな、なぜ高額で買われたのですか?」

「まあ、腹の探り合いはしんどいですね、今日は疲れているのでね。」
「私はあの兄に、投資をしようと思っています、しかし私の投資には条件があります。」
「優秀な商人でないことで、小利に目が眩まずに、百年の計を優先できる大馬鹿の商人です。」

「なるほど、さすがは見る目をお持ちであられる。」
「私はあの広場に立って、人を見ていました。」
「このアムリアは疲弊している、国が繁栄しなくては、商売も成り立たない。」
「そのために、有能な人物を探して、手助けをしようと、綺麗ごとをいいますがね。」

「いいかえれば、先行投資というわけですか?」
「いい得てます、で、女王陛下に目を付けたわけです。」

「でもお顔を見て驚きました、まさか黒の巫女様が、うろうろ歩いているとは予想外でした。」
「しかも私の見こんだヨアヒムに、お声をかけている、これを興味深く見ていました。」

「気づかれていたようですが、構いませんでした。」
「きっと、何らかの呼び出しがあると考えていましたが、御自分で来られるとは。」
「陛下はことごとく私の予想の上を行かれる、ここまでくると爽快(そうかい)ですな。」
「しかし、やることがキツイですな、ちょっとあの妹さんには同情しました。」

「それは申し訳ありませんね、でも、思慮のない言葉を吐けば、どうなるかを、知らせたかったのですよ。」
「それに人は最後は分からぬものです、担保は必要でしょう。」

「綺麗ごとでは済まないのです、税金を投資するのですからね、公的な立場では非情にもなります。」
「で、私に張り付けていたあの方は、何のために?」

「本当に純粋に、陛下の安全のためです。」
「なんといっても、やっと動乱も終結して、これからという時に、至高の存在である陛下に、なにかあれば大変なことになります。」
「商売は平和を望みます、少なくとも私はね。」

「でも、戦争になれば、物も売れますよ?」
「動乱の前までは、私もその様な考えも認めていましたが、あの動乱はそんなものではなかった。」

「何もかも抹殺しようとしている相手に、商売の余地はない。つくづく平和はありがたいと痛感しました。」
「なぜ巫女様が、劣勢を覚悟してでも、このエラムを戦火に放りこんだのかも、理解できました。」
「巫女様はありがたい、これがその時の実感です。」

「そうですか、初めてそういわれました、少し肩の荷がおります。」
「私はこのエラムの民を、数え切れぬほどに死に追いやり、その数倍の人を、塗炭の苦しみに追いやり、本当に死の女王です、苦しいですよ。」

「でも誓ったのです、ガルダ草原で。」
「今日は血を流しました、明日は必ず汗を流しましょうと。」

「そのためには何でもしますよ、ベネディクト会長。」
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