上 下
21 / 124
第四十二章 思惑の国際会議

02 領土分捕り合戦

しおりを挟む

 このやり取りをクルト宰相が見ていました。
 あとで話す機会があった時、密かに「さすがは巫女様、うまいですね。」といいます。
 その後、こうも云いました。

「巫女様は女好きで有名です、ご機嫌伺いに、必ず美女を献上してくるものがいます。」
「というより全員でしょうが、自選もいますから、気をつけてください。」
「モルダウもご多分もれず、準備はしております。」

「いえ、これ以上は……、勘弁してくださいよ。」

 会議はダフネさんが議長です。
 まずアムリア帝国領についてです。

 まず新しいアムリア帝国は、ほぼ半分ほどに縮小して、存続することになりました。
 大陸全土の15パーセントほどですが、ホッパリアを首都とし、帝国は王国と名を変えます。
 現在、君主は空位となります、この後に成立する議会で、決定することになっているのです。

 一院の議会制、寡頭制と呼ばれる、古代ローマ共和政に似ているホラズムの政体を、採用することになります。
 宰相の権力をけん制できるはずですが、当面は教団の保護下にはいります。
 次席賢者が政務を担当することで決着しました。

 軍事はロマノフ名誉騎士団団長が握ることになります。
 イワン団長を呼び、新しいアムリア王国の治安と、国家の再建に尽力するように命じました。

 しかし、だれか優秀な人材が必要です。アムリアを担う人材……、一人いますが……
 皆、ある人を頭に浮かべているのですが……この人が抜けると損失が大きいのです。

「だめです、ピーターさんを引き抜くと、教団の事務が滞ります、どうなるか想像できるでしょう!」
 やはりジジさんが断固反対しています。

 しかし宰相はピーターさんしかありえません、こちらが優先でしょう、内定しておきましょうね。
 絶対に、ピーターさんの妻は抱くことのないようにしなくては……私は固く決意しています。

「後任ですが、要は事務処理ができれば、当座はしのげるのでしょう。」
「巫女様の教え子の中の、簿記と算盤をできるものを採用すればどうですか。」
 と、ダフネさんがいいます。

 ジジさんが、
「行政府に女官ですか?」
 と云いましたが、ピーターさんの奥さん候補の件がありますので、それ以上の反対はありませんでした。

 クリスティーナさんは国母、これで肩の荷が一つ減りました。

 アムリアの残り半分は分割されます。
 まずキリー周辺はキリーに併合、ジャバ王国内の一つの自治領になりました。
 一応、アナスタシアさんが自治領主です。

 教団領も倍増します、これで教団領は大陸の一割ほどの領土です。

 アルジャ辺境伯領とガルダ村周辺は一括して、ダフネさんの提案で、私のお化粧料としての直轄領になりました。
 約大陸全土の3パーセントほどでしょう。
 ちなみにキリーは約2パーセントです。

 そして残りの5パーセントは、フィン連合王国に合併されました。
 フィンはもともと世界の二割ほど、構成する王国1つあたりの平均は、2~3パーセントですから、王国二つ分です。

 これがフィン北部のリヒャルト王のタリン王国に編入されました。
 新しいタリン王国は、新しいアムリア帝国の半分ほどもあります。
 これはこのままでは済まないでしょう。

 やはりフィンの新しい宰相は愚かです、ハイドリッヒが草葉の陰でなんと思うでしょうか。
 しかしタリンにとっては国威高揚です、リヒャルト王はタリン国民には英雄でしょうね。

 一応、私は言いました、
「戦死した兵士の家族のことを、大事にしてくださいね」と。

 タリンだけが繁栄するのは、ガルダで死んだフィンの、他の王国兵士が浮かばれません。
 いよいよなら、大陸の一割となった教団領で、ご遺族のことは何とかするつもりです。

 こうしてアムリア分割を話し合う、イーゼル会議の第一日はひとまず終わりました。

 夜、ダフネさんがクルト宰相とやってきました。
「タリンの野心はフィンを崩壊させますね。」
 と私がいいますと、クルトさんが、
「もう止められません、フィンも最後を迎えつつあります。」

「亡きハイドリッヒ王は、このことを懸念されていましたが……」
「モルダウはフィン南部の他の二つの王国と、連合王国を離脱するかもしれません、その時はお願いします。」

「他の王国は?」
「去就については本当に分かりませんが、タリンと共に行動すると思います。」

「戦争は避けてくださいよ!」

 クルト宰相が帰った後に、私はダフネさんに云いました。
「いつまで続くのでしょうか、この愚かな行いを、泣くのはいつも女なのですが。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日突然、異世界転移してしまった料理人のタツマ。 わけもわからないまま、異世界で生活を送り……次第に自分のやりたいこと、したかったことを思い出す。 それは料理を通して皆を笑顔にすること、自分がしてもらったように貧しい子達にお腹いっぱいになって貰うことだった。 男は異世界にて、フェンリルや仲間たちと共に穏やかなに過ごしていく。 いずれ、最強の料理人と呼ばれるその日まで。

最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜

フウ
ファンタジー
※30話あたりで、タイトルにあるお節介があります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー これは、最強な幼女が気の赴くままに自堕落ライフを手に入を手に入れる物語。 「……そこまでテンプレ守らなくていいんだよ!?」 絶叫から始まる異世界暗躍! レッツ裏世界の頂点へ!! 異世界に召喚されながらも神様達の思い込みから巻き込まれた事が発覚、お詫びにユニークスキルを授けて貰ったのだが… 「このスキル、チートすぎじゃないですか?」 ちょろ神様が力を込めすぎた結果ユニークスキルは、神の域へ昇格していた!! これは、そんな公式チートスキルを駆使し異世界で成り上が……らない!? 「圧倒的な力で復讐を成し遂げる?メンド臭いんで結構です。 そんな事なら怠惰に毎日を過ごす為に金の力で裏から世界を支配します!」 そんな唐突に発想が飛躍した主人公が裏から世界を牛耳る物語です。 ※やっぱり成り上がってるじゃねぇか。 と思われたそこの方……そこは見なかった事にした下さい。 この小説は「小説家になろう」 「カクヨム」でも公開しております。 上記サイトでは完結済みです。 上記サイトでの総PV1000万越え!

錬金術師カレンはもう妥協しません

山梨ネコ
ファンタジー
「おまえとの婚約は破棄させてもらう」 前は病弱だったものの今は現在エリート街道を驀進中の婚約者に捨てられた、Fランク錬金術師のカレン。 病弱な頃、支えてあげたのは誰だと思っているのか。 自棄酒に溺れたカレンは、弾みでとんでもない条件を付けてとある依頼を受けてしまう。 それは『血筋の祝福』という、受け継いだ膨大な魔力によって苦しむ呪いにかかった甥っ子を救ってほしいという貴族からの依頼だった。 依頼内容はともかくとして問題は、報酬は思いのままというその依頼に、達成報酬としてカレンが依頼人との結婚を望んでしまったことだった。 王都で今一番結婚したい男、ユリウス・エーレルト。 前世も今世も妥協して付き合ったはずの男に振られたカレンは、もう妥協はするまいと、美しく強く家柄がいいという、三国一の男を所望してしまったのだった。 ともかくは依頼達成のため、錬金術師としてカレンはポーションを作り出す。 仕事を通じて様々な人々と関わりながら、カレンの心境に変化が訪れていく。 錬金術師カレンの新しい人生が幕を開ける。 ※小説家になろうにも投稿中。

グリンウェリアの伝説の魔法使いは異世界転生した高校生。

鍵霧 飛鳥
ファンタジー
自業自得とはわかっている。しかしこれはあんまりじゃないだろうか?日頃の歯磨きをおろそかにすれば誰にしも訪れる病...。虫歯。 左の歯、一本ごときでここまで苦しむとは...。激痛に悶え苦しみながらも何故か学生に産まれてくる義務感。学校へ行かなければ...電車の揺れも、大好きな音楽も友達の話し声も今となっては敵。全てが歯に響いてここから坂を登って二十分かけて校門前に行くなど考えられず...私は母に涙ながらに連絡しようと端末をポケットから取り出した。そんな時、ぶつかってきた何か...。私はその衝撃で線路に落ちて電車にひかれた。 «東 恵里 享年十六»  ちょくちょくしばらく更新しなかったり、MAX1000文字ぐらいにするので1000行ってないやつは公開してても編集することがあるのでちょくちょく見直しましょう。はい。

追放された最強令嬢は、新たな人生を自由に生きる

灯乃
ファンタジー
旧題:魔眼の守護者 ~用なし令嬢は踊らない~ 幼い頃から、スウィングラー辺境伯家の後継者として厳しい教育を受けてきたアレクシア。だがある日、両親の離縁と再婚により、後継者の地位を腹違いの兄に奪われる。彼女は、たったひとりの従者とともに、追い出されるように家を出た。 「……っ、自由だーーーーーーっっ!!」 「そうですね、アレクシアさま。とりあえずあなたは、世間の一般常識を身につけるところからはじめましょうか」 最高の淑女教育と最強の兵士教育を施されたアレクシアと、そんな彼女の従者兼護衛として育てられたウィルフレッド。ふたりにとって、『学校』というのは思いもよらない刺激に満ちた場所のようで……?

かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない~現代ダンジョンのある学園都市で、俺はミステリアス美少女ムーブを繰り返す~

不破ふわり
ファンタジー
生まれ変わるならば、美少女であるのが当然である。 男は死後、愛読していた現代ダンジョン系漫画の世界に憑依転生する。 が、その憑依先はかませ役♂だった。 「どうして女の子じゃないんだ……!」 転生するなら美少女が良い。 そんな当たり前な真理を胸に、男はかませ役♂(出番はもうない)として目的のために生きていく。 目指すは原作で一年後に起きるTSイベントの奪取。そして、念願の美少女化! これは現代ダンジョン世界に生きる探索者の物語。 そして、TS願望に脳を焼かれた男の物語である。 なお、TS願望が転じて行った女装行為が原因で、原作の全勢力から未知の新勢力と認識され警戒されていることは考慮しないものとする。

スライムは仲間を呼んだ!~デバフで支援してたのに追放された俺はスライム狩りでレベル爆増!魔王を倒したら惚れられ、気付けばハーレム状態に!

藤村
ファンタジー
Aランクパーティ【神の後光】にて、スキル【超威圧】で援護していたレイン・ロッド。ある日、リーダー・ヴェンの指示でSSS難度ダンジョン【暗黒の廃城】へとやってきた【神の後光】のメンバーは、レインのスキルによりモンスターと会敵することなく最深部へと到達し、かつて魔王を討ち果たしたとされる退魔の聖剣―カラドボルグを入手する。だが、カラドボルグを手に入れた途端にヴェンの態度が豹変。「レベルが低いお前には価値がない」「カラドボルグを簡単に手に入れる為にお前のスキルを使っていただけ」次から次へと浴びせられる暴言。さらには、メンバーのグランとソラまでもがレインを嘲笑う始末。「追放してやるよ【神の後光】から」今まで尽くしていたのに理不尽に追放されたレインは王都での活動を諦め、隣接する魔法都市カツシアでソロ冒険者として生きていく。初のソロ活動。モンスターを倒し、宝箱を見つけしばらくの活動資金を。そんな軽い気持ちでスライムを攻撃したレインだったが。何故かスライムが無限に湧いて来る。倒せども倒せども、減らないスライム。やがてレインはその原因が自分のスキルにあるのだと気付く。怯えたら仲間を呼ぶ。そのスライムの性質を利用し、レインは瞬く間にレベルを上げ、単身で魔王を撃破するのだった。その後、冒険者活動していく内に何故か魔王のみならず、受付嬢や女神や魔法学園の生徒や獣人の少女etc 美少女が仲間になり、気付けばレインはハーレムパーティを築き上げていた。一方でヴェン達はレインのスキルがなくなったことによりモンスターとの連戦を強いられ、スタミナ切れで自滅。レインの手によって完全に崩壊する。

処理中です...