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第四十一章 ハレム騒動
10 家名の誉?
しおりを挟むいまはモルダウ王国の首都になったロンディウムを去り、私たちは国境を越えて、ロマニア経由でイーゼル伯領に入りました。
シャルルさんが野戦警察を率いて、国境で待っていました。
このままイーゼルでの、国際会議の警備に当たるためです。
はっきりいって、こんどのイーゼルでの会議はハイドリッヒが戦死し、私がモルダウ王国の後見になった以上、だれも私の意向に異を唱える者はいないでしょう。
しかしここで強権を使えば、不満の種が残るのは確実、難しい会議になるでしょう。
多少、発言力があるのは、フィン連合王国の新しい至高王ぐらいでしょう。
いい人なら良いのですが……
シャルルさんが、
「聞きましたよ、イーゼル温泉で首席女官長たち三人に、ベッドを共にする名誉を与える話、武人としては羨ましい、私の愚妻では……残念ですね。」
なんですか、この言葉は……
でもシャルルさんは大丈夫なのでしょうか?
どうやら野戦警察隊長は、ややこしい話しは関係ないようですね。
組織の規模が小さいので、隊長はちまたでは高官と思われていないようです。
私としては大事な組織なのですけどね……
「リューリック、うまくやったな、家名の誉、おめでとう、フローラも喜んだだろう?」
「小躍りしていたよ。」
「だろうな、しかしピエール団長が一番嬉しかっただろうな。」
「このままでは、騎士団団長を辞めなければならぬほどに、状況は悪化していたからな。」
「本当に、昔は剣まで交わした仲だが、俺はこんなことであいつに辞めてはほしくない。」
「それにもう昔のことだし、今は妻同士は仲が良いし……」
「ほぉ、天下のリューリックがね、アムリアではとても友とは呼べない間だったのにな。」
「共に命がけで戦った仲ということか、まぁ、我が家に比べれば贅沢な悩みだが。」
と笑いあげたシャルルさんでした。
この会話は何かおかしい……
頭が痛くなってきました、でもアンリエッタさんのあの涙で訴えられては……
とにかく淡々とすることをしましょう、もうどうしようもない、はぁ……
イーゼルにつくと準備は万全でした。
マリノ子爵令嬢の、バーバラさんに頼んでおいたのですが、想像以上に完璧です。
バーバラさんの一言が私をつき落とします。
「イシュタル様、私もお側でお仕えしたい。」
「バーバラさん、とにかく無事出産することが先決ですよ。」
このままいくとバーバラさんもですか……
このまま消えてしまいたい気持ちです。
そんな私の気持ちなど、察することなどありません。
やはりトールさんの妻ですね、アバウトそのものです。
少し笑いが込み上がりました。
「イシュタル様、お屋敷にご案内します。」
私はイーゼル公館と名付けられた建物に案内されました。
モルダウ居館に負けないぐらい洒落た建物ですね、亡霊の館とは天と地ほど違います。
なかには広い温泉がありました。
源兵衛さんの提案どおり、ここの脱衣所に専用出口を作りました。
どのようになっているのか、これについては分かりませんでしたが、頭で源兵衛さんを呼び出して、云われる通りにしました……渋々ですよ。
「マスター、お気持ちはわかりますが、ここはエラム、郷に入っては郷に従えです。」
「マスターの頭の中にこの言葉がありますよ。」
まったく、云ってくれますね。
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