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第四十一章 ハレム騒動

09 三人のジャバ王国夫人

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 お腹が減りました、野宿して夕食としますか。
 リューリックさんに、そろそろ野宿でもしませんか?
 と言うと、リューリックさんは大きな声で、
「イシュタル様はお疲れである、このあたりで夜営する!」

「一緒に夕食でもどうですか?」
 と、三人のジャバ王国夫人に声をかけますと、嬉しそうな顔をしてくれました。

「おねだりしてもいいですか?」
 可愛くソフィーさんがいいます、それを見て笑みが出ました。

「肩を揉んでくれたのですから、いいですよ。」
 といいますと、
「よく愛人の皆さまが、巫女様とお食事会をしたと、楽しそうに云っておられます。」
「その時、巫女様が手料理をふるまってくれた、とお聞きしています。」

「この間、カレーというものを、巫女様が会議の時にふるまわれたのですが、私たちは会議に出ていなかったので、いただけなかったことを、残念に思っていました。」
「出来ましたら、巫女様の手料理をいただきたいのですが。」

 私ハッとしました、私が至らなかったばかりに彼女たちに、このような思いをさせていたのです。
「私が至らなかったばかりに……申し訳ありませんでした。」
 ソフィーさんが驚いています。

「その様な意味では……」
「いえ、私にとっては大事なことです、ソフィーさん、ありがとうございました。」

 もっと配慮が必要です、公平に、できるだけ公平に……
 小さいことが大事なのです。
 些細なことから、物事は崩れ落ちるものです。
 歴史を眺めれば一目瞭然……

 でもそんなことより、このようなことで、親しい人を少し傷つけてしまうのが、私は嫌なのです。
 とても小市民ですが、これは性分の問題です。

「でも、そうですね、この場であのカレーは作れませんし……」
「ちょっと違うカレーにしましょうか、どこかに火を熾しても、大丈夫な場所はありませんかね?」
「ちょっと探してきましょう」
 とマーシャさんがかけて行きました。

「マーシャさん、気合いがはいっていませんか?」
 と、シモーヌさんに聞きますと、こちらも気合いが入っていました。
 どこからか、テーブルクロスと食器を用意しています。

「どこから持ってきたのですか?」
「私たちは巫女様の侍女として、女官の代わりにお供しているのです。」
「当然、身の周りのものは、最低限の用意をしてあります。」
 手際のいいことですね、この人たちは基本的に、使用する身分の人たちなのですが……

 マーシャさんが戻ってきました。
「ちょうど良い、野宿する場所がありました。」

 私たちは野宿の準備をしています。
 キャンプ用品のクッカーとストーブ、それとファイヤースターターと木質ペレットを、例の通販カタログより取り出しました。
 本当に久しぶりの小さいカバン、懐かしいですね。

 あの時はサリーさんと二人きり、いまはリューリック率いる、護衛のアムリア騎士団に囲まれての野宿です。
 私は業務用のレトルトカレーを、チケットで購入しました。

 ビーフカレーとキーマカレーです。
 後はナンですね、ナン用の粉がありますので、ナンを焼きましょう。

 源兵衛さんが、「倍ですよ」といっています。
 エラム上で、リリータウンの通販カタログを使用すると、チケットが倍になるのですが、
「分かっています、まだ今月分は残っているでしょう。」

 源兵衛さんは通販カタログの元締め、第一倉庫の管理人です。
 前は存在を秘匿する、奥ゆかしさがあったのに、近頃は……

 フライパンみたいなものがありましたので、ナンの粉を水で練って、ナンを焼いています。
 これなら曲がりなりにも手料理でしょう、下手でも焼きたては美味しい物です。

 焼きあがりに合わせて、沸かしていたお湯にレトルトカレーを放り込みます。
 あとはラッシーとサラダですね。
 マンゴヤンラッシーがありました、これは美味しそうです。

 でもサラダが……
 見回すとありました、生野菜が……
 ここはエラム、道端には野草らしきものが……

 で何とか作りました、即席カレーパーティーです。
 三人は美味しそうに食べてくれました。

 三人のジャバ王国夫人との、カレーパーティーも終わり、元気が出てきた私です。
 三人に感想を聞きますと、皆一様に、レトルトカレーに驚いていました。

「イシュタル様の魔法は、私たちの想像をはるかに超えています。」
「暖めるだけで、あのような物ができるなんて、しかも大変美味しくて感動しました。」

 皆さんに、何が気に入りましたかと聞きますと、キーマカレーといったのが、マーシャさん。
 マンゴヤンラッシーと答えたのがソフィーさん、でもシモーヌさんだけは……

「私は巫女様!お優しいし、こんな私でもいたわってくださるし……」
「ずるい! 私も巫女様が一番!」

 この後、私のテントで寝ましたが、三人にべったりくっつかれた私でした。
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