惑星エラム 第四部 新世界編【ノーマル版】

第四十章 ロンディウム滞在

０３ ぬくもりが恋しい……

　私の部屋をノックする音が聞こえます。
「どうぞ」
　夫人さんたちが、そろってやってきました。

　マーシャさんが、
「傷の御手当にやってきました。」
　なにか声色（こわいろ）が色っぽいのは、これからの出来事を想像しているのでしょうか……

「ヴィーナス様、色事は後にして、まずは脇腹の傷をお見せください。」
　と、シモーヌさんが云います。
　確かに消毒などの処置が必要なのです。
　私は上着を脱ぎ、お腹を見せました。

　だいぶ良くなっています、傷口が瘡蓋で覆われています。

「消毒、消毒」と云いながら、三人は私の下着を脱がしにかかります。
「えっ！」と驚くと、「夜の御奉仕タイムです」と云います。

　ぐったりしている私……
　シーツの乱れが、物語っているでしょう。
　こんなことをしていると、脇腹の傷はいつ治るのでしょうね。

　もうすぐ朝が来ます、少しでも寝ましょう。

　午後にはロンディウムを去るつもりです。
　ハイドリッヒの面影のある町で過ごすのは辛いのです。

　少し遅い朝食を取って後、三人が念入りに傷の手当てと、身支度をしてくれます。
　あまりお風呂に入れないので、全身を拭いてもらい、洗髪もしてくれて、大変助かります。

「ありがとう、助かります。」
「昨夜はすいませんでした、つい乱れたことを……」
　マーシャさんが真っ赤になって云いました。

　でも本当は私が望んだのです、あのまま夜を過ごしたら辛かったでしょう。
　人肌が恋しいというか、ぬくもりが恋しいというか……

　そう正直に伝えました。
　マーシャさんは黙って聞いてくれました。

　質素にとの私の希望にそって、髪をシンプルに束ね、モノトーンの服を着せてくれました。
　化粧も薄くしてくれました。
　三人のおかげで、自分でも物凄く綺麗になっていると思います。

　シモーヌさんとソフィーさんが、
「本当はもっともっと、飾られてはと思うのですが、でもヴィーナス様は何をされてもお美しい、息をのむしかありません。」
「ほめてもなにもでませんよ。」

「私たち、容姿には自負があったのですが、ヴィーナス様の御前にでると、恥ずかしくなります。」
「こうして、お側にお仕え出来て幸せです。」
「私たちは、もう思い残すことはありません、この幸せを抱いて余生が過ごせます。」

「寂しいことをいってはいけません、人はそれぞれ何かしら、使命を背負っているものです。」
「もし人生の使命が見つからないなら、私と一緒にさがしましょう。」

「シモーヌさんとソフィーさんの事情は理解しております。」
「私はお二人にたいして、面倒を見るといいました、その言葉に二言はありません。」

「忙しくて、なかなか気づかないこともあるでしょうが、その時は遠慮なく云ってください。」
「黙っていてはいけませんよ、遠慮は無用です。」

「マーシャさんもですよ、良い人が出来たら云ってくださいね。」
「フローラさんのように、人の妻になって、幸せになった方もいるのですし。」

「私はヴィーナス様だけです、良い人など作りません。」
　マーシャさんは云いました。
　やれやれ、マーシャさんは女の幸せを掴めるのに……

　さて、おいとましましょう。