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第七章 宇賀真琴の物語 年を越し新たに年を迎える
ムスタンタウンで女神らしく
しおりを挟むスピンクスがお仕事を始めた土曜日の夕刻、カリ、チュヌ姉妹と、変態をしている美子さんでした。
「近頃二人とも夜がうまくて、特にチュヌさんは」
二人と朝食などをとりながらの、美子さんの言葉です。
「当面ムスタンタウンのお守りを頼みます、なにか困り事はない?」
「このあいだクリームヒルト様が、町の城壁を二重に作られました、尼僧院は大改修され、私たちの住居となっています」
「蓬莱ステーションと直結していますので、別に困ることもありません、そもそも私たち以外、だれも住んでいません」
「しいてお願いがあるとすれば、城壁のために、町に出入りが出来ないのです」
ムスタンタウンはネパールの最深部、ムスタン王国の王都ローマンタンから、ダクマール村までいく道の途中にあります。
無人の尼僧院だった場所の回り一帯を、ネパール政府から提供され、治外法権となっています。
ネパール政府には、ここから電力を格安に供給するということで、話がついています。
そのお陰で、ネパール政府は曲がりなりにも、大寒波後の世界で、エネルギーを確保できているのです。
町の内部の建物はほぼ二階建てで、外観はムスタン地方の特徴を取り入れ、違和感のないようになっています。
街路は石畳で、かなりシックな町です。
主要な施設はすべて地下にあります。
建物内部も、見てくれとは違いホテルのようなもの、一応ほとんどの地上部は、宿泊施設のようです。
確かにムスタンタウンは、外部と切り離されています。
出入り口はなく、内部からの転移だけなのです。
おもに防衛上の配慮ゆえです。
「確かに出入り口はないですね、しかし誰が出入りするのですか?」
「大寒波のときに、尼僧院にいた方々など……」
「いままでどうしていたのですか?」
「決まった時刻にティンシャ(チベタン・シンバル)を鳴らしていただき、壁の上から縄梯子を下ろしています」
これはいけませんね……クリームヒルト、配慮が足りませんよ、安全だけを考えたのでしょうね。
「とにかくゲートを作りましょう、いますぐに」
美子さん、二重壁に二つのゲートを作りました。
「雑仕女(ぞうしめ)さんは、通れるようにしておきます、ムスタンタウン連絡官事務所を作りなさい」
「そして尼僧さんたちを、雑仕女(ぞうしめ)さんにすればいいでしょう」
「女神アウロラ奉仕協会の尼僧さんなら、通れても不思議ではない、中に住んでいただいてもいいですよ」
そしてしばらく考えていたようで、こう言いました。
「カリさん、一般の方々は入れませんが、月に一回ゲートを開きなさい、中を見えるようにするのです」
「ゲートからは、一直線に尼僧院が見えるでしょう、もし私を心から信じ、自らの病を治したい女性が、一心にゲート前で治癒を祈るなら、貴女にその心が分かるでしょう、治療をする力を授けてあげますから、行使しなさい」
カリさん、感激しています。
「少しは女神らしく、奇跡でも起こさねばね、チュヌさんだけでは、ありがたみがないでしょう?」
「尼僧さんたち、指定の日時にムスタンタウンまで来るのはたいへんですからね、カリさん、ムスタンタウンを頼みますよ」
結構仕事をしている美子さん、朝食を食べながらこれだけの事をしてのけたのです。
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