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第六章 ヴァランティーヌの物語 修学旅行

恋占い

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 さて、最後の清水寺ですが、ここはヴァランちゃんのたっての願いで、本殿のすぐ北側にある、地主神社がメインになっています。

 やはり女の子ですから、縁結びの神様のほうが、清水寺の千手観音様より、優先されるのでしょう。

 『恋占いの石』ですね。
 目を閉じたまま二つの石の間を歩き、無事にたどり着けば恋は成就する。

 10班の一人が挑戦しています。
 二度目でなんとかたどり着けました。
「すこし遅くなるってことね」
「えっっっ!」

「でも願いがかなうという事ですよ」
 引率の先生が、ホローしてくれています。

「そうよ、私よりも早いじゃない、私は三回目よ!」
「ヴァランちゃんの番よ!」
 促されてヴァランちゃんが挑戦すると、一発でたどり着けました。

「ヴァランちゃん、すごい!」
「当然よ!これで神様は私の恋を、祝福して下さるのよ!」
 大満足のヴァランちゃんでした。

「明子ちゃんの番よ!」
「えっ、私、怖いわ、たどり着けなかったらどうしよう……」
「大丈夫、成就するわよ」

 明子ちゃんは目を閉じ、おずおずと歩み始めますが、あっちへ行くかと思えば、またこっちへ、そして徐々にコースを外れ始めます。

 見かねたヴァランちゃんが、
「明子ちゃん、右へ!」
 と声を掛けました。
 する明子ちゃん、コースを修正しましたが、今度は修正しすぎです。

「こんどは右に寄りすぎ!左へ、そうそう、そのままよ!がんばって!」 
 ヴァランちゃんのアドバイスで、なんとかたどり着いた明子ちゃんでした。

 先生が、
「なんとか恋は成就しそうよ、でも人の手助けが必要らしいわよ」
「そうなんですか!」
 と、明子ちゃん。

「ヴァランちゃん!アドバイスしてね!」
「いいわよ、私の知っている事は、全て教えるわ!」
 なんか危ないですね……

「ところで先生は、しないのですか?」
「私?先生はもう決まった人がいるの、成就しているからいいの」
 キャーなんて声が出ましたね。

 あとは生徒たちに、根掘り葉掘り尋ねられる訳です。
 大変ですね、先生も。
「さて、そろそろ駅にむかいましょうね、運転手さん、お願いします」
「もう帰るの!」

「さあさあ、また今度は、お父さんお母さんに連れてきてもらいなさい」
「ところで浮田さん、そんなにお土産買って、どうするの?」

 明子ちゃん、お土産を大量に抱えているのです。
 どうやら縁結びのお守り以外は、お菓子ばかりのようです。

 京都駅につくと、皆は山のように荷物を抱えて集まっていました。
 わいわいがやがや、そのかしましい事、先生たちに怒られていますよ。

「ねぇ、新幹線の中で、生八つ橋食べない、ヴァランちゃんと食べようと、多めに買っておいたの」
「ヴァランちゃん、あまり和菓子は買っていなかったみたいだし」
 
 帰りの新幹線の中で、二人は生八つ橋など食べながら、明子ちゃんが、
「ヴァランちゃん、ホテルで色々教えてくれたけど……」

「皆することなのよ、恥ずかしい事じゃないのよ、京子さんも多分、教えたことは経験されているわ、私も経験済みなの」
「でもね、嫌なら美子姉さまは強要されないけど……」

「そういう意味じゃないのよ、私の恋はヴァランちゃんの手助けで成就するのよね、これからも手助けしてね、私、愚図だから……」

 明子ちゃん、新幹線に乗っていますが、心は宇宙鉄道に乗ったようですね。
 遥かに広がる世界の扉を、自ら開くつもりになったようですね。

 後日譚になりますが、以来二人は怪しいと、評判になりました。
 なんせ一緒にお風呂に入り、互いの背中を洗い、一緒の布団に入ったりしていますからね。

 しかもヴァランちゃんは、幼いころからフランソワーズさんに、美子に奉仕するために、英才教育を徹底的に受けており、その夜のノウハウを、そのまま明子ちゃんに教えたりしています。

 かなり怪しげな雰囲気が、漂っていたりしています。

 はたから見ると確実に『百合』です。
 まぁ真実ですけどね。
 相手が違うだけで、もっと変態の『百合』です。
 
 FIN

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