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第五章 佐田町子の物語 夏休み

オルゴール通信

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 シズちゃんが「いくいく!」と、二つ返事です。
「大部屋って八人部屋なの、でね、悪いけど私ね、こちらの友達を二人連れて行こうと思うの」
「皆もそちらで友達が出来たと思うのよ、だから二人ほど連れてきて、友達の友達って友達でしょう?」

 ここでマチちゃんが、
「クリちゃん、皆も、お願いが有るの、一人一緒に行きたい人がいるの、皆も知っている人と思うけど」
 ミチちゃん「誰なの?」と聞きますので、
「浮田京子さん……」
「お京ちゃん、隣のクラスだった?」
 と、シズちゃんがいいました。

 クリームヒルトが、
「マチちゃん、お京ちゃんはね、お友達になったのよ、だからね、呼んでいるの、皆もいいでしょう?」
「お京ちゃんなら賛成よ、だってね……よかったわ」
 と、ミチちゃんがしみじみいいました。

「マチちゃん、今ではお京ちゃんはね、釆女さん、つまり梓巫女(あずさ巫女)なのよ、お祓いしたので大丈夫なの、代価は釆女さん、お母さんも、妹の明子ちゃんも一緒にね♪」
「お京ちゃんは知っているの?」

「この間、釆女さんに昇格した時、蓬莱ステーションに呼ばれてね、そこで私から洗いざらい、知らせておいたわ」
「お京ちゃん、泣いていたわよ、なんでもマチちゃんに嫌われたと、思っていたようよ」

「お京ちゃん、寵妃見習いよね、オルゴールは支給されているのよね、私かけてみようかしら……」
 マチちゃんが呟きました。

「じゃあね、明日お京ちゃんにかけて来てね、まだオルゴールの使い方、知らないと思うから」
「それに蓬莱では、何処でも出せると言うわけではないので、宇賀ビルに集まっておくから」

「それとね、もう一人のお友達、乙女ちゃんも紹介するわね、マチちゃんたちも呼んでおいてね」

 立体ホログラムが消え、通信は終了しました。

「よかった……お京ちゃん、無事だったのね」
 マチちゃん、ものすごく嬉しそうな顔です。

 翌日、学校でクリームヒルトがお京ちゃんに、
「夏休み、予定がないって云っていたでしょう、宇賀さんがね、山陽シーサイドホテルの一室をどうかって、云ってくれたの、勿論OKでしょう?」

「あそこはプライベートビーチがあるから、ホテルからそのまま水着ででられるのよ」
「私はOK、乙女ちゃんは?」
「昨日の内にOKよ」
「私だけ仲間はずれ?ひどいわ!」

「まぁまぁ、でもその部屋大部屋なの、でね、お友達を呼ぶことにしたの、お京ちゃんは知っているわよ」
「?」
「マチちゃん、シズちゃん、ミチちゃん」

「マチちゃん……」
「昨日話しておいたわ、今日連絡が有るはずよ」
「連絡?」

「二人とも良く聞いておいてね、オルゴールを頂いたでしょう、あれは給料の受け取りができるのよ」
「私もだけど、二十歳までは使えないけどね、でも全ての女官に支給されていて、相手をイメージして、隠しボタンを押し、箱の蓋を開けると相手につながるの」

「携帯電話みたいなものだけど、立体映像でつながるのよ、でも分かるでしょう、この蓬莱では、どこでも出せる訳ではないという事は」

 三人が宇賀ビルで、指定の時間に待っていると、お京ちゃんのオルゴールが振動しました。
「お京ちゃん、かかってきたわよ、早く蓋を開いて」

 懐かしいマチちゃん……
「お京ちゃん……ご免なさいね、私、助けてあげられなくて、お友達だったのに……ご免なさい……」
 マチちゃん、泣いているようです。

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