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第四章 浮田京子の物語 乙女心
元気を出しませんか?
しおりを挟む蓬莱の天変地異が過ぎ、聖ブリジッタ女子学園山陽校にも日常が戻ってきました。
何事も無く進級したお京ちゃんでしたが、クラス変えの発表で愕然としたのです。
女神と呼ばれた二人が転校したのは知っていましたが、佐田町子、大宮静子、田中美千子の三人が、転校していたのです。
「マチちゃんが……」
一瞬泣きそうになった、お京ちゃんでした。
折角憧れのクリームヒルトと、同じクラスになったのですが、クリームヒルトがマチちゃんのお友達と思うと、声をかけるのが、マチちゃんのお友達を奪うことになるようで、気が引けるのです。
やはりマチちゃんは、お京ちゃんの中では親友だったのです。
クリームヒルトも、なんとなく元気がありません。
「クリちゃん、元気ないわね」
と、クラスメートの間で、ひそひそと噂されています。
「やはりマチちゃんたちが転校したからよ、仲よかったから……」
「でも私たちも、お友達のつもりなのに……なんか気が悪いわ……」
こんな話が、お京ちゃんの耳にも入ってきました。
お京ちゃん、親友のつもりのマチちゃんのお友達が、こんないわれ方をしては、いけないと思ったのです。
ある日、教室に誰もいないことを確認したお京ちゃんは、ついにクリームヒルトに声をかけました。
「吉川さん、元気がなさそうだけど、皆心配しているの」
「マチちゃんたちが転校して、さびしいのだろうと皆はおもっているけど、このままではいけないわ」
「クラスの皆は、吉川さんのお友達なのよ、元気を出しませんか?」
滅多にこのようなことを云わないお京ちゃん、おしとやかで物静か、そんなお京ちゃんの言葉です。
ハッとしたクリームヒルトでした。
「ありがとう、浮田さん、お言葉、胸にしみるわ」
「そんな大人びたこと云わなくてもいいのよ、私たち、まだ若いのよ」
と、ケラケラと笑ったお京ちゃん。
クリームヒルトは、お京ちゃんが自分のために似合わない事を言ってくれている。
そんなお京ちゃんの真心を、ひしひしと感じたのです。
「本当にそうね、ありがとう」
ニコッと笑ったクリームヒルトに、ドキッとしたお京ちゃん。
妙に照れてしまい、「じゃあ」というと、スタスタと教室を出てしまいました。
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