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第三章 稲田真白の物語 開校騒動
稲田先生奮闘中
しおりを挟む逃げる体制だった茜さんの手を、ぐっと握った稲田さんでした。
「美子を置いていくから!」
「ひどい!」
「二人で働いて下さい!」
諦めたような顔をした二人でした。
美子さんが、
「何をすればいいの?」
「グラウンドの下に、プールをお願いします、茜様は寄宿舎の五階の改修を」
二人が肩をすくめながら、歩いて行きました。
「すごいですね、あのお二人を叱るなんて……しかもタダ働きでしょう、尊敬します」
「冷や汗ものですよ、でも今が正念場、お二人も分かってくださったのでしょう」
真野さん、結構笑いました。
「とにかくこの二人を、部屋に案内してくるわ、せっかくだから同じ部屋、ルームメイトがいいでしょう」
「稲田先生、お聞きしてもいいですか?」
「あのお二人の事は忘れなさい、それ以外のことなら答えましょう」
「……」
「二人とも良く聞きなさい、西田真理亜、貴女は必ず女神様にお仕えしなさい」
「自分でも分かっているでしょう?そのリングがなければ、また同じことになります」
「それから益子和子、貴女も西田真理亜ほどではないけど、何が何でも卒業しなさい、それしか生きる道はないのよ」
「幼い貴女たちに言うのは気が引けるけど、二人とも賢いですからね、この学校はそこらのお嬢様学校ではありません」
「最初の一年で何人かは、ホームシックで脱落すると思われますが、貴女たちは歯を食いしばっても耐えてね、期待していますからね」
「はい」
「夏休みはありませんが、それでも一週間ぐらいはあります、それまでには、本格的に女神様の世界が垣間見えてきます」
「その時に、あのお二人の事も分かるでしょう、この話、しゃべってはいけませんよ」
もっともリングをした以上、秘密保持の力が働きますがね……
「分かりました、ありがとうございます」
「ここよ、制服や下着、靴などの支給品が置いてあるはず、シャワーも動くでしょうから、さっぱりして、身じまいしてから、先ほどのロビーに降りてきなさい」
この二人なら、一人でも間違いないでしょう。
明らかに世の中を知っている、そんな口ぶりですものね……
一階に降りると、まず茜さんが戻って来ていました。
「やれやれ、稲田さんにはこき使われるわ」
「申し訳ありません、でも非常事態ですから……」
茜さん、何事もない顔をしながら、
「次はなに?」
「そうですね、今日の午後から教員さんの面接が有るので、明日に色々お願いしたいのですが……」
「かなり厄介そうな事ですかね」
黙ってしまった稲田さんを見て、小さくため息をついた茜さんでした。
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