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第五十七章 碑文騒動

03 霧の底の図書館

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 私は『存在の啓示』の前に立っています。
 ダフネさんとヒルダさんの、切れ者二人が従っています。

 『闇の鍵の入り口をあけよ』
 私は歌うようにとなえました。

 門灯、そう、『存在の啓示』は不思議な霧を出しました。
 霧というのか、闇というのか、その不思議な黒い霧は、たなびくように御座所へ流れます。
 明らかに私たちを導いています。

 霧は御座所の中へ流れます。
「行きましょう」

 私たちは誘われるままに、御座所の中へ入ります。
 御座所の中で、霧は板状に固まりだしました。
 壁のようなドアのような、黒い垂直の板と呼べばいいのでしょうか、その様な物になりました。
 ど真ん中の鍵穴が、金色に輝いています。

 私はその鍵穴に、石碑より取り出した金の鍵を差し入れます。
「さて回しましょうか。」

 鍵を回しますと、ゴキと変な音がしました。
 板が再び霧状に戻り、今度は床に広がりだしました。

 そして床に不思議な穴、地下に降りる階段が現れました。
 どうやら入口のようです。
 さすがに気味が悪いですね。

「お二人は無理しなくて良いですよ。」
 と言いますと、ダフネさんが「お供します」と答えます。
 ヒルダさんも頷きますので、暗い階段を下りていきます。
 突然、明かりが点きました。

 明らかに図書館です。
 私は何気なく、一冊の本を手に取りました。
 不思議なことに、塵一つついていません、印刷したてのような状態です。

 そこに書かれていた文字は、フェニキア文字に似ていますが、知らない文字です。
 でも意識を集中すると、不思議なことにこれが読めます。

「巫女様、ここは……」
「多分、図書館でしょう。」

「図書館?」
「知識を記述した書籍を、集積した場所のことです。」
「ここは古代のレムリアの図書館のようです。」

「その本は読めるのですか?」
「私には読めるようです。」

 手に取った本は、図書分類を記述した案内書でした。

 農業、医学、工学、歴史、などなど、当時の全てがあります。
 でもなぜこれが罪なのでしょうか……

 科学図鑑がありますので、それを見ていると軍事関係の項目がありました。
 そこには、あの私がゴリアテと呼んだ自爆兵器が載っています。

「ダフネさん、見てください。」
 と、ダフネさんを呼び、この絵があの自爆兵器と確認しました。

「ヒルダさん、辛いでしょうが見てください。」
 と、ヒルダさんにも見せました。

「たしかにあの時の兵器です、敗色濃厚になった時、主席が魔法で出したものです。」
 それには戦闘工兵兵器とあります。
 敵陣地を破壊する兵器のようです。

 さらにページをめくっていると、核兵器があります。
 どうもウラン原爆のようです。
 そこには注釈がついており、最新鋭爆弾と書かれています。

 最後の兵器ですか……
 ひょっとして、これを使って全面戦争をしたのでしょうか。

 私がじっと見ていると、ヒルダさんが、
「いかがされたのですか?」
「ここに最新兵器とありますが、この後がありません。」
「もしかして、これを全面的に使用したのではと、考えていたのです。」

「それが使われたとして、何が問題なのですか?」
「もしこれが、一発でもシビルに落ちたら、このシビルは瓦礫しか残りません。」
「そしてしばらくは人が住めなくなります。」

「そんな物で全面戦争したら、このエラムの人々は全滅するかもしれません。」
「それほどの兵器です、開けてはならない、神の箱を開けたような物、使用してはいけない物です。」

 多分、使われたのでしょうね。
 古代の全面核戦争ですか……
 想像するのも嫌ですね。

 私に『レムリアの者ども、ここに罪を悔いる』といっているのは、このエラムを破滅の瀬戸際にまで、追い込んだことなのでしょうか……

 ダフネさんが、「世界は滅びかけたのですね」、と云いました。
 そうですね、愚かというには、あまりに無残な結果です。
 しかし人は生き延びたようです。

「とにかく、このことはだれにもいえませんね、それと、この知識は危なすぎますね。」
「そのことなら心配は無用では、ここには私たちしか入れませんし、もし入ったとしても、巫女様しか読めない本ばかり、どのような使い道がありましょうか?」

「たしかにダフネさんの云う通りですね。」
 私はなにを心配していたのでしょうね。
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