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第五十三章 黒の巫女は戦い続ける

10 女官さんたちのお見舞い

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 あっさりと立ち直った私でしたが、急遽お見舞いに来た人があります。
 ナイチンゲール看護婦人会の女官さんたちです。
 外出を取りやめたので、心配して来てくれたようです。

「巫女様、お加減が悪いのですか?」
「いえ、すこし考えごとがありますもので、でもありがとう、心配してくれて。」

 紺色の日本赤十字救護看護婦1種制服を着こんでいます。
 そのままナイチンゲール看護婦人会の制服としたのです。
 帽子も紺色の正帽、赤十字のマークがついています。
 当然のように、赤十字の腕章も巻いています。

 可愛い方たちですね。
 皆さん、健康的な若い女官さんたちで、屈託のない笑顔が印象的です。

「よく似合っていますね。」
 と言いますと恥ずかしそうにしました。
「皆さん、今日はお休みなのですか?」
 と聞きますと、
「非番なので、外出許可をいただきました。」

「巫女様、私たちは巫女様のおかげで、こうして幸せになりました。」
「突然、お邪魔したのは、巫女様に私たちの感謝を伝えたいと思いまして、お叱りは後で受ける覚悟です。」

「なんで怒るのですか、せっかくお見舞いに来てくれた方を。」
「そういっていただくと、ほっとします。」
 と女官さんたちは云います。

「どうして女官になったのですか?」

「私たち三人は、シャルム騎士団領の者です。」

「忘れられた土地に育ち、あちこちの貴族に、売られては抱かれ、また売られる日々でした。」
「飢饉が広がった時には、真っ先に食事を抜かれ、動けなくなった者は、死んでいきました。」

「私たちも死ぬ寸前に、領主が追放され、巫女様のおかげで、食事を頂き命をつなぎました。」
「しかし身体はボロボロ、容姿も見苦しくなり、だれも買ってはくれなくなりました。」
「生きるすべの無い私たちは途方にくれました。」

「こんなに苦しい人生、女に生まれ、恥ずべき日々を送った身ですので、最後に仲良くなった仲間で、死のうと道端で相談していました。」

「その時、進駐してきた新しい領主様が、私たちを見つけられ、色々と仕事を与えて下さりました。」
「新しい領主様は何でも、ロマニア名誉騎士団の方で、武勲により領地をいただいたと、おっしゃっていました。」
「おかげで私たちは元気になりました。」

「ある時、新しい領主様は、私たち四人を呼ばれ、女官に応募せよと勧められました。」
「その頃の巫女様の噂は、とても恐ろしく泣いてしまいましたが、奴隷という身ですし、なにより良くしてくれた、新しい領主さまのご命令ですので、命はない物と覚悟しました。」

「そんな私たちを見られて、新しい領主様は大笑いをし、巫女様はそんな方ではないと云われました。」
「お会いしたら、まったくその通りでした。」

 すこしは役に立っているようです、ヴィーナスさんは、でも嬉しいことです。

「私たち女官は大なり小なり傷ついています、私なんか生娘でもありません。」
「本来女官は処女が大前提、それを意に介さず購入していただいて、生きるすべを与えていただいて……」

「女官になって、初めて知ったのは、巫女様の奴隷は、自分を購入することができるということです。」
「しかもその後、生きていけるように、学校へも通わせていただけるなんて、夢のようです。」

 こんどは私が言う番です。
「そう云っていただくとほっとします。」
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