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第五十九章 夜の宮殿
イザナミさんの警告
しおりを挟む「サイボーグ戦闘艇だったとか?」
イザナミさんが口を開きました。
ここは宇宙移民船ヨミ号のコントロールタワー、夜の宮殿と呼ばれる場所です。
「私がイザナギと戦った時には、なかったのですが……」
「シウテクトリさんも知らないと云っています、惑星エラムにあった男性体の最終指導者、オーディンの資料の中にもありませんでしたし……」
「多分最後の内乱時に作られた試作品……としか考えられません」
「しかし自らサイボーグになるのですか?」
「遺伝子改良した、サルの頭脳を使えばどうですか……」
惑星アールヴヘイムンの人々はそのための実験……
サイボーグ戦闘艇に埋めこまれた頭脳は、最後に残された記憶と使命感で、自らのようなサイボーグ戦闘員の要員を作り出すために、遺伝子改良を行った……
男性体の思考に合致しそうです。
「しかし……オーディンが知らない以上、誰が……」
「キュベレーと呼ばれていた指導者がいたそうです、穏健派とのことですが、もし彼が内心は復讐を目論んでいたら?」
「作られた試作タイプの軍事技術の記録は、消去するはずですね……」
「私もマレーネさんもそう考えています」
「……ミコ様……」
イザナミさんがその名を口にする以上、非公的な話なのでしょう。
「マレーネさんのことですが……」
「それ以上は口に出さなくていいですよ、シウテクトリさんも同じような警告をくれましたし……その時は……オルメカとヨミが助けてくれるでしょう……」
「要らぬことを言いました……信じると用心は並立すると知りました……」
「本人自身がその可能性を心配しています」
何故私がヨミ号にいるかというと、夏休み終了後の最初の土曜日、この日、ヨミ号は全面改修を終え宇宙母艦フリングホルニ号を離れる日なのです。
ほぼ一週間でこれを終えたマレーネさんの力は、驚くべきものです。
マレーネさんがやって来て、
「イザナミ……懸念の事は私自身がよく知っています、もしその時が来れば、マスターが私を壊すでしょう、それだけのお力はお持ちですよ」
「お聞きになっていたのですか?」
「論理計算の結果ですよ」
感情など入らないのが人工知能の会話、ただ私と話するときは、何故かイレギュラーが出るようですが……
「とにかくその時は私が対処します」
この会話は終わりです。
「天の浮舟号と宇宙防衛艦隊も準備が整いました、いつでも出発できるでしょう」
「ではいきますか?イザナミ、出港を命じます」
「ヨミ号乗員、及びそれに従う艦艇乗員につぐ」
「只今より我等はルシファー様配下の軍団ヨミとして、プレオネ星系外縁部のプレオネステーションに向けて出港する」
「我等の目的は、ルシファー様より預かったプレオネ三姉妹衛星、つまり三つの衛星、パレスティーナ、メリオール、メリュジーヌの、ホモサピエンスを指導することである」
「各員ルシファー様の為に努力をするように」
そしてヨミ号は、転移を開始しました。
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