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第五十六章 ヨミの再生
惑星移民船ヨミ号
しおりを挟む六号機械の案内で、ヨミの世界に入りました。
不思議な世界ですね……
外殻は半透明で、土星の液体金属水素の熱を変換し、それで半永久に、超高圧の土星中心核の攻撃に耐えているのです。
「もうすぐこの世界もおしまいです」
「再稼働は出来るのですか?」
「私にはできません、方法を知りませんし、再稼働のエネルギーがありません」
このヨミ世界は宇宙間移民船と、マレーネさんから情報を得ています。
したがって、宇宙母艦フリングホルニ号に何処か似ています。
最もフリングホルニ号にくらべれば、かなり簡単な機構ですが。
再稼働は、エネルギーさえあれば簡単なのですが、エネルギーね……
全く都合よく、あるではないですか……余るほどのエネルギーが。
マイクロブラックホール、ミリ単位の大きさでもエネルギーは莫大です、ヨミの動力源としては余る程です。
「心配することはありませんよ、これは何か知っていますか?」
さすがの六号機械もわからぬようです。
「イシス特性のマイクロブラックホール」
「……」
「さて修理しましょう、ヨミを動かすのです、エネルギー取り込み装置は何処にありますか?」
六号機械の案内で、ヨミの広大な世界の中心部、動力炉です。
案外と小さいもので、家庭用暖炉程度の大きさです。
私は専用のナノマシンを増殖させ、動力炉の改良をイメージします。
移民船の動力伝達装置へ、マイクロブラックホールのエネルギーを出力できるように、思い描いた図面の実現をイメージします。
少しずつ家庭用暖炉は形を変えて、内部にマイクロブラックホールを封印した容器が収まるような、動力炉が出来上がりつつあります。
二時間ほど働きましたか……ついに動力炉が完成しました。
「さて、動力を入れてみますか」
スイッチを入れて見ると、かすかにヨミが振動した気がします、外部の光を取り込んでいた透明な外殻が、明るく輝き始めました。
生存に不必要な物も稼働を始めます。
移民船の全機能が稼働を始め、その中にはデーターベースなどもありました。
これは掘り出し物です、なんといっても宇宙間移民船ヨミ号の、建造図面があったのです。
当然、開示には特権命令が必要ですが、そこは古いタイプのものですから、あっさりとコードを書き換えておきました。
エネルギーが有り余っていますので、これをエネルギーとして、私の専用ナノマシンをヨミ号全域に増殖させました。
これで私たちの防御は完璧です、たとえ復活させたイザナミが再度、反旗を翻しても……
「この移民船ヨミ号は、これで完全に目覚めました」
「エネルギーは余るほどありますので、移民船下部に納めてあった、補修用の予備のロボット群に対して、稼働をはじめるように命じておきました」
「また非常用の、オペレーターロボットも目覚めるはずです」
「六号機械、悪いが命令序列は書き換えさせて頂きましたよ」
空気が新鮮になり始めました。
ヨミ号は直径で3500キロ程度の巨大な球形で、内部は三層構造になっており、中心部分には動力炉や重力制御などの重要な部分があります。
その部分には非常用と思われる、シェルター都市がありました。
最外層部分は居住部分、つまりアスラ族の移民用のスペース、今では野良たちの居住部分です。
その下側に第二層があり、メンテナンス部分が集中していました。
つまり、ここがロボットやアンドロイドの居住部分なのです。
ここは封印されていました。
最外層部分と中心の重要機械部分はつながって居ますが、第二層には入れないというか、存在自体が感知できないようになっています。
多分この第二層を、稼働させるエネルギーがないのが理由の大部分でしょうが、ここの予備のロボット群は、アスラ族の命令に対して絶対服従のはず、アンドロイドと違い意思がないのですから……
しかもアンドロイドに従いますが、アスラ族を守るのが最優先、つまり主に反旗を翻す決意をしたイザナミ達に対して、さらに抵抗するのは確実、それでイザナミは封印したのでしょう。
データベースを解析しますと、対イザナギ戦のとき、ここのロボットは全力動員されていたようで、非常用の予備のロボット群だけが残されています。
そもそもイザナミは別として、他のアンドロイド群は侍女型で、数は少なかったようです。
しかし第二層にはアンドロイド用の修理部門もありました、大概のことなら治せるようです、でも活動を停止したものは難しいようですね。
とにかく、この土星の中心核から脱出しましょう。
この液体金属水素の海の中は、気持ちのいいものではありませんので。
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