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第五十五章 黄泉比良坂(よもつひらさか)

液体金属水素の中での夢破れ

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 ゲートを通ります。
 ほの暗い通路に入りますが、臭いがひどくなります。

 あれほどいた、イザナミ配下のアンドロイドが一人もいません。
「気味が悪いですね……」
 小雪さんが珍しいことを云いました。

 通路の外は地獄なのですが、通路の中は更に不気味……

 三人で歩いているから、この不気味さに耐えられるのですが、一人で此処を歩くのは、御免被りたいものです。
 黄泉比良坂(よもつひらさか)……なんとも滅入る通路を延々と歩いています。

「気を抜かないように、こんな時が一番危ないのですから」
 深雪さんが、
「しかし、動くものがありませんね……これからどうなるのでしょうか……」
「そうね、私もそれが知りたいわ」

 そんな話をしながら、さらに延々と歩いています。
 もう誰も喋らなくなりました。

 聞こえるのは私たちの足音だけ……
 でもないようです、かすかですが音が感じられます。
 聞こえるというレベルではありませんが、何かの音が……

 何か嫌な感じがしましたので、
「気をつけなさいよ、変な音が聞こえますから」
 と、二人に警告しようとすると、小雪さんも深雪さんも……寝ているし……

 催眠音波の類……
 見たところ、二人に危険はないようですが、ぬかりました。
 とにかく私が前に出なければ……敵は通路の前から来るのですから。

 バスタードソードを手に、私は通路の真ん中に立っています。
 そして女が一人やって来ました。

「お前は?」
「六号機械」

「戦うか?」
「いえ、私は貴女と話をしてみたいと思ったので」
「話?」

 それより、六号機械と云いましたね……
「一度会いましたか?」
「ジョージアの平原で」

 話しに来た割に、ボキャブリーが不足しているような……アンドロイドって得てしてこうなのよね……
 でも、杞憂でした。

「イザナミ様は身罷られました、いま、このヨミの住人は私一人、もうすぐヨミも活動を停止するでしょう」
「エネルギーの取り込みを停止しましたから、テラの時間に換算して、四十八時間ぐらいで壊れ始めるでしょう」

「私に何を聞きたいのか?」
「貴女の本音です、だからお側の二人には、寝てもらいました、私のただ一つの力です」

 イザナミは逝ったのですか……
 一言あってもいいでしょうに、まぁいいでしょう。

「私の本音を聞いてどうするのか?」
「最後に貴女の本音を聞いて、先に逝った者共、またイザナミ様にお伝えしたいと思ったからです」

「その前に、私から聞きたいことがある」
「なんなりと」

「バアル・ゼブルはイザナミ以下、ヨミの世界を私に託して死んでいった節がある、イザナミはその気持ちを知っていたと思うが?」

「イザナミ様は何も云われなかったが、多分知っておられた、アグレアスの気持ちも理解されていた」
「イザナミ様は余命四五百年だった、アグレアス以下のソロモン72柱は、イザナミ様と共に終わる覚悟を固めていた」

「我等はイザナミ様の命が終わるまでに、猿どもを地獄の世界に放り込み、未来永劫苦しむ姿を、お見せしたかったのだ」
「そこへルシファー、貴女が猿どもを救い始めた」
「皆、終わりは覚悟していた、遅いか早いかの問題に過ぎなかった」

「イザナミ様は、皆を守られようとされていたが、皆はここが死に場所と覚悟した」
「そこでイザナミ様も、皆と共に終わる覚悟をなされた」
「黄泉醜女(よもつしこめ)の壊滅をお知りになられ、最後までお側にいた一号機械たちとともに、機能を停止なされた」

「私は一号機械から、ヨミの後始末を託されていた、最後に貴女の本音を聞きたく思って、ここへやってきたのだ、多分私はイレギュラーなのだろう」

 なるほどね……

「私の本音を言う前に、もう一つ聞きたい、貴女の本音は?まさかあの世への旅路の、みやげ話でもないでしょう」
「先程、貴女はバアル・ゼブルにヨミの世界を託されたと云った、私は聡明な貴女が、バアル・ゼブルの言葉をどうするのかを聞きたかった」

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