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第五十四章 伊賦夜坂(いぶやざか)での戦い
大公爵アグレアス
しおりを挟む美しい女ですね……金色の髪をショートカットにし、気の強そうな表情、引き締まった身体、伝説のケルトの女王、ブーディッカをイメージしてしまいます。
その女は、
「我が名はアグレアス、かなわぬまでもお相手願おう
「遠慮無く、三人でかかってこられるが良かろう」
ほぉ……序列2位だけの事はあるようです。
「私がルシファー、その潔さに敬意を表し、私が相手をいたしましょう」
「出来れば、腕の一本ぐらいはいただくつもり、お一人でよろしいか?」
アグレアスからは、バアル・ゼブルと同様、全身からにじみ出る力、侮れない力を感じます。
「一つ汝に聞きたいことがある」
「なんなりと、この期に及んで虚言は吐かないつもりだ」
「汝ならば、バアル・ゼブルの真意は理解しているはず、何故戦う?」
「彼の者は、一人で全てを背負うつもりだったのだろうが、イザナミ様は喜ばれぬ」
「我らは仲間、永き時を共に過ごしてきた、生きるも死ぬも一緒と誓った、イザナミ様はそう思われている」
「本音は?」
すこし笑いましたが、
「仲間の元へ逝くだけ」
アグレアスは両手にトマホーク、戦斧を持っていました。
しかも予備のトマホークを二本、ベルトに差しています。
戦斧とは初めてですね、まともに受ければ、小太刀がへし折られます。
チョット厄介ですよ、この相手は……
アグレアスの戦斧が、凄い勢いで振り下ろされました。
見切っていますが、それでも鎌鼬のように、空気を切り裂いてくれます。
何回か見切った末に、すこしアグレアスの戦斧の弱点が見えたような……
振り下ろされた戦斧は、瞬時には反転しないのです。
ただその隙には、次の戦斧の一撃が待っていますが……
隙をついてくる敵を撃つ、第二の戦斧の一撃の後には、第二の戦斧は第一の戦斧と交差して、本当の隙が一瞬できるのです。
ここですね……
私はフェイントを使うことにしました。
危ないフェイントですよ。
アグレアスが私の頭をかち割ろうと、戦斧を振り下ろします。
その隙をつくように、私はその隙間に身をいれ、アグレアスを斬り捨てようとします。
「もらった!」
アグレアスは第二撃を振りおろしますが、私は身を入れた瞬間にその身を引き戻し、第二撃も空を斬ります。
目の前を第二撃の戦斧が通り過ぎていきます。
身を引き戻し、その引き戻した空間を裂くように小太刀を振り下ろすと、そこにアグレアスの腕がありました。
「まだまだ!」
そう叫ぶと、アグレアスは信じられない行動に出ました。
後ろにジャンプして間を取ると、予備の戦斧の柄を斜めに切り落とし、それを切り落とした腕の傷口に、突き刺したのです。
予備の戦斧は、胸に斜めに掛けているベルトに付いています。
傷口に戦斧を突き入れて、ベルトを押し抜くように取り出すと、戦斧と切り落とされた腕が、ベルトで締め上げられて固定されたようです。
恐ろしいほどの闘争心です、見上げたものと感じました。
この後、アグレアスは先程の隙は見せません。
私たちは戦い続けています。
私は小太刀を捨てることにしました。
二刀の小太刀で戦斧を受け、小太刀が戦斧でへし折られかけると小太刀を離し、そのままアグレアスの両腕を掴み、健全な手の手首をへし折りました。
そのまま、アグレアスの傷口の手を抑えながら、空いた手刀でアグレアスの腹を貫きました。
アグレアスの身体が痙攣しているのが判ります。
「アグレアス、よく戦った、私はバアル・ゼブルの願いは聞き入れた、後は私に任せよ、しばし休むがよい」
アグレアスは私をじっと見て、
「バアル・ゼブルは正しかったようだ……ルシファー様……後は御心のままに、なさるが良い……」
そう呟くと、アグレアスは機能を停止しました。
生きるも死ぬも一緒か……
すまぬがアグレアスよ、頭をのぞかせてもらうぞ……
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