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第五十三章 野良アンドロイドはぶっとばしましょう
稲妻と雷鳴の果て
しおりを挟む突然、物凄い雷鳴が轟き、バアル・ゼブルが私に戦いを仕掛けてきました。
とっさに私も電撃杖で応戦します。
蒼白い稲妻が飛び交い、砂漠の砂を焦がし、私はバアル・ゼブルと戦い始めました。
「強いな!」
「貴女も!」
バアル・ゼブルは何と、インド武術のカラリパヤット、それもテッカン、南派と呼ばれるドラヴィダ武術の系統を使いました……
いや、正確にいうと、シランバムという棒術だと思います。
高速で棒を振り回されると、稲妻が渦を巻くのです、見事というか……
どうも私と同じような戦闘スタイルです……棒と杖、二人の稲妻と雷鳴が、タクラマカンを覆い始めます。
私は全身に火傷を負っています、バアル・ゼブルも私の突きを幾度か食らって、全身打撲が見えます。
また左脇腹をえぐられ、血を流しています。
血といっても機械体アンドロイド、血のように見える潤滑油?でしょうね。
バアル・ゼブルの渾身の一撃を胸に喰らいました、バキッと音がして激痛が走りました。
すぐに脳内麻薬を分泌し、痛みを感じる神経を麻痺させますが、治療する暇を与えてもらえません。
息が苦しくて、肺に折れた肋骨が、刺さったように思えますが……
一瞬、顔をつかめたのでしょう、バアル・ゼブルがチャンスと突きを繰り出しました。
その棒を打ち巻落として、激痛を押して体当たりをし、バアル・ゼブルを渾身の力で打ちのめしました。
乱留(みだれどめ)という技ですが、倒れたバアル・ゼブルにすぐさま止めをさそうとすると、
「ルシファー……さ……ま……イザナミさまを……お願い……で……き……ま……」
ここでバアル・ゼブルは停止しました。
「バアル・ゼブル様!おのれ、ルシファー!このセミラミスが相手してくれる!」
「お前の相手はこのイシスがする、不足はなかろう!」
イシスさんは、云うが早いか、人工斥力を発生させてセミラミスを引きちぎります。
「私の大事なアナーヒターに挑むなんて、100万年は早いわよ!」
タクラマカンの砂が黒焦げになり、黒い砂漠に赤い夕陽が落ちていく……
私は血を吐いていますが、なんとか自分で治療しようとしていますと、姉が私を抱きかかえ、
「アナーヒター、情けをかけるのもほどほどにね、あのバアル・ゼブルは、修理できるように壊すのは強すぎますよ」
「ましてヴァルキュリアを守りながらですよ、なぜ命をかけようとするの?」
姉の治療イメージは、手荒でかなり痛いです。
「バアル・ゼブルは勝つ気がなかったようで、命を掛けてこのイベントを行ったのは、私をルシファーか確かめたかったようですね」
「どうやら納得したようです、私にイザナミの事を頼んできました」
「そんな問題ではないでしょう、貴女が倒れたらどうするの!」
「私はこれでもヴァルナ評議会議長、彼女らはアスラ族の遺物、私に対して抵抗する気がない以上、殺すのはね」
「これは危険な遊び、私が全てをこの身に受ければいいことでしょう、すこしヴァルキュリアには怪我をさせてしまいましたが」
「それに私はスケベですから、バアル・ゼブルは美味しそうだったので」
「いつも思いますが、最後に落としますね、それがなければ尊敬できるのにね」
「でも私は貴女のその心配りが好きですよ、姉ですからね、まるわかりです」
姉は私を抱きしめてくれました、そして、
「馬鹿な妹、でも立派な議長……」
私の髪をなで、血まみれの唇を清めてくれました。
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